円形脱毛という状態に対し、
巡りと蓄えを整えるという視点
東洋医学では、髪の状態を全身の栄養(血)の余りと捉える考え方があります。お身体に過度な緊張や消耗がある場合、末端まで十分な滋養が届きにくくなることがあります。
例えるなら、「土壌の乾燥や温度の変化により、一時的に芽吹きが休止している」ような状況です。鍼灸による調整は、免疫の過剰な反応を穏やかにし、巡りを整えることで、お身体が本来持っている健やかさを取り戻す一助となる場合があります。
周囲の目を気にせず過ごせる日常に向けて、お身体の内側から少しずつ環境を整えてまいりましょう。

目次
円形脱毛という状態を、お身体の「栄養の蓄え」と「守る力」のバランスから捉え直し、健やかな環境を育むための指針です。

円形脱毛という現象:お身体の内外で起きていること
ある日突然、一部の髪がまとまって抜け落ちる円形脱毛は、毛根を支える組織に何らかの負担がかかっているサインと捉えられます。外見上の変化とともに、心身の緊張や不安を伴いやすいという側面があります。
状態の捉え方
(東洋医学の視点)
東洋医学では、お身体の栄養を司る「血(けつ)」の不足や、巡りを妨げる要因が関わっていると考えます。
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栄養供給の停滞:
お身体の蓄えが少なくなっていたり、巡りが滞ったりすることで、髪に十分な滋養が届きにくくなっている場合があります。 -
緊張による影響:
持続的な緊張や強い負担が、お身体のバランスを司る機能に働きかけ、巡りを局所的に阻害する一因となることがあります。
一般的な見解と対応
(西洋医学の視点)
現在の医学において有力なのは、自身の身体を守るはずの免疫機能が、毛根を誤って攻撃してしまうという考え方です。
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免疫の反応:
本来は異物を防ぐ免疫細胞が、何らかの理由で自身の毛根組織に反応している状態と推察されています。 -
主なアプローチ:
炎症や免疫の反応を和らげることを目的とした外用薬や内服薬が用いられるのが一般的です。 -
併用の考え方:
西洋医学による直接的な対応と、東洋医学によるお身体の土台作りは、互いに補完し合える関係にあります。

東洋医学の捉え方:蓄えとしての「血」と、巡りを支える「気」
東洋医学では、お身体の一部に現れる変化は、全身の調和が揺らいでいる結果であると捉えます。特に円形脱毛においては、栄養を届ける力と、お身体を外敵から守る力のバランスに着目します。
お身体全体の状態を伺う
(全身を一つのつながりと見る)
単に局所の状態を見るだけでなく、お身体全体の情報を集めることで、バランスを崩している要因を探ります。
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情報の集約:
お顔の色やつや、お声の調子、脈の触れ方、お腹の弾力などを通じて、お身体の内側で何が起きているのかを把握します。 -
背景にある偏り:
「蓄えの不足」や「巡りの滞り」など、免疫が敏感になりやすい体質的な土台を見定めることが、調整の第一歩となります。
休息と滋養の関わり
(蓄えと守りの関係)
髪の状態には、お身体全体の滋養の状態と、外界の刺激に対する反応の仕方が深く関わっていると考えられます。
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お身体を包むバリア:
東洋医学では、皮膚や毛髪の状態は、お身体の防衛機能と深い繋がりがあると考えます。この機能が揺らぐと、内側の反応が過敏になる場合があります。 -
負担の蓄積:
慢性的な疲労や心理的な負担が重なると、本来髪を育むために使われるはずのエネルギーが消耗され、局所的な変化として現れる一助となることがあります。
お身体から発せられるその他のサイン
(巡りや蓄えの乱れに伴うもの)
脱毛と前後して、以下のような感覚を覚えることがありますが、これらもお身体全体のバランスを整えるための重要な手がかりとなります。
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女性特有の周期の乱れ:
お身体の蓄えを司る機能の揺らぎが、周期に伴う不調として現れる場合があります。 -
手足の冷えや強張り:
隅々まで温かさや巡りが届きにくくなっている状態を反映していることがあります。 -
お身体の防衛機能の揺らぎ:
鼻や喉の違和感、あるいは季節の変わり目にお身体を崩しやすいといった傾向として現れる場合があります。 -
目や頭の疲れ:
お身体の内側の蓄えを使いすぎているときに出やすいサインの一つです。
例えるなら、「根を養う栄養が少なくなると、まずは枝先の葉から元気がなくなっていく」ように、お身体は最も優先度の高い部分を守ろうとしているのかもしれません。

鍼灸の進め方:お身体の環境を整え、安定を後押しする調整
円形脱毛における鍼灸は、局所の反応を抑えることだけを目的とはしません。栄養の蓄えを十分にすること、そして過剰な緊張を和らげることを通じて、お身体が自ずと健やかさを取り戻すための「場」を整えることを目指します。
調整の視点:
(全身のバランスを整理する)
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お身体の声を聴く:
脈やお腹の触り心地から、栄養の過不足や巡りの滞りを丁寧に伺います。局所の変化がどのような全身状態から生じているのか、その背景を整理します。 -
経絡を用いた働きかけ:
お身体の各器官をつなぐとされる「経絡(けいろく)」を使い、栄養を司る機能や、防衛機能を司る機能の偏りを調整します。これにより、お身体が落ち着きを取り戻す一助となる場合があります。 -
穏やかな温熱刺激:
必要に応じてお灸を用い、お身体の芯にある冷えを和らげます。巡りを底上げすることで、隅々まで滋養が行き渡りやすい状態への変化を促します。
調整に用いる箇所の例:
(巡りと蓄えを支える)
お身体を外部の刺激から守る機能や、呼吸のリズムを整える際に用いることがあります。
お身体全体の栄養(血)の巡りを調整し、冷えや不規則な周期に伴う負担を和らげる目的で用いる場合があります。
日々の活力や栄養を吸収する機能を支え、お身体の土台となる力を蓄える一助とします。
過度な緊張や心の波を穏やかにし、お休み中の回復を促す目的で選択されることがあります。
※お一人おひとりのお身体の状況に合わせ、その時に最も必要と思われる箇所を慎重に選択いたします。
例えるなら、「荒れてしまった土壌に直接種をまくのではなく、まずは石を取り除き、水を引いて、芽吹きやすい環境を整えていく」ような過程を大切にしています。

日常の養生:健やかなリズムを育むための生活のヒント
お身体の蓄えを十分にすること、そして余計な消耗を抑えることは、変化を受け止めるための土台となります。日々の何気ない習慣を少し見直すことが、巡りの安定を後押しする一助となる場合があります。
- お食事は、お身体を温めるものを中心に 消化を助ける機能は、温かい環境でその力を発揮しやすくなります。冷たい飲み物や過度な甘味は控えめにし、なるべく温かく調理されたものを、ゆっくりと召し上がってみてください。栄養をしっかりと「蓄え」に変える第一歩となります。
- 夜間の休息を大切に 夜更けから深夜にかけての時間帯は、お身体が巡りを整え、明日のための滋養を蓄える大切な時間と考えられています。この時間帯に深くお休みになれるよう、夜の過ごし方を見直し、休息のリズムを整えることで、心身の緊張が和らぎやすくなります。
- 心地よい入浴と頭皮の安静 湯船でゆっくりとお身体を温めることは、全身の巡りを助けます。一方で、変化が起きている箇所のマッサージや過度な刺激は、逆効果となる場合もあります。今は刺激を与えることよりも、清潔に保ちつつ、静かに見守る時期と捉えてみてください。
- 深い呼吸で「抜く」時間を作る 知らず知らずのうちに、肩や首に力が入っていませんか。一日に何度か、深く息を吐き出す時間を作ってみましょう。強すぎる緊張をお身体から「逃がす」習慣が、心の安定と、頭部への穏やかな巡りを支える一助となることがあります。
例えるなら、「スマートフォンの電池が少なくなっているときに、充電しながら重いアプリを使わない」ように、お身体の回復を優先する時間を意識的に設けてみてください。

西洋医学と東洋医学の役割:協力してお身体の環境を整える
お身体の状態によっては、西洋医学による直接的な対応と、東洋医学による全体的な調整を併用することが、変化を促すための一つの選択肢となります。それぞれの得意とする領域を活かしながら、お身体の安定を目指します。
- 西洋医学の視点と役割 皮膚科的な精密な評価や、免疫の過敏な反応を一時的に鎮める対応に長けています。急激な変化が生じている時期には、お薬によって局所の反応を和らげることで、お身体への負担を抑える助けとなる場合があります。
- 東洋医学の視点と役割 お身体全体の栄養状態や、緊張の度合いを整えることに重点を置きます。変化の背景にある巡りの滞りや、防衛機能の揺らぎを穏やかに調整することで、髪を育むための土台となる環境を整える後押しをします。
- 状況に応じた柔軟な選択 どちらか一方を選ぶのではなく、その時々のお身体の状況に合わせて比重を調整していくことが大切です。西洋医学で局所の反応を抑えつつ、東洋医学でお身体の「蓄え」を支えることで、より自然な形での変化を見守ることが可能になると考えています。
例えるなら、「火が起きているときに、直接水をかけて鎮めるのが西洋医学、火が起きにくいように風通しを良くし、周りの温度を整えるのが東洋医学」というように、両面からのお手伝いが必要な場合もあります。

円形脱毛に対する施術費用と、変化を見守るペースについて
当院の施術は自由診療(保険外)となります。局所への働きかけだけでなく、全身のバランスを整え、お身体が本来持っている落ち着きを取り戻すためのお手伝いをさせていただきます。
今のお身体の状態を詳しく伺い、情報の整理を行います。その上で、何が巡りの妨げになっているのかを見極め、今後の進め方をご提案いたします。
その時々のお身体の揺らぎに合わせ、蓄えを支える箇所や、巡りを助ける箇所を選択して調整を重ねていきます。
通院頻度の目安:お身体の環境を育むために
変化の現れ方には個人差がありますが、お身体の調律を安定させるための一般的な目安をお伝えします。
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お身体の揺らぎが大きい時期:
週に1回程度の頻度で調整を重ねることで、過敏になっている反応を和らげ、お身体が落ち着きやすい環境を整えていきます。 -
変化が安定し始めた時期:
お身体に「蓄え」が戻り始めたサインが見られたら、週に1回程度のペースを維持しつつ、栄養が隅々まで行き渡るよう後押しを続けます。 -
健やかさを維持する時期:
状態が安定してきたら、2週間から1ヶ月に1回程度、季節の変わり目などにお身体のメンテナンスを行い、負担を軽く保つことを目指します。
例えるなら、「乾いてしまった土地に水を引く際、最初はこまめに様子を見て、土が潤いを持ってきたら徐々に自然の雨に任せていく」ように、お身体の状態に合わせて無理のない頻度を相談していきましょう。

ご予約・ご相談

院長プロフィール
中村 麻人(なかむら あさと)
札幌「東洋中村はり灸院」院長。
「森を見て木を治す」東洋医学の視点で、肩こり・腰痛をはじめ、生理痛・顔面神経麻痺・潰瘍性大腸炎・耳管開放症など、病院では原因不明とされる慢性疾患や、治療法が確立されていない症状を中心にはり治療を行っています。
