膝の痛みと腫れに対する東洋医学的な視点:
巡りを助け、負担を和らげる調整
繰り返す膝の腫れや痛みは、関節周りの「巡りの滞り」と「冷え」が関わっていることがございます。
東洋医学では、余分な水分の排泄を促し、足腰を支える基礎的な力を補うことで、お身体の内側から負担を軽くすることを目指します。
関節の状態を尊重しつつ、巡りを整えることで、日々の動作がより穏やかになるようお手伝いいたします。

目次
膝の重だるさや動き始めの不快感に対し、お身体の内側の巡りを整え、負担を和らげていくための東洋医学的な考え方をまとめました。

膝の不調とその背景:
日々の重なりと関節の役割について
膝は、私たちの体重を受け止め続け、歩行や立ち座りといった日常のあらゆる動きを支える関節です。日々、大きな負荷がかかりやすい部位であるといえます。
不調の背景には、加齢に伴う組織の変化や、長年の動作の積み重ねによる負担、あるいは冷えによって周囲の巡りが滞ることなど、さまざまな要因が考えられます。
膝の関節を一本の樹木に例えるならば、長年の風雪によって幹(関節)がしなり、周囲の土壌(血流)が固まって、瑞々しさが失われつつあるような状態といえるかもしれません。
よく見られるお身体のサイン
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動き始めや動作時の違和感:
立ち上がる瞬間や階段の昇降時に、ズキッとする感覚や重だるさを覚えることがございます。 -
動きの滑らかさの変化:
膝が曲げにくい、あるいは伸ばしにくいと感じたり、関節の周辺が腫れたりすることがございます。 -
休息時や環境による変化:
夜間の静止時や、湿度の高い日、冷え込みの強い日などに不快感が強まる傾向が見られる場合もございます。
膝の不調は、変化を感じるまでに時間を要することが一般的です。膝をかばう動作が続くと、腰や足首など他の部位へ負担が波及することもあるため、お身体全体のバランスを整えながら、負担を和らげる道筋を探していくことが大切です。

膝に不快感が生じる仕組み:
物理的な負荷と体質的な背景について
物理的な影響と関節の変化
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組織の変化に伴うもの:
軟骨の質的な変化や摩耗により、関節内の滑らかさが失われることがございます。周囲の組織の血流を維持し、柔軟性を保つことが、負担を和らげる鍵となります。 -
動作による荷重の変化:
階段の昇降や立ち座りなど、特定の角度で荷重がかかる際に不快感を覚えやすくなります。 -
動き始めの強ばり:
冷えや循環の低下により、関節周囲の巡りが鈍くなっている状態です。動かすことで徐々に巡りが整い、不快感が和らぐ傾向が見られることもあります。
冬の朝に水道の水が少しずつ出始めるように、お身体の巡りも始動時には相応の準備を必要とすることがあります。
体質的な背景と東洋医学の視点
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環境や天候の影響:
低気圧や湿度の変化で不快感が増す場合、お身体の水分代謝が影響していることがございます。これは東洋医学で巡りの偏りとして捉えられる状態です。 -
内科的な配慮が必要な場合:
急激な腫れや強い熱感、全身症状を伴う場合は、感染症や自己免疫的な要因も考慮し、まずは適切な医療機関での受診が優先されます。 -
東洋医学的な調整の役割:
お身体の基礎(骨・筋肉)を支える力や、余分な水分をさばく機能を整えることで、気候や環境の変化に左右されにくい状態を目指してまいります。

多角的な視点:
現代的な対応と東洋医学的なアプローチの対比
現代医学的な視点と対応
関節の構造を精密に確認し、炎症や痛みを物理的・化学的に軽減させる視点を中心としています。
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構造の把握と鎮痛:
画像診断により関節の状態を確認し、湿布や痛み止め、注射(ヒアルロン酸等)によって現在の負担を和らげることを優先します。 -
急性期や疾患への対応:
強い炎症がある場合や、自己免疫の関与が疑われる場合には、薬剤を用いて全身的な反応をコントロールすることがございます。 -
観察される傾向:
画像上の変化とご本人の痛みの感覚が必ずしも一致しない場合もあり、構造的な調整だけでは不快感が残ることがあると言われています。
東洋医学的な視点と調整
目に見えない「巡り」や、お身体全体のバランスから膝の状態を捉え直す視点を持っています。
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巡りの滞りへの配慮:
「通じざれば則ち痛む」という考えに基づき、関節周囲に停滞している余分な水分や血行不良を整え、お身体本来の回復を助ける道筋を探ります。 -
全身の調和を目指す:
膝そのものだけでなく、骨や筋肉を支える基礎的な機能、水分の代謝を司る器官の状態などを総合的に捉え、調整を行います。 -
得意とする領域:
天候の変化による不調や、特定の原因が見当たりにくい慢性的な強ばりに対し、体質面からアプローチすることが期待されます。
現代医学が「不調の火を消す」役割であれば、東洋医学は「火が起きにくいように風通しを整える」ような調整であるといえるかもしれません。

お身体の基礎と膝:
栄養を運び、水分をさばく機能との関係
東洋医学では、膝に現れる不快感を単なる箇所の問題としてではなく、骨や筋肉の基礎となる力や、お身体全体の水分代謝を司る機能の現れとして捉えます。
消化器の働きと水分代謝について
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巡りの通り道:
胃腸に関係するエネルギーの通り道は、膝の前面を通っています。消化器に負担がかかると、この通り道の巡りが滞り、膝の周辺に重だるさや腫れが生じやすくなることがございます。 -
余分な水分の停滞:
水分をさばく力が弱まると、膝という低い位置にある関節に余分なものが溜まりやすくなります。 -
調整の視点:
膝そのものへの働きかけと同時に、胃腸の調子を整えることで、お身体の内側から不要なものを排出する力を助け、膝への負担を和らげていきます。
排水のポンプが弱まると、土地の窪みに水が溜まるように、代謝の低下が膝の腫れとして現れることがございます。
生命力の蓄えと骨の状態について
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お身体の土台を司る機能:
東洋医学において、骨や関節、軟骨といった組織の健やかさは、お身体の深部に蓄えられた基礎的な生命力と深く関わっていると考えます。 -
年齢や疲労による変化:
長年のご生活や、お身体を酷使することによってこの基礎的な力が消耗されると、関節の摩耗や組織の変化が緩やかに進み、回復に時間を要するようになることがございます。 -
調整の目的:
お身体を根本から支える機能を補うことで、関節の熱を静め、組織が本来持っている落ち着きを取り戻せるよう促してまいります。

お身体の見立てと調整の設計:
膝の不快感に対する東洋医学的なアプローチ
膝の不快感は、局所の変化だけでなく、お身体全体の巡りの偏りが関わっていることがございます。
東洋医学では、その方の体質や今の状態を丁寧に見極めることで、負担を和らげる道筋を探してまいります。
見立ての基本:四つの観察
お身体全体のバランスを、以下の四つの視点から総合的に捉えます。
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姿と反応の観察:
お顔の色やつや、姿勢、舌の状態などを拝見し、巡りの滞りや熱の有無、消耗の程度を測ります。 -
言葉と声の傾聴:
お話しされる声の調子や呼吸の状態から、お身体に備わっている基礎的な力を推察します。 -
対話による把握:
不快感が現れるタイミングや生活習慣、気候による変化など、体質のヒントとなる情報を整理します。 -
触れることによる確認:
脈の打つ様子やお腹の弾力、経絡に沿った肌の強ばりなどを直接確認し、調整の要点を定めます。
調整の方針と進め方
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滞りを緩やかに解く:
巡りが停滞している場所を整えることで、膝の熱感やこわばりが穏やかに変化していくことを目指します。 -
関連する働きの助け:
膝そのものだけでなく、膝の前面を走る通り道や、お身体の芯を支える機能に働きかけ、全体的な回復を促します。 -
その時々に合わせた刺激:
使い捨ての細い鍼や、温かさを伝えるお灸を用い、その日のお身体の状態に合わせた、負担の少ない刺激量で調整を行います。

日常の養生:
膝の負担を和らげる動作とお身体を整える習慣
膝の状態は、日々の荷重の受け方や冷え、そして内面的な巡りの影響を受けています。
調整と並行して、膝への物理的な負担を和らげるための工夫を少しずつ取り入れてまいりましょう。
膝をいたわるための習慣
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動き始めの緩やかな始動:
朝起きた際や、長く座っていた後は、関節周囲の巡りが鈍くなっています。いきなり立ち上がらず、膝を軽くさすったり、足首を動かしたりして、巡りが整うのを待ってから動くようにしましょう。 -
階段での適切な支え:
階段の上り下り、特に下る際には手すりを用い、膝にかかる衝撃を分散させることが大切です。上る際も一段ずつ、ゆっくりと重心を運ぶよう心がけてみてください。 -
関節を冷えから守る:
膝や太ももを冷やさない服装を選び、夏場の冷房や冬の寒さから守りましょう。入浴や蒸しタオルなどで温めることは、巡りの滞りを和らげる助けとなる場合がございます。 -
控えめな食生活と消化への配慮:
膝の通り道は消化器の状態とも関わっています。腹八分目を心がけ、消化に良い温かな食事を摂ることで、お身体の巡りがスムーズになり、膝の重だるさが変化することがございます。 -
気候の変化に合わせた休息:
雨の日など、気圧が変化する際は水分代謝が乱れやすくなります。無理に動こうとせず、入浴などで巡りを促しながら、ゆったりと過ごす時間を設けることも養生の一つです。
冬の庭をゆっくりと手入れするように、焦らず小さな調整を積み重ねていくことで、不快感に左右されにくい状態へと近づく場合がございます。

調整の費用と通院の考え方:
膝の不快感に対する継続的なアプローチ
膝の状態を整えていくためには、局所の不快感を和らげることと並行して、それを支えるお身体の地力を補っていくことが大切です。当院の調整は、健康保険の適用外となりますが、お一人おひとりの状態に合わせた丁寧な見立てを心がけております。
今お困りの状態だけでなく、これまでの経緯や日々の習慣を伺い、お身体全体のバランスを拝見します。その上で、今後の調整方針を組み立てます。
その日のお身体の変化を確認しながら、滞っている巡りを促し、膝への負担が軽減されるよう継続的な調整を行ってまいります。
通院の間隔についての目安
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初期の段階(不快感や強ばりが目立つ時期):
お身体の状態を落ち着かせるために、週に1〜2回程度の頻度で調整を重ねることが、変化を促す助けとなる場合がございます。 -
中期の段階(動きに滑らかさが出てきた時期):
週に1回程度の頻度で、整い始めたバランスを定着させていきます。お身体の芯から支える力を補うことを目指します。 -
安定した段階(日常の負担が和らいだ時期):
2〜4週間に1回程度の頻度で、お身体全体の巡りを点検し、良い状態を維持するための養生として調整を継続することがございます。
膝の調整は、古い建物の基礎をゆっくりと補強していく作業に似ているかもしれません。急激な変化を求めるのではなく、一歩ずつ着実にお身体の環境を整えていくことを大切にしています。
通院の頻度については、お仕事やご生活の状況、そしてお身体の反応を見ながら、無理のない範囲でご相談の上決めてまいりましょう。

ご予約・ご相談
院長プロフィール
中村 麻人(なかむら あさと)
札幌「東洋中村はり灸院」院長・鍼灸師。
「森を見て木を治す」東洋医学の視点で、肩こり、腰痛をはじめ、生理痛・顔面神経麻痺・潰瘍性大腸炎・耳管開放症など、原因不明・治療法が限られる慢性疾患を中心にはり治療を行っています。
