慢性上咽頭炎によるお身体の不調:
東洋医学から見た自律神経と粘膜の調整
喉の奥の違和感や、それに伴う倦怠感は、粘膜の過敏さと自律神経の乱れが相互に影響し合っている状態と考えられます。
東洋医学では、喉という局所のみならず、呼吸器系や消化器系を含めた全身の巡りを見つめ直します。
お身体全体のバランスを穏やかに整えることで、過敏になった粘膜への負担が和らぎ、日々の重だるさが軽減する場合があります。

目次:慢性上咽頭炎への理解を深めるために
喉の違和感やそれに伴う全身の不調に対し、東洋医学がどのような視点でお身体を観察し、調整を進めていくのか。その基本的な道筋を順を追ってご案内します。

慢性上咽頭炎の病態と現代医学の視点:
局所への対処と全身への関わり
慢性上咽頭炎は、鼻の奥に位置する「上咽頭」という粘膜組織に、持続的な炎症が生じている状態を指します。上咽頭は呼吸とともに外気が常に触れる場所であり、お身体を守る防御反応の最前線でもあります。
ここに慢性的な負担がかかると、喉の痛みやヒリつき、あるいは何かが詰まっているような違和感として現れ、日々の生活に小さくない影響を及ぼす場合があります。例えるなら、「お身体の玄関口で、微細な火種が静かにくすぶり続けている状態」と言えるかもしれません。
病院での主な対応と治療法
- 診断と検査 内視鏡などを用いて、上咽頭の状態を確認します。腫れや粘液の付着といった局所的な所見に基づき、方針が検討されます。
- 薬物を用いた調整 炎症を抑えるための消炎薬や、粘膜の状態を整える薬などが、必要に応じて処方されるのが一般的です。
- 上咽頭への直接的なアプローチ 薬剤を直接塗布し、粘膜の反応を促す治療法(Bスポット療法など)が行われることもあります。これは局所の状態を整えるための専門的な手段の一つです。
臨床上の視点と課題
- 局所と全身の関係 現代医学の治療は、主に炎症が起きている場所へ直接働きかけることに優れています。一方で、なぜそこが慢性的に弱くなってしまったのか、というお身体全体の背景については、個別の判断に委ねられる部分が多くあります。
- 体質的な背景 冷えや、日常的な緊張による自律神経の乱れ、あるいは疲労の蓄積といった全身のバランスが、局所の回復を妨げている場合が少なくありません。
- 補完的な視点 炎症を繰り返しやすいお身体の状態そのものを見つめ直すとき、東洋医学が提案する「全身を整える」という視点が、一つの助けとなる場合があります。

東洋医学による全身の調整:
粘膜の過敏さと巡りの滞りを見つめ直す
東洋医学的な観察
(お身体の連動性)
西洋医学が上咽頭という「場所」の炎症に直接働きかけるのに対し、東洋医学では、なぜその場所が慢性的に敏感になってしまったのか、という背景を全身の連動性から観察します。
- 全体的な評価 喉の不調を単独の事象とせず、お身体の冷え、血流の状態、自律神経の働き、そして呼吸器や消化器の機能といった多角的な視点から、現在のバランスの乱れを確認します。
- 調整の考え方 局所の不快感を和らげることと並行して、お身体の土台を整えていくことを目指します。例えるなら、「一部の不具合を直すために、建物全体の歪みを正していく」ような調整と言えるかもしれません。
調整の柱:鍼灸による働きかけ
- 巡りの滞りを解く 上咽頭周辺に関連する経路(気の通り道)へ刺激を与え、炎症部位周辺の血流や滞りを緩やかに整えます。これにより、粘膜環境の負担が和らぐ場合があります。
- 防御機能を支える経路の調整 粘膜や外気との接点を司る「肺」に関わる系統や、全身のエネルギーを支える系統のバランスを整えることで、お身体が本来持っている防御機能を維持しやすい環境を作ります。
- 自律神経へのアプローチ 鍼灸の穏やかな刺激は、過敏になった感覚や自律神経の昂ぶりを鎮める方向に働き、全身の緊張を緩和させる一助となります。
施術への配慮(安心してお受けいただくために)
- 細やかな刺激設定 痛みへの感受性が高まっている場合も考慮し、使い捨ての極細鍼を用いて、お一人おひとりの状態に合わせたごく軽い刺激で調整を行います。
- 温熱による調和 必要に応じて、お身体を芯から温めるお灸を用います。熱さを我慢するのではなく、心地よい温かさを通じて血流を促し、お身体を弛めていきます。
調整を重ねた先に見込まれる変化
慢性的な喉の不調と向き合う過程で、以下のような変化が現れる場合があります。
- 局所の負担の緩和 喉のヒリつきやつかえ感が、以前に比べて穏やかに感じられるようになる。
- 併随する不調の軽減 慢性的な首肩の凝り、倦怠感、あるいは睡眠の質の低下といった全身的なご負担が和らいでいく。
- 環境変化への適応 気候の変化や日々のストレスに対して、お身体が過剰に反応しにくい状態へと近づいていく。

慢性上咽頭炎と全身のつながり:
自律神経や巡りの乱れが示す多岐にわたるサイン
慢性上咽頭炎という状態は、喉の粘膜だけでなく、全身の巡りや自律神経の働きと深く関わっている場合があります。東洋医学では、一見喉とは関係がないように思える全身の細かな変化も、お身体全体のバランスを知るための重要な手がかりと考えます。
例えるなら、「喉の違和感は表面に現れた氷山の一角であり、その下にはお身体全体のバランスの偏りが潜んでいる」と言えるかもしれません。
慢性的な鼻炎や副鼻腔の重さ、季節の変わり目の不調、咳が長引きやすいといった、お身体の防御機能に関わるサイン。
便通の乱れや、お腹の張り。東洋医学では、粘膜の健康状態と胃腸の働きは密接に関わっていると考えられています。
月経周期に伴う心身の変化や生理痛、冷えのご負担など。お身体の血の巡りや安定感を示す指標となります。
お肌の乾燥や過敏さ、手足の冷え、あるいは逆にのぼせを感じるなど。全身の水分バランスや熱の偏りに関わるサイン。
朝起きた時の腰の重さ、首筋から肩にかけての緊張、なかなか抜けない慢性的なだるさなど。
眠りが浅い、夜中に目が覚める、あるいは何となく気分が晴れないといった、自律神経の昂ぶりを示すサイン。

慢性上咽頭炎へのアプローチに東洋医学を取り入れる意義:
体質の底上げと多角的な調整
① 繰り返す不調の背景を見つめる
喉の違和感やヒリつきは、お身体の防御機能が低下しているサインかもしれません。東洋医学では、目に見える不調を追いかけるだけでなく、その背景にある「冷え」や「巡りの滞り」を整えていくことを大切にします。
例えるなら、「弱った植物の葉に水をかけるだけでなく、根が張る土壌そのものを豊かにしていく」ような調整を目指します。
② 多岐にわたる不調の同時並行ケア
慢性上咽頭炎に伴って現れる頭痛、倦怠感、あるいは以前お話しされていた生理痛といった全身の不調は、お身体の中では繋がった一つの事象として捉えることができます。
喉の調整と並行して全身のバランスを整えることで、これら複数のご負担が、まとまって和らいでいく場合があります。
③ 粘膜と自律神経のベースを整える
鍼灸の穏やかな刺激は、過敏になった粘膜環境を落ち着かせ、自律神経の働きを安定させる方向に作用します。
お身体本来の調整機能が守られることで、季節の変わり目や日々のストレスといった外部環境の変化に対して、過剰に反応しにくい状態へと近づいていくことが期待できます。
④ 現代医学との調和と安心感
鍼灸は、お薬や病院での処置(Bスポット療法など)と相反するものではありません。西洋医学による的確な局所への対処を尊重しながら、お身体の回復力を底上げする補完的な役割を担います。
極細の鍼や心地よい温熱のお灸を用い、お身体に無理のない範囲で、ゆっくりと変化を促していきます。

慢性上咽頭炎への施術:
料金と体質に合わせた通院の目安
当院の施術は、喉の炎症という局所的な問題だけでなく、それを引き起こしているお身体の土台を整えていくことを目的としています。公的医療保険の適用外となりますが、長期的な視点でお身体全体の負担を軽くしていくための調整を行っております。
現在の症状に加え、これまでの経過やお身体全体の巡りの状態を詳しく伺います。その上でお一人おひとりに合わせた施術計画を検討させていただきます。
前回の施術後のお身体の変化を確認しながら、粘膜の抵抗力や自律神経の安定を目的とした継続的な調整を行います。
お身体の変化を促すための目安
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導入の時期(不調を感じやすいとき):
週に1回、あるいは状態によって2回程度の頻度で調整を重ねることで、敏感になっているお身体の状態が落ち着きやすくなる場合があります。 -
安定の時期(変化を維持するとき):
喉の違和感が少しずつ和らいできた後は、1〜2週間に1回程度のペースで、お身体の巡りを整える力を定着させていきます。 -
維持の時期(健やかさを守るとき):
お身体の状態が安定してきた後は、月に1回程度の定期的な調整を行うことで、季節の変わり目などのご負担を軽くできる場合があります。
慢性的なお身体の状態を整えていく過程は、「長い時間をかけて固まった土を、少しずつ丁寧に耕していく作業」に似ています。
一度の施術ですべての不調がなくなるわけではありませんが、一歩ずつ丁寧に向き合っていくことで、お身体の基礎となる力が育まれていくと考えております。

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院長プロフィール
中村 麻人(なかむら あさと)
札幌「東洋中村はり灸院」院長。
「森を見て木を治す」東洋医学の視点で、肩こり・腰痛をはじめ、生理痛・顔面神経麻痺・潰瘍性大腸炎・耳管開放症など、病院では原因不明とされる慢性疾患や、治療法が確立されていない症状を中心にはり治療を行っています。
