慢性的な肩の緊張に:
「深部の巡り」を整え、お身体の負担を和らげる働きかけ
長引く肩まわりのこわばりは、筋肉の表面的な緊張だけでなく、東洋医学でいう「巡りの滞り」が深部に生じている場合があります。
手技が届きにくい深層の循環を鍼灸によって促すことで、緊張の持続を和らげ、お身体の負担が軽くなるよう導きます。
例えるなら、水の流れを塞いでいた堆積物を取り除き、本来の澄んだ流れを取り戻すような、穏やかな変化を目指してまいります。

目次:肩の緊張を和らげ、健やかさを保つための道筋
一時的な休息だけでは変化を感じにくい肩の緊張に対し、お身体の巡りやバランスの視点から、負担を和らげるための考え方をまとめています。

肩の緊張が生じる背景:
日常の負荷と東洋医学的な視点
生活環境に伴う主な要因
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持続的な姿勢の負荷:
長時間のデスクワークやスマートフォンの操作などは、首から肩にかけての筋肉に絶えず負荷をかけ続け、循環の滞りを招く場合があります。 -
心身の緊張と自律神経:
緊張した状態が続くと、お身体を守ろうとする反応が過剰になり、無意識のうちに肩まわりの力みが抜けにくくなることがあります。 -
目からくる緊張:
細かい作業や画面を注視し続けることは、目の周囲だけでなく、連動する首や肩の筋肉にもこわばりを与える要因となります。
東洋医学が捉える、緊張が続く背景
休息をとっても緊張が和らぎにくい場合、東洋医学ではお身体の内側のバランス、つまり「巡りの状態」に目を向けます。
お身体の表面に現れるこわばりを、内側のエネルギー(気)の滞りや、栄養(血)の過不足のサインとして捉えていきます。
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巡りの滞り:
感情の動きや環境の変化により、お身体の調節機能が一時的に乱れ、循環が妨げられている状態です。 -
滋養の不足:
冷えや休息の不足により、筋肉を健やかに保つための栄養が行き渡りにくくなり、柔軟性が損なわれやすくなっている状態です。
鍼灸による働きかけは、こうしたお身体の内側の巡りを整えることで、自然な緩まりを促し、負担が重なりにくい土台づくりを支えてまいります。

東洋医学的な視点:
巡りの滞りと肩の緊張の関わり
東洋医学では、肩の緊張を単なる局所の問題としてではなく、お身体全体のバランスや「巡り」の状態が表面に現れたものとして捉えていきます。
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「巡り」と不調の関わり:
古くからの考え方に、巡りが滞ることで不調が生じるという視点があります。お身体を維持するためのエネルギーや栄養が隅々まで行き渡りにくくなると、筋肉にこわばりを感じやすくなる場合があります。 -
滋養の状態に目を向ける:
慢性的な肩の重さは、筋肉を健やかに保つための栄養が十分に届いていないサインであることも考えられます。
例えるなら、水の流れが細くなった土地で、土壌が本来のしなやかさを失い、硬く締まってしまっている状態に近いかもしれません。 -
お身体を支える働きの調整:
鍼灸による働きかけは、自律神経の緊張を和らげることや、栄養を生み出し全身へ届ける働きを整えることを通じて、お身体の内側から緩まりやすい状態を育むことを目的としています。
日常的なセルフケアや一般的な対処では変化を感じにくい場合、こうしたお身体の内側の巡りや土台となる機能を整えることで、負担が和らいでいく可能性があります。

お身体の状態とあらわれやすい部位:
肩の緊張から見る体質の傾向
東洋医学では、肩のどのあたりに緊張や重さを感じるかによって、お身体の内側のどの働きに負担がかかっているかを推測する手がかりとします。
| 巡りの滞り | 首の付け根や右肩のあたりに緊張が出やすい傾向があります。目の疲れや、気分の波を感じやすいときに関連することが多いようです。 |
|---|---|
| 休息の不足 | 肩甲骨の上部や背中のあたりに重さを感じやすい傾向があります。眠りの浅さや、落ち着かなさを伴う場合に見られることがあります。 |
| エネルギーの不足 | 肩の先から腕にかけて、力が入らないようなだるさを伴う傾向があります。胃腸の重さや、お身体全体の重だるさと関連することが考えられます。 |
| 防衛力の低下 | 左肩や背中全体に、こわばりを感じやすい傾向があります。季節の変わり目の不調や、乾燥が気になるときに関連する場合があるようです。 |
| 蓄えの不足 | 肩甲骨の内側、背骨に近いあたりに、深く根を張るような重さを感じる傾向があります。慢性的な疲労や、足腰の重だるさを伴う際に見られます。 |
これらはあくまで一つの目安であり、実際には複数の傾向が重なり合っていることも少なくありません。施術では、部位の状態だけでなく、お身体全体のバランスを丁寧に見極めてまいります。
木々の枝葉(局所の緊張)を整えるだけでなく、その根を張る土壌(全身の巡り)に目を向けることで、肩まわりの負担が和らぐとともに、お身体全体のバランスが整いやすくなる場合があります。

鍼灸による働きかけ:
お身体の内側から緊張を和らげる理由
休息をとっても肩の緊張が繰り返される場合、お身体に備わっている調整機能や、深部の循環が一時的に低下していることが考えられます。鍼灸では、こうした「内側のバランス」に働きかけます。
巡りの調整によるアプローチ
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緊張が生じる背景を整える:
お身体全体の巡りの状態を見極め、必要な箇所に栄養が行き渡るよう促します。これにより、無理に力を加えなくても、お身体が自ら緩もうとする働きを支えます。 -
自己調整の働きを助ける:
特定の経穴(ツボ)を刺激することで、お身体が本来持っている健やかさを保とうとする力を引き出します。筋肉が硬くなりやすい環境そのものを、穏やかに整えていくことを目指します。 - 例えるなら、硬く乾いた土を無理にほぐすのではなく、地面の下に穏やかな水を流し、土全体が自然に柔らかくなるのを待つような働きかけです。
自律神経とお身体全体の調和
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力みを和らげる働き:
自律神経のバランスに配慮した施術を行い、無意識のうちに入ってしまう肩や首の力みが抜けやすくなるよう導きます。 -
随伴する不調への重なり:
お身体全体の巡りが整うことで、肩の重さとあわせて感じていた頭の重さ、目の疲れ、冷えといった、重なり合う不調の負担もあわせて和らぐ場合があります。

日常生活での配慮:
お身体の負担を増やさないための考え方
肩の緊張が長引いているとき、良かれと思って行っている習慣が、かえってお身体の巡りを妨げてしまう場合があります。無理のない範囲で、日々の過ごし方を見つめ直してみましょう。
配慮しておきたい幾つかの習慣
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過度な刺激:
強い力で押したり揉んだりすると、お身体は防御反応として、さらに筋肉を強張らせてしまうことがあります。一時的に心地よく感じても、後から負担が重なる場合があるため注意が必要です。 -
局所への衝撃:
叩くような刺激は、筋肉や周囲の組織に細かな負担をかけ、緊張を深める要因となることがあります。特に重だるさが強いときは、優しく扱うことを心がけましょう。 -
温度による巡りの停滞:
お身体が冷えると、血管が収縮し、隅々まで巡りが行き渡りにくくなります。特に冷たい風が直接あたる環境などは、緊張を長引かせる一因となる場合があります。
つらさを感じる時は、無理にほぐそうとするよりも、温めてお身体を休めることを優先してください。東洋医学の視点では、お身体全体の巡りを穏やかに整えることが大切だと考えます。
例えるなら、凍って硬くなった地面を無理に耕すのではなく、春の陽だまりのような温かさで自然に緩むのを待つような意識です。

お身体を整えるツボの活用:
巡りを促すための代表的な経穴
東洋医学では、肩の緊張を和らげるために、手足にあるツボ(経穴)を用いることがあります。これらは全身の巡りを調整する入り口のような役割を担っており、ご自宅での養生にも取り入れることができます。
陽陵泉(ようりょうせん)
場所: 膝の下、外側にある骨の出っ張りから、少し前方のくぼんだあたり。
役割: 全身の筋肉や腱の緊張に関わりの深い場所とされています。肩や首筋のこわばりが気になるときに、足元から緩める働きを助ける場合があります。
大椎(だいつい)
場所: 首を前に傾けたときに、付け根で最も大きく触れる骨のすぐ下のくぼみ。
役割: 首や肩まわりの巡りを促す際に重要視される場所です。自律神経が昂ぶっているときや、お身体に冷えを感じる際にも、温めることで負担が和らぐことがあります。
肩井(けんせい) 【ご参考】
場所: 首の付け根と、肩の端を結んだ中間地点。
役割: 肩こりの際によく知られる場所ですが、刺激に対して敏感な部位でもあります。
※セルフケアでは、強く押すよりも、蒸しタオルなどで優しく温める程度に留めてください。過度な刺激はかえって緊張を強める可能性があるため注意が必要です。
お身体全体の調和を整え、持続的な健やかさを育むためには、お一人お一人の状態に合わせた専門的な調整が必要な場合もあります。

施術費用と通院の考え方:
お身体の状態に合わせた計画的な取り組み
当院では、肩まわりの緊張に対し、全身の巡りを整えるアプローチを行っております。自由診療(保険外)となりますが、お身体の状態を丁寧に伺い、負担が和らいだ状態を維持していくための計画を共に考えてまいります。
お身体の状態を詳しく伺い、緊張の背景にあるバランスの乱れを見極めます。その上で、今後の見通しを含めた施術を行います。
初回にお立てした方針に基づき、お身体の状態に合わせて巡りを整えてまいります。日々の変化を伺いながら内容を調整します。
通院頻度に関する一つの目安
お身体が整うまでの時間は、これまでの生活環境や体質によって異なります。以下の段階を目安として、無理のない範囲での通院をご提案しています。
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初期の段階(緊張が強く、お身体が変化しやすい時期):
まずは巡りの土台を整えるため、週に1〜2回程度の頻度でお越しいただくことが、負担を和らげるための一助となる場合があります。 -
安定への段階(楽な感覚が少しずつ続くようになる時期):
お身体の状態が落ち着き始めたら、週に1回、あるいは10日に1回程度へと、間隔を少しずつ広げて様子を見てまいります。 -
維持の段階(穏やかな状態を保ちたい時期):
日常生活を無理なく過ごせるようになりましたら、月に1回程度の定期的な調整を行うことで、大きな負担が重なる前に整えておくことができます。
お身体の調整は、ゆっくりと時間をかけて庭の土壌を整えていく作業に似ています。
最初は少し根気が必要かもしれませんが、焦らず、お身体が本来持っている調整機能を支えていくことが、穏やかな日常への近道となります。

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院長プロフィール
中村 麻人(なかむら あさと)
札幌「東洋中村はり灸院」院長・鍼灸師。
「森を見て木を治す」東洋医学の視点で、肩こり、腰痛をはじめ、生理痛・顔面神経麻痺・潰瘍性大腸炎・耳管開放症など、原因不明・治療法が限られる慢性疾患を中心にはり治療を行っています。
