子宮内膜症の根本的な体質改善
内膜症の土台は「血の滞り（瘀血）」と「冷え」による不通即痛（ふつうそくつう）。
形（病変）だけでなく、子宮を生み出した働き（機能）と血の巡りを回復させる東洋医学の視点。
瘀血体質を整え、激しい月経痛・再発リスク・不妊の不安に寄り添います。
本ページの内容（目次）
激しい痛みを伴う子宮内膜症の根本原因である「瘀血（おけつ）」に挑み、再発しにくい体質を目指す道筋を解説します。
子宮内膜症の概要と東洋医学が考える根本原因
子宮内膜症は、本来子宮内にある子宮内膜の組織が、子宮の外（卵巣、腹膜など）で増殖・剥離を繰り返す疾患です。東洋医学では、これは子宮周囲の「血（けつ）の滞り」、すなわち「瘀血（おけつ）」が極めて強く、子宮に「冷え」が蓄積している体質のサインと捉えます。 まるで、子宮周囲の川の流れが完全にせき止められ、溢れた血（内膜）が予期せぬ場所で停滞し、炎症を起こしているような状態です。
概要：若年層で増加する「瘀血」の深刻化
- 内膜組織の異所性増殖：月経のある女性の約1割が悩み、若年層で増加傾向にあります。これは、現代女性の冷えやストレスによる瘀血の深刻化を示唆しています。
- 放置リスク：放置は炎症を悪化させ、がん・不妊のリスクにつながる可能性があり、早期の血の巡りの改善（活血化瘀）が重要です。
主な症状：不通即痛による激痛
- 激しい月経痛：寝込むほどの痛みは、瘀血による「不通即痛（通じざれば則ち痛む）」という激しい痛みです。生理を重ねるごとに痛みが強くなるのが特徴です。
- 不正出血・性交痛・慢性骨盤痛：瘀血による子宮周囲の血流の悪さや炎症が、月経時以外にも持続的な痛みや不調を引き起こします。
- 腹部の重だるさ：骨盤内に瘀血が停滞していることによる「重い・張る」感覚であり、日常動作にも支障をきたします。
西洋医学の視点と限界：「炎症の鎮火」と「体質改善」の乖離
子宮内膜症への西洋医学のアプローチは、「目に見える炎症や病巣」の処置に優れますが、病気を生み出した体質の根本的な原因（瘀血、冷え）までは扱いにくいという限界があります。
現状と主な手段：対症療法と外科的処置
- 原因は未解明→対症療法と手術が中心：痛み止めで炎症物質を抑え、ホルモン剤（ピルなど）で病巣の増殖を抑制します。これは「今燃えている火を消す」対症療法が中心です。
- 再発リスク：対症療法で改善が不十分な場合は手術へ進みますが、子宮内膜症を生み出す体質の土壌（瘀血）が残っているため、病巣を切除しても再発リスクが残ります。
- 「木を見て森を見ない」アプローチ：病院では、生理痛は婦人科、冷えは内科など、診療科が分かれるため、全身の気の滞り（肝の乱れ）や冷えという体質の森全体を見て根本を整えるアプローチになりにくいです。
東洋医学の鍼灸治療は、この「機能面の土壌改善」に特化し、西洋医学では手が届きにくい再発しにくい体質づくりを目指します。
東洋医学の視点：「瘀血（おけつ）」こそが内膜症の土台
子宮内膜症は、東洋医学において「瘀血（おけつ）が最も根深く関わる疾患」の一つです。この血の滞りを解消し、子宮周囲の巡りを回復させることが、痛みの軽減と病状の安定化に不可欠です。
瘀血とは：血がドロドロに固まり、栄養路を塞いだ状態
瘀血は、子宮や骨盤内を流れる血液の質が低下し、汚れて滞っている状態を指します。
- 巡り不足による不調：瘀血により、酸素・栄養の巡りが不足し、痛み（不通即痛）や冷え、皮膚の色素沈着など、全身の不調を招きます。
- 筋腫・内膜症への連鎖：長引く月経痛を薬で抑え込み、根本の滞りの解消が続かないと、子宮周囲で血の滞りが固まり続け、子宮内膜症や筋腫といった形（病変）で現れやすいのです。
- 悪化要因：睡眠不足、過労、ストレス（肝の負担）、冷たい飲食などで血流が悪化すると、瘀血体質はさらに進行します。
全身の不調：瘀血が招く多彩なサイン
瘀血は全身の経絡を滞らせるため、婦人科だけでなく、多くの併発症状となって現れます。
- 婦人科：強い生理痛（激痛）、PMS、不正出血、生理不順。
- 精神面：肝（かん）の気の滞りが強いため、イライラ、落ち込み、情緒不安定に。
- 皮膚：シミ・乾燥肌、あかぎれ、白髪、爪の割れや縦線など、血の不足や滞り**が表面に現れます。
- 頭部・整形：肩こり・腰痛・頭痛（特に刺すような痛み）、眼精疲労、冷え症。
- 吸器・眼：肺や肝の機能低下から、喘息、鼻炎、ドライアイ、目のかゆみなど。
東洋医学（鍼灸）によるアプローチ：「瘀血」を溶かし、再発を防ぐ
子宮内膜症の治療では、「瘀血（おけつ）」という血の滞りを解消し、子宮周囲の慢性的な炎症と激しい痛みを鎮めることを目標とします。痛みを一時的に抑えるのではなく、内膜症を生み出した体質の根本に挑みます。
施術の考え方：全身の働きを立て直す
- 四診法で全身を評価：脈・舌・お腹の張りなどから、瘀血体質の本質（冷え、肝の滞り、腎の虚弱など）に迫ります。
- 経絡治療で気血を巡らせる：「活血化瘀（かっけつかお）」を目的に、肝・脾・腎の経絡を調整します。子宮周囲の血流を改善することで、痛み・不正出血・骨盤内うっ血を根本から軽減します。
- 体の「働き」を底上げ：子宮内膜症を生み出す体内の機能的な偏りを底上げし、再発リスクに長期目線で対処します。
進め方と期待：薬に頼らない安定を目指す
- 根本アプローチ：痛み止めやホルモン剤（対症療法）に依存せず、体質から変えることを目指します。
- 全身の同時改善：内膜症の背景にある肝の気の滞りが改善されることで、肩こり・冷え・頭痛・イライラ**といった周辺症状も同時に緩和が期待できます。
- 連携の推奨：西洋医学での検査（病変の確認）と東洋医学での施術（体質改善）の併用が、最も安全で効率的な治療法です。
改善に役立つ生活習慣：瘀血を溶かし、「肝」を労わる
鍼灸で子宮周囲の「瘀血（おけつ）」を流すだけでなく、生活習慣で「血の質」を高め、「肝の滞り」を防ぐことが、内膜症の症状を安定させる鍵となります。
避けたいもの：瘀血を助長する食品
以下の食品や習慣は、血を汚し（瘀血）、巡りを滞らせる最大の原因となります。
- 白砂糖（人工甘味料含む）：最優先で控えるべき食品です。血糖値を急激に上げ、体内で炎症（熱）と湿（しつ）を生み出し、瘀血を助長します。
- 肉類は控えめに：特に牛肉は血を濃くし、瘀血を強める傾向があるため注意が必要です。選ぶなら鶏など、あっさりとしたものを。
- 乳製品（牛乳・ヨーグルト・チーズ）：体質によって「湿（しつ）」を生みやすく、気の巡りを妨げるため、習慣化しないようにしましょう。
※ 冷たい飲食も子宮を冷やし（寒邪）、瘀血を固めるため、控えるべきです。
取り入れたいこと：「肝」と「血」を養う
- 食養生：和食中心、未精製の穀類、海藻、豆類、野菜で血の質を高め、血の巡り（活血化瘀）を助けます。
- 適度な運動：ウォーキング・ヨガ・ストレッチは「肝」の気の滞りを解消し、全身の巡りを促進します。
- 良質な睡眠：就寝は日付が変わる前を目標に：深夜1時〜3時は肝が血を貯蔵する時間です。この時間に熟睡することで自律神経を安定させ、筋腫増大に関わるホルモンバランスを整えます。
- ストレスケア：呼吸法や瞑想で「肝」の過緊張を緩め、ホルモンバランスの乱れを防ぎます。
※ 症状が強い・急変する場合は、鍼灸治療と並行して、医療機関へ早めの相談を。
料金について
初回：5,500円（税込）
2回目以降：5,000円（税込）
院長プロフィール
中村 麻人（なかむら あさと）
札幌「東洋中村はり灸院」院長・鍼灸師。
「森を見て木を治す」東洋医学の視点で、肩こり、腰痛をはじめ、生理痛、顔面神経麻痺、潰瘍性大腸炎、線維筋痛症、耳管開放症など、病院で原因不明・治療法がない慢性疾患を中心に経絡治療を行っています。