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ヘルペスの概要と西洋医学の認識:「邪熱」の潜伏と「正気の不足」

ヘルペスは、チクチク・ピリピリとした神経の痛みや赤い水疱(水ぶくれ)が唇や顔、体幹などに現れるウイルス性疾患です。東洋医学では、これは一度侵入した「邪熱(じゃねつ:病的な熱の邪気)」が体内に潜伏し、体の「正気(せいき:体力・免疫力)」が落ちた隙を突いて噴き出す状態と捉えます。まるで、消し炭になったはずの火種(邪熱)が、薪(疲労やストレス)を与えられると再び燃え盛るようなものです。再発しやすく、忙しさ、寝不足、ストレス、寒暖差などで悪化しがちです。

主な特徴:熱と湿の表出

  • 唇・口周りの水疱/ただれ、ヒリつき、接触痛:水疱は東洋医学でいう「湿(しつ)」、痛みやヒリつきは「熱(ねつ)」や「風邪(ふうじゃ)」が神経を刺激しているサインです。
  • 帯状疱疹:神経に沿った片側性の痛みや服の擦れ痛(アロディニア)は、邪熱が深く神経(経絡)を焼いた後に、その場に瘀血(おけつ:血の滞り)が残って気血の巡りを遮断している状態です。
  • 治っても再発をくり返す傾向:これは、体内に潜伏した邪熱が根深く、正気(体力)が十分に回復していないことを示しています。

西洋医学(病院)の治療と東洋医学の役割

  • 対症療法が中心:抗ウイルス薬でウイルスの増殖を抑えることが治療の中心です。これは「燃え盛る火を一時的に鎮める」ための迅速な処置です。
  • 再発の課題:服薬で一時的に軽快しても、体質の根本(正気の不足)が改善されていないため、体調次第で再発することが多いのが課題です。
  • 東洋医学の役割:慢性化・再発性ヘルペスには、「全身のコンディション調整」が鍵となります。鍼灸は五臓の働きを底上げし、潜伏した邪熱を排泄させ、正気を補うことで再発しにくい体質へと導きます。

東洋医学の捉え方:体質の弱さが「潜伏した熱」を再燃させる

ヘルペスが再発を繰り返すのは、体内に潜む「邪熱(じゃねつ)」を押しとどめる「正気(体力・免疫)」が不足しているためです。この「正気の不足」こそ、東洋医学が整えるべき体質の乱れです。

再発の背景:体質の土台の弱り

五臓六腑の連携が崩れると、免疫力が低下し、邪熱が活動しやすい環境になります。

  • 肺・脾・腎のはたらき低下:
    • 肺(はい):体表のバリア、免疫の最前線。
    • 脾(ひ):消化吸収、栄養(気血)の生成。
    • 腎(じん):生命力、ホルモン、排泄。
    これらが弱ることで、免疫・代謝の土台が崩れ、邪熱が再燃しやすくなります。
  • 「気・血・水」の巡りの滞り:不通即痛の原則通り、エネルギー(気)や栄養(血)の巡りが滞ると、チクチク・ピリピリとした痛みやヒリつきとして症状が強く現れます。
  • 全身の調整:ヘルペスは局所症状ですが、局所ではなく全身を整えることで、体内の邪熱を排泄し、再発しにくい体へと導きます。

四診法で原因を特定:再発トリガーを見抜く

ヘルペスの再発を促す「トリガー(火付け役)」は、体質によって異なります。

  • 望診・聞診・問診・切診:脈・舌・お腹の張りなどから、冷え(脾虚)が原因か、ストレス(肝の滞り)が原因か、あるいは過労(腎の消耗)が原因かを詳細に特定します。
  • 「再発トリガー」の整理:疲れ、睡眠、冷え、食癖、ストレスなど、生活習慣のどこに問題があるかを整理します。
  • オーダーメイド施術:特定した体質に基づき、「潜伏した熱を冷まし、弱った正気を補う」ためのツボを厳選し、一人ひとりに合わせたオーダーメイド施術へ落とし込みます。

東洋医学による改善方法:「邪熱」の排泄と「正気」の補強

再発性ヘルペスの根本治療は、潜伏している邪熱を排泄し、ウイルスが活動する隙を与えない強靭な体質(正気)を築くことです。鍼灸と日々の養生が、この体質改善の両輪となります。

鍼灸(経絡治療):内側から免疫力を立て直す

全身の気の巡りを整え、疲労やストレスで弱った五臓の機能を底上げします。

  • 肺・脾・腎を底上げ:
    • 肺(はい):体表の免疫(衛気)のバリアを強化。
    • 脾(ひ):気血(体力・栄養)の生成を促進。
    • 腎(じん):生命力とホルモンバランスの根源を補強。
    これらを通して、免疫と代謝の巡りを整えます。
  • 全身ツボでバランス調整:発症部位(局所)だけでなく、腕・足など体幹から離れた全身のツボ(遠隔取穴)で調整することで、効率よく邪熱を散らし、正気を補います。
  • 局所のケア:症状や体質により、口唇ヘルペスでは患部周辺の経絡に対し、軽いお灸や温熱刺激を併用し、邪熱の排泄を促すこともあります。

養生(セルフケア):火種を与えない生活

ヘルペスの再発トリガーとなる「疲労」「ストレス」「冷え」を徹底的に排除しましょう。

  • 睡眠(最大の回復薬):日付が変わる前の就寝を目標にすることで、自己回復力(正気)を最も効率よく確保できます。
  • 食事(邪熱の生成防止):白砂糖・過度な冷飲・暴飲暴食は、体内に「湿熱」という病的な熱を生みます。これらを控え、温かい和食を中心に脾胃を労りましょう。
  • 温め(冷えの除去):入浴や首肩背中の保温で「冷え」を避けることは、正気の消耗を防ぎ、邪熱が活動しにくい環境を作ります。
  • ストレス対策(肝の安定):深呼吸・散歩・軽運動は、ストレスによる気の滞り(肝気鬱結)を解消し、自律神経を整え、再発を誘発する心の負担を減らします。

西洋医学との併用について:「急性期の鎮火」と「再発予防の土台」

ヘルペスの治療において、西洋医学と東洋医学は「攻め」と「守り」の役割を分担します。この二つを協力させることで、ウイルスの活動を抑えつつ、再発しにくい体質へと根本から変えていきます。

  • 急性期の役割分担:発症直後の急性期や強い炎症がある場合は、医療機関の管理下で抗ウイルス薬を活用し、ウイルスの増殖を迅速に抑えます。これは「燃え盛る火を素早く鎮める」ための初期対応として不可欠です。
  • 鍼灸と養生で再発しにくい土台づくり:薬で症状が落ち着いた後は、鍼灸で「正気(体力・免疫)」を補い、潜伏した邪熱の排泄を促します。これは「火事の跡地に、火事が起こりにくい体質の地盤を築く」作業であり、再発しにくい体質へと土台づくりを進めます。
  • 安全な連携:服用中の薬や治療方針については、担当医と連携しながら安全に進めます。薬の副作用が気になる場合も、体質改善を通じて医師と相談の上で薬量の見直しを検討します。

よく併発される症状:全身の弱りが「邪熱の再燃」を招く

ヘルペス再発の背景には、「正気(体力・免疫)」の消耗と、気の巡りの滞りが隠れています。以下の症状は、すべて邪熱が活動しやすい体質になっているサインであり、鍼灸でまとめて調整すべきターゲットです。

自律神経・メンタル(肝・心)

  • 睡眠の質低下(浅眠・中途覚醒):心の熱や疲労が鎮まらないサイン。
  • ストレス反応(食いしばり・過緊張):肝の気の滞り。再発の最大のトリガー。
  • 冷え性・のぼせ:自律神経の乱れによる熱と冷えのアンバランス。

バリア・免疫(肺)

  • 慢性鼻炎・花粉症など呼吸器の不調:肺が司る体表の「気のバリア(衛気)」の弱り。
  • 肌の乾燥・かゆみ傾向:血の不足(血虚)や、体内の熱が皮膚を刺激しているサイン。

体力・消化(脾・腎)

  • 胃もたれ・逆流性食道炎:脾胃の弱りによる「気血の生成不足」。
  • 冷え・むくみ・倦怠感:体力消耗や水(すい)の偏り(水毒)。

巡りの滞り(気・血)

  • 肩こり・腰痛・頭痛:気血の巡りの滞り(瘀血、気滞)が全身で起こっているサイン。
  • ストレス性の緊張:気の流れが停滞し、痛みがぶり返す原因。

院長プロフィール

東洋中村はり灸院 院長 中村麻人の写真

中村 麻人(なかむら あさと)

札幌「東洋中村はり灸院」院長・鍼灸師。

「森を見て木を治す」東洋医学の視点で、肩こり、腰痛をはじめ、生理痛、顔面神経麻痺、潰瘍性大腸炎、線維筋痛症、耳管開放症など、病院で原因不明・治療法がない慢性疾患を中心に経絡治療を行っています。