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不眠症の定義と現状:日中の生活に支障をきたす慢性の睡眠障害

不眠症(Insomnia)は、眠りたいのに眠れない状態が続き、その結果として日中の活動に支障(眠気、集中力の低下、倦怠感、意欲低下など)が生じる状態を指します。

臨床的に不眠症と診断される目安は、不眠症状が週3日以上あり、それが3ヶ月以上続く場合です。

不眠症が長期化するリスク

睡眠は心身のメンテナンスに不可欠です。不眠が長期化すると、免疫の機能低下、生活習慣病、気分の不調(うつ傾向)などのリスクを高め、集中力の低下による事故などにも影響し得るため、早めのケアが安心です。 例えるなら、体が「夜間に工場閉鎖」できず、メンテナンス不足で日中の「稼働効率が極度に落ちている」状態です。

【東洋医学の視点】
不眠症は、単に睡眠時間の長短だけでなく、「翌日のコンディション」まで含めて回復を整えるのがポイントです。

不眠のタイプ:東洋医学が重視する「心と体」の覚醒パターン

不眠症は症状の現れ方によって大きく四つのタイプに分類されます。東洋医学では、それぞれのタイプが「心(しん:精神)」や「肝(かん:自律神経)」のどの機能が乱れているかを示していると捉えます。

1. 入眠困難(ねつきが悪い)

布団に入ってもなかなか寝付けない状態。30分以上寝付けないと入眠困難とされます。

  • 東洋医学の背景: 心(しん)や肝(かん)の熱や気の滞り(気滞)が原因。心が興奮して「思考が止まらない」状態です。
  • 例え: **頭のスイッチが切れない**、脳が過活動状態にある。

3. 熟眠障害(眠りが浅い)

必要な睡眠時間を確保しているのに、「眠りが浅い」「寝た実感が乏しい」と感じる状態。翌日の倦怠感や集中力低下につながります。

  • 東洋医学の背景: 心血や腎陰の不足が原因。心身を鎮める「潤い(陰液)」が足りず、「消えかかった火がくすぶり続けている」状態です。

2. 中途覚醒(夜中に目覚める)

夜中に何度も目が覚めてしまい、その後なかなか寝付けない状態。尿意、物音、かゆみなども引き金になることがあります。

  • 東洋医学の背景: 肝(自律神経)や腎(水分代謝・生命力)の機能低下。特に冷えや水分の滞りが関係し、夜間に目が覚める**パターンが多いです。
  • 例え: 体が「冷え」や「過剰な熱」で不安定になり、夜間に自動的に目覚めてしまう。

4. 早期覚醒(朝早く目覚める)

予定より2時間以上早く目覚め、その後眠ろうとしても再び眠れない状態。高齢者に多く見られますが、うつ傾向とも関連が深いです。

  • 東洋医学の背景: 心血や腎精といった体力の消耗。日が昇る時間(陽の気)に、体を沈める陰の力が不足している状態です。

主な原因:不眠を引き起こす「脳の興奮」と「気のエネルギー不足」

現代的な要因:外的刺激と脳の興奮(心・肝の過活動)

現代の不眠症は、脳が夜間になっても休息モード(副交感神経優位)に切り替われないことが大きな原因です。

  • ブルーライトと体内時計の乱れ: 液晶画面のブルーライトは、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を抑制・乱れさせます。寝る時刻のばらつきも体内時計の乱れに直結します。
  • 交感神経優位の継続: 就寝前の難作業、情報摂取(SNS、ニュース)、激しい運動は交感神経優位を続けさせ、心(精神)や肝(自律神経)が興奮し、入眠を妨げます。
  • 例え: 脳の「夜間警備システム」が誤作動を起こし、いつまでも休息モードに入れない状態です。

東洋医学の見立て:全身のエネルギー不足(気虚・血虚)

不眠は「眠りの技術」だけでなく、「眠りきる体力」がないことも原因です。

  • 気虚(ききょ)と血虚(けっきょ): 東洋医学では、眠りにもエネルギー(気)が必要だと考えます。日中の使い切り(過労)や、気を作る力(脾・肺の弱り)が弱ることでエネルギーが不足し、浅眠や不入眠(寝付けない)につながると考えます。
  • 消耗の背景: 頑張り過ぎ(肝の消耗)、消化器の負担(暴飲暴食)、呼吸器の弱さ(ぜんそく、鼻炎など)が背景にあることが多く、これらが体力を消耗させる根本原因となります。

鍼灸治療は、脳の興奮を鎮めるとともに、不足したエネルギー(気血)を補い、眠りきるための体力を底上げします。

東洋医学の考え方と施術:不眠の原因「心身の消耗」と「脳の興奮」を調整

東洋医学では、不眠を「心(しん:精神)が安らかでない状態」と捉えます。その原因が心身の消耗(気虚・血虚)か、あるいは脳の興奮(熱、気滞)かを見極め、適切なアプローチで「眠りきる体力」と「脳の鎮静」を図ります。

東洋医学独自の評価法「四診法(ししんほう)」

不眠のタイプ(入眠困難、中途覚醒など)から、その背景にある根本原因を正確に把握します。

  1. 望診: 顔色、舌の苔や色を診て、血の不足や熱の有無を判断します。
  2. 聞診: 声、呼吸音などから、体力の消耗度を測ります。
  3. 問診: 睡眠、食、便通、月経の周期など、日々の揺らぎを丁寧に聞き取り、体質を特定します。
  4. 切診: 脈、腹の反応を診て、五臓のどの機能が乱れているか(脾・肺・肝のどの機能が弱いか)を確認します。

部分的な症状(不眠)だけでなく、「森(体質)を見て木(症状)をなおす」全体像から整える設計です。

経絡治療(鍼灸)の具体的な役割

  • 気虚を補い、脾・肺・肝のバランスを調律: エネルギー不足(気虚)を補い、自律神経(肝)、体力生成(脾・肺)のバランスを調律します。
  • 自律神経の整調と体温リズムの回復を後押し: 鍼灸刺激で交感神経の過緊張を緩め、体温リズム(手足が温まり、深部体温が下がる)の回復を後押しし、自然な入眠をサポートします。
  • 全身の併発症状も同時に改善: 肩こり・腰の重さ・冷え・鼻炎・動悸など、不眠の背景にある全身の気の滞りや疲労も同時に軽くし、心身ともに安定した状態を目指します。

刺激はやさしく、痛み・熱感は最小限です。極細の鍼と温和なお灸を使用し、安全第一で進めます。

セルフケアと夜のルーティン:心身の興奮を鎮め、眠りきる体力を養う

鍼灸治療の効果を最大化するには、自律神経を強制的に休息モード(副交感神経優位)に切り替える夜のルーティンが不可欠です。

時間設計とデジタル断ち(体内時計の安定)

  • 就寝時刻の固定: 起床・就寝は毎日ほぼ同時刻で体内時計を整え、決まった時間に自然な眠気がくる土台を作ります。
  • ゴールデンタイムの活用: 深夜12時までに就寝。東洋医学でいう肝(かん)が働く時間(午前1時〜午前3時)を休ませ、疲労回復に専念させることが重要です。
  • ブルーライト遮断: 就寝30〜60分前はデジタル断ち(可能なら2〜3時間)。液晶の光は脳を興奮させ、睡眠ホルモンを妨げます。

体内時計を「毎日同じ時間に起きるアラーム」でセットし直しましょう。

心身の興奮を鎮める整え方

  • 入浴で体温調整: 寝る60〜90分前にぬるめの湯(38〜40℃)でゆっくり入浴。一時的に体温を上げ、その後体温が下がるリズムで副交感神経優位に導きます。
  • 光と刺激の調整: 寝室の照明は琥珀〜赤系の電球色に。強い光は脳を覚醒させます。
  • 呼吸とストレッチ: 長めの息を吐く呼吸法(4秒吸って8秒吐く)や全身をやさしくほぐすストレッチで、過緊張を解き、入眠困難を緩和します。
  • 気を補う食事: 寝る前の食べ過ぎは、消化器(脾)に負担をかけ、気の不足(気虚)を招きます。夜食は控え、温かい汁物などで満足感を得ましょう。

【注意】 痛み・かゆみ・咳などで起きる中途覚醒がある場合は、その要因(冷え、アレルギー、内臓の熱など)のケアも鍼灸治療と並行して進める必要があります。

不眠症専門施術の料金と自律神経を安定させる通院ペース

当院の不眠症に対する経絡治療は、脳の興奮を鎮め、心身の消耗(気血)を根本から回復させることに焦点を当てています。自由診療(保険外)となりますが、睡眠薬に頼らない安定と日中のQOL向上という長期的な視点での費用対効果を重視しています。

初回カウンセリング+施術

5,500円
(税込)

詳細な問診と四診法に基づき、不眠のタイプ(入眠困難、中途覚醒など)と心・肝の熱や気の不足といった根本原因を特定し、治療計画を立案します。

2回目以降(通常施術)

5,000円
(税込)

心・肝を中心に調整し、自律神経の過緊張と体温リズムを調律。眠りきる体力(気血)回復を促します。

効果を最大化する通院ペースの目安(自律神経安定と回復の戦略)

  • 導入期(症状が不安定で、薬が効きにくい時期): 週に1~2回の集中治療が必要です。脳の興奮と心身の消耗を早期に鎮め、自律神経の安定に焦点を当てます。
  • 安定化期(睡眠の質が向上してきた時期): 週に1回のペースで、肝・脾・腎の機能を根本から立て直し、薬に頼らない安定を目指します。
  • 維持期(安定した睡眠がとれるようになった時期): 症状が安定したら、2〜3週間に1回、あるいは月に1回のペースで、**再発予防と全身の体力維持を目的としたメンテナンスを行います。

不眠症の治療は枯れた畑に栄養を与えることに似ています。初期に集中して栄養(気血)を与え、土壌(体質)を豊かにすることで、安定した睡眠という「作物の実り」を得られるようになります。まずは集中的に通院し、早期に質の良い睡眠を目指しましょう。

院長プロフィール

東洋中村はり灸院 院長 中村麻人の写真

中村 麻人(なかむら あさと)

札幌「東洋中村はり灸院」院長・鍼灸師。

「森を見て木を治す」東洋医学の視点で、肩こり、腰痛をはじめ、生理痛・顔面神経麻痺・潰瘍性大腸炎・耳管開放症など、原因不明・治療法が限られる慢性疾患を中心にはり治療を行っています。