バセドウ病に伴う高ぶりを和らげ、
お身体の巡りを穏やかに調える
今のあなたの状態は、休まる暇がなく巡りの「勢いが強まりすぎている」状態と考えられます。
東洋医学では、高ぶった神経や熱を鎮めるアプローチにより、過剰な反応を穏やかに抑えていきます。
手の震えや多汗といった、ご自身では制御しづらい負担が軽くなるよう、静かにお身体の調和を支えます。

目次
お身体の調整機能の乱れに対し、巡りや蓄えを整える東洋医学の視点から、負担を和らげていくための方針をまとめています。

甲状腺の不調について:
お身体の巡りと活動を支える機能の乱れ
甲状腺は、のどぼとけの下に位置し、全身の活動を促すホルモンを分泌しています。このホルモンは、お身体が適切にエネルギーを消費し、健やかに活動するための調整を担っています。
例えるなら、甲状腺は「お身体の活動の勢いを決める火加減」のような役割を持っており、その働きが強すぎたり弱すぎたりすることで、全身にさまざまな影響が現れる場合があります。
お身体の機能に乱れが生じると、次のような変化が感じられることが一般的です。
- 活動が緩やかになる場合(機能低下): 冷えやむくみを感じやすくなる、疲れが抜けにくい、気力の低下、眠気が強いなど、全体的に巡りが停滞するような感覚を覚えることがあります。
- 活動が過剰になる場合(機能亢進): 動悸や汗の出やすさ、落ち着かない感覚、体重の変動、イライラなど、お身体が常に休息を求めているにもかかわらず、勢いが止まらないような状態になることがあります。

甲状腺機能低下症(橋本病):
お身体の活動が緩やかになり、
巡りが停滞しやすくなる状態
橋本病は、本来はお身体を守るはずの仕組みが、自身の甲状腺に対して過剰に反応してしまうことで起こる不調の一つです。甲状腺の働きが穏やかになりすぎることで、全身の活動を支える勢いが不足し、様々な変化が現れる場合があります。
見受けられる主な変化:お身体が休息を求めている状態
お身体全体の巡りや熱を作る力が控えめになるため、変化は非常に穏やかに進みます。そのため、日常的な疲れや年齢によるものと感じられることも少なくありません。
- 冷え・むくみ・巡りの停滞: お身体を温める力が不足しやすくなるため、冷えを強く感じたり、水分の巡りが滞ることで顔や手足に重だるいむくみが生じることがあります。
- 重だるさ・気力の減退: 全身に届けるエネルギーが不足し、常に重い疲れを感じたり、何事に対しても意欲が湧きにくいといった心の疲れとして現れる場合があります。
- 皮膚や毛髪の乾燥: お身体の潤いや栄養を届ける力が弱まることで、皮膚がカサつきやすくなったり、髪の質感が変化することもあります。
- その他の違和感: お通じの滞りや声の出しにくさなど、一見すると甲状腺とは無関係に思える箇所に負担がかかる場合もあります。
現在行われている一般的な対応
不足している成分を補い、お身体のバランスを整えることが基本となります。
- 成分の補充: お身体の中で不足しているホルモンを適切な量だけ補うことで、血液中の数値を安定させます。これにより、お身体の基礎的な活動を支えます。
- 日常の習慣への配慮: 特定の栄養素(ヨウ素など)の摂取量に気を配るなど、お身体の負担を増やさないような過ごし方が推奨されることもあります。

甲状腺機能亢進症(バセドウ病):
お身体の活動を促す機能が過剰になり、
休息が難しくなる状態
バセドウ病は、お身体を守る仕組みが甲状腺を過剰に刺激してしまうことで起こります。これにより甲状腺ホルモンが多く分泌され、お身体の巡りが通常よりも速まりすぎることで、消耗を招きやすい状態が続きます。
見受けられる主な変化:お身体の勢いが止まらない状態
全身の活動の勢いが強まるため、じっとしていてもお身体が働き続けているような感覚を覚えることがあります。
- 熱感と過剰な巡り: お身体が常に熱を作り続けているため、暑がりになったり、汗が出やすくなったりします。また、手指が細かく震えるような感覚が出ることもあります。
- 心臓への負担: 心拍が速くなり、動悸や息切れを感じやすくなります。休んでいても心臓が活発に動き続けるため、慢性的な疲れが蓄積する場合もあります。
- 食事と体重: 活動の勢いが強すぎるため、食事を十分に摂っていても、それ以上のエネルギーが消費されて体重が減少することがあります。
- 落ち着かない感覚: 神経の巡りが速まることで、イライラしたり、夜になっても目が冴えて眠りにくくなったりといった変化が見られることがあります。
現在行われている一般的な対応
過剰な勢いを抑え、お身体を落ち着かせるための調整が行われます。
- ホルモン分泌の抑制: お薬によってホルモンが作られる量を抑え、血液中の状態を安定させます。継続的な調整が必要となることが多い方法です。
- 機能の物理的な調整: お身体の状態によっては、ホルモンを作る箇所に直接働きかけたり、一部を整えたりすることで、分泌される量そのものを調整する選択肢もあります。

西洋医学による対応と、
お身体を調える上での視点について
甲状腺の不調に対する現代医学の主な役割は、血液中のホルモン量を適切に調整し、お身体の巡りを安定させることにあります。数値の異常を速やかに整える上で、非常に大切な役割を担っています。
一般的な対応の仕組み
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お薬による働きの調整:
- 働きが控えめな場合:不足している分を適切に補い、お身体の活動を支えます。
- 働きが過剰な場合:過剰な分泌を抑えることで、お身体の消耗を和らげます。
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状態に応じた物理的な調整:
お薬による調整が難しい場合や、お身体の状態によっては、ホルモンを作る箇所そのものの働きを抑える選択がなされることもあります。
調和を保つためのこれからの課題
現代医学による数値の管理は不可欠ですが、お身体の感覚としてはまだ負担が残る場合もあります。
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数値と体感の差異:
血液検査の数値が正常範囲内に収まっていても、冷えやだるさ、落ち着かない感覚などが残ることがあります。これは、お身体全体の巡りのバランスがまだ整い切っていない状態と考えられます。 -
長期的な向き合い方:
不調の原因となる仕組みには個人差があり、長くお薬と付き合っていく必要がある場合もあります。その過程で生じるお身体の重だるさや精神的な負担をどのように和らげていくかが大切です。

甲状腺の不調に対する東洋医学の視点:
お身体全体の巡りを調える働きかけ
東洋医学では、甲状腺の働きの乱れを、単一の臓器の問題としてではなく、お身体全体のバランスや巡りの滞りとして捉えます。本来備わっている調整力を支え、健やかな状態へと導くためのお手伝いをいたします。
お身体の土台を調える視点
甲状腺の働きは、全身のエネルギーを支えるいくつかの機能と深く関わっています。特にお身体の基礎となる以下の働きに注目し、偏りを和らげていくことを目指します。
- 自律神経と巡りの調整(肝): お身体の巡りをスムーズに保つ働きです。ストレスなどでこの巡りが滞ると、余分な熱が生じたり、落ち着かない感覚を覚えたりすることがあります。
- エネルギーを生み出す働き(脾): 日々の食事からお身体を動かす力を取り出す機能です。ここが弱まると、冷えや重だるさ、巡りの停滞を感じやすくなる場合があります。
- 生命力の源(腎): お身体の根源的な力を蓄える働きです。ここを補うことで、内側からお身体を支える力が安定しやすくなると考えられています。
例えるなら、「お身体という土壌そのものを豊かにし、根を安定させる」ような関わり方を大切にしています。
鍼灸による穏やかな調整
鍼灸は、お身体の表面にある要所に穏やかな刺激を与えることで、内側の巡りを調える手法です。
- その時のお身体に合わせた選択: お一人おひとりのお身体の声に耳を傾け、その日の状態に最も適していると考えられる箇所を選び、丁寧に調整を行います。
- 負担の少ない優しい刺激: 体力を消耗されている方でも安心して受けていただけるよう、繊細な鍼や心地よい温かさのお灸を用い、お身体への負担を抑えた施術を心がけています。
- 日常の辛さに寄り添う: 動悸や汗の出やすさ、冷え、重だるさといった日々の不快な体感に対し、それらが少しでも和らぐよう、全身のバランスを整えていきます。
現代医学による治療を土台としながら、鍼灸はお身体の内側から調整力を支え、日々の生活における負担が軽くなるための一助となることを目的としています。


院長プロフィール
中村 麻人(なかむら あさと)
札幌「東洋中村はり灸院」院長・鍼灸師。
「森を見て木を治す」東洋医学の視点で、肩こり、腰痛をはじめ、生理痛・顔面神経麻痺・潰瘍性大腸炎・耳管開放症など病院で原因不明、治療法がない慢性疾患を中心にはり治療を行っています。
