めまい・メニエールへの視点:
水の巡りと「緊張の緩和」による調整
医療機関の検査で原因が特定しづらい場合でも、東洋医学ではお身体のバランスの偏りに着目します。
お身体の各所に滞った「余分な水分」と、平衡感覚の安定を妨げる「内側の緊張」。
この2つの重なりを緩やかに解いていくことで、足元の不安定さや耳周りの不快な負担が軽くなる場合があります。

目次
繰り返す不安定な感覚に悩むめまいに対し、お身体の「巡り」と「蓄え」を調えることで、土台から安定を目指していく東洋医学の考え方を解説します。

めまいの捉え方:
感覚の不一致が生じる背景と、まずは確認すべきこと
めまいは、ご自身の位置や周囲の動きを正確に把握する機能に、一時的な不一致が生じている状態と捉えられます。
その現れ方は、周囲が回るような感覚、お身体が浮くような感覚、あるいは立ち上がった瞬間の揺らぎなど様々です。これらは時として、吐き気や耳の聞こえにくさを伴い、日常生活に不安を抱かせる要因となります。
耳の機能が関わるもの
(東洋医学が寄り添う領域)
多くの場合、平衡感覚を司る耳の奥(内耳など)の不調が関係しています。
- 主な現れ方: 視界がぐるぐると回るような感覚や、姿勢を変えた際の揺らぎが特徴です。
- 背景にあるもの: メニエール病や良性発作性頭位めまい症など、内耳のリンパ液の調整や、小さな粒の移動が関与しているとされています。
- 東洋医学の視点: 耳周りの巡りを滞らせている余分な水分の調整や、お身体全体の緊張を和らげることで、負担が軽くなる場合があります。
慎重な判断が必要なもの
(早期の専門医受診を要するタイプ)
脳の特定の部位に、お身体のバランスを損なう要因が隠れている場合があります。これらは迅速な医学的処置を必要とします。
- 注意すべきサイン: めまいと共に、お身体の片側の動かしにくさ、言葉の出しにくさ、激しい頭痛などが現れる場合があります。
- 対応の重要性: これらは、お身体が発している極めて重要なサインです。このような症状を伴う場合は、迷わず速やかに専門の医療機関を受診してください。
- 臨床家としての助言: 東洋医学の施術を検討される前に、まずは現代医学的な検査によって安全性を確認することが、何よりも大切です。

現代医学的な視点:
多くの要因が重なる中での対応と、東洋医学との協力
めまいの診断において、現代医学は脳や耳の重要な疾患を特定し、安全性を確認するために欠かせない存在です。
一方で、検査上の異常が認められないものの、不調が持続する場合の対応には、多角的な視点が必要となります。
主な対応と今後の展望
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複数の要因による複合的な不調:
めまいは、内耳の繊細な仕組み、自律神経の調整機能、ストレス、あるいは首周りの緊張など、多くの要因が重なり合って現れることが考えられます。 -
お薬による調整:
一般的には、耳の血流や水分代謝を整えるお薬、あるいは過度な興奮を和らげるためのお薬が用いられます。これらは、お身体の「揺らぎ」を一時的に静め、日常生活を送るための支えとして役立ちます。 -
繰り返す不調への取り組み:
急性期の症状が和らいだ後も、疲れやすさや緊張しやすいといったお身体の傾向が残っている場合、再び不安定な状態になることがあります。こうした「背景にある体質」を調えることが、持続的な安定に繋がると考えられます。

東洋医学の原因:
めまいのタイプをお身体の
「緊張」と「消耗」から分類
東洋医学では、お身体を支える土台となる力と、全身へ行き渡る巡りの調和が崩れた時に、揺らぎが生じやすくなると考えます。
大きく分けて「エネルギーの不足によるもの」と「内側の昂ぶりによるもの」の二つの傾向が見受けられます。
浮遊感・ふわふわとした揺らぎ
(エネルギーの蓄えが低下している状態)
お身体を安定させ、頭部までしっかりと栄養を届ける力が弱まっている時に生じやすい傾向です。
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現れやすいお身体のサイン:
疲れやすさ、足腰の重だるさ、冷え、あるいは年齢を重ねることに伴う体力の消耗などが重なる場合があります。 -
お身体の状態:
根を張る力が弱くなった樹木が、穏やかな風でも揺れ動いてしまうような、お身体の「支える力」の不足が考えられます。
回転性・ぐるぐると回る揺らぎ
(内側の緊張が昂ぶっている状態)
ストレスや過度な緊張により、本来は穏やかに巡るべきエネルギーが頭部に突き上げられるように集中した時に生じやすい傾向です。
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現れやすいお身体のサイン:
強い緊張、イライラ、目の疲れ、肩首の激しい凝り、あるいは自律神経の乱れに伴う不調などが併発する場合があります。 -
お身体の状態:
内側に溜まった熱や緊張の出口が塞がり、頭部へと一気に吹き出しているような、お身体の「巡りの偏り」が考えられます。
これらは、実際にはどちらか一方だけではなく、両方が複雑に混ざり合っていることも少なくありません。お身体全体の「蓄え」を補いつつ、滞った「巡り」を穏やかに解いていくことで、少しずつ安定した状態へ近づくお手伝いをいたします。

鍼灸による調整:
平衡感覚の安定を支える、巡りと水分バランスの調律
鍼灸の施術は、めまいの背景にあるお身体の緊張や、水分の偏りに働きかけます。
お薬による対応と並行しながら、お身体が本来持っているバランスを保つ力を、内側から穏やかに支えていくことがねらいです。
お身体に働きかける視点
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多角的な調整:
めまいの要因となっている可能性のある体質、生活環境による緊張、心身の疲れを包括的に捉え、偏りを調えていきます。 -
お身体の回復力を促す:
全身の巡りを促すことで、内耳周辺の滞りや神経の過敏な状態が、ご自身の本来の力で静まっていくのを後押しします。 -
お身体の状態に合わせた選択:
「エネルギーの不足(消耗)」と「内側の昂ぶり(緊張)」のどちらの傾向が強いかを見極め、その時々のお身体に適した調整を行います。 -
負担の少ないケア:
刺激の加減を慎重に選び、施術自体がお身体の新たな負担とならないよう、心地よい状態を維持しながら進めます。
外部の揺れに対しても、お身体の中心が保たれるよう、土台となる体質を整えることが、施術の大きな目的です。
施術の内容と進め方
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きめ細かな観察:
お身体の冷え、脈の響き、お腹の硬さなど、現代医学の検査には現れにくい小さな変化を丁寧に観察し、施術の方針を立てます。 -
背景へのアプローチ:
今出ている揺らぎを静めるだけでなく、その背景にある「お身体の蓄えの不足」や「巡りの滞り」を是正し、再発しにくい状態を目指します。 -
臓腑の調和をはかる:
お身体を支える特定の機能(腎や肝など)を中心に、全身が調和して動くよう、必要な箇所を選んで調整します。 -
穏やかな刺激:
急性期のデリケートな時期は特に、強い刺激を避け、細い鍼や温かなお灸を用いて、優しくお身体に語りかけるように施術します。

自宅でできる過ごし方:
お身体の安定を支える、日々の静かな習慣
お身体の調和を保つためには、日常生活の中で緊張を緩め、巡りを健やかに保つ工夫が大切です。無理に何かを「頑張る」のではなく、お身体が休まりやすい環境を整えることから始めてみてください。
お身体を整える3つのヒント
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緊張を解き、血流を穏やかに促す
首や肩周りの強張りを和らげることで、頭部への巡りがスムーズになる場合があります。- 穏やかなストレッチ: 呼吸を止めず、ゆっくりと肩を回したり、首を前後左右に傾けたりします。強い痛みを感じるほど行う必要はありません。
- 専門的なリハビリ: 医療機関で指導された平衡訓練(リハビリテーション)は、脳が揺らぎに適応していく過程を助ける場合があります。
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お身体の質を養うための食事
東洋医学では、余分な水分を溜め込まず、蓄えを補う食生活が安定に繋がると考えます。- 巡りを助ける工夫: お身体を内側から温める根菜類や、不足したエネルギーを補うとされる黒い食材(黒ごまや海藻など)を意識してみるのも一つの方法です。
- 控えたい習慣: 水分の巡りを妨げやすい冷たい飲み物や、甘いものの過剰な摂取、味付けの濃いお食事は、少しずつ調整してみてください。
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休息とリズムの確保
蓄えられたエネルギーの消耗を防ぐには、何よりも休息が重要です。- 睡眠の質: 早めの就寝を心がけることは、お身体の土台を休ませるために最も適した方法と考えられます。
- 安心できる環境: めまいの不安が強い時は、暗く静かな場所でお身体を休め、視覚や聴覚からの過度な刺激を減らすことも負担を軽くします。
これらの習慣は、あくまでお身体の調和を助けるためのものです。もし、揺らぎの状態に変化が見られない場合や、新たな不安が生じた際は、ご自身だけで判断せず、早めに医療機関や専門家へご相談ください。

施術の費用と、お身体の安定を目指す通院の組み立て
当院では、お身体の巡りと水分バランスを調律し、緊張を解くことを目的とした鍼灸施術を行っております。
お薬による対応と並行しながら、長期的な視点でお身体の土台を静かに整えてまいります。
現在のお困りごとやお身体の状態を詳しく伺い、お一人おひとりの傾向(蓄えの不足や巡りの滞りなど)を確かめた上で、今後の計画を組み立てます。
その時々のお身体の揺らぎに合わせ、中心のバランスを保つ力を養い、負担の少ない状態が続くよう継続して調整を行います。
通院頻度の目安とお身体の段階
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揺らぎが強い時期:
お身体が不安定な状態にあるため、まずは間隔を詰めて調整を行い、過度な緊張が穏やかに静まっていくのを後押しします。 -
落ち着きが見え始めた時期:
週に1回程度のペースで、お身体の蓄えを補いながら、良い状態が少しずつ定着していくよう整えていきます。 -
安定を維持する時期:
状態が安定してきた後は、2週間から1ヶ月に1回程度、お身体のメンテナンスとして調整を続けることで、健やかなリズムを保つお手伝いをいたします。
お身体の調整は、船の重心を整えることに似ています。まずは重心を中央に安定させ、次に多少の波が来ても大きく傾かないような、しなやかな土台をゆっくりと作っていくことが大切です。
無理のない範囲で、お身体の声に耳を傾けながら、一緒に進めてまいりましょう。

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院長プロフィール
中村 麻人(なかむら あさと)
札幌「東洋中村はり灸院」院長。
「森を見て木を治す」東洋医学の視点で、肩こり、腰痛をはじめ、生理痛・顔面神経麻痺・潰瘍性大腸炎・耳管開放症など、原因不明・治療法がない慢性疾患を中心にはり治療を行っています。
