不眠や中途覚醒を
心身の緊張緩和と巡りの調整で整える
眠りにくさを感じる背景には、お身体の熱の偏りや、栄養を蓄える「血(けつ)」の不足が関わっている場合があります。
鍼灸による調整は、高ぶった神経を穏やかに鎮め、休息に適したお身体の状態へと導く一助となる場合があります。
本来備わっている自然なリズムを、静かに取り戻していくための環境を整えます。

本ページの内容(目次):不眠による心身の揺らぎと東洋医学的なアプローチ
休息を必要としているお身体に対し、巡りの滞りやエネルギーの消耗を整えることで、自然な眠りのリズムが訪れやすくなるよう導く東洋医学の考え方を解説します。

不眠の定義とお身体の状態:休息と活動のバランスの揺らぎ
不眠の状態とは、入眠の難しさや途中で目が覚めるといったことが続き、その結果として日中の倦怠感、集中力の低下、意欲の減退など、日常生活に何らかの負担が生じている状況を指します。
医学的には、こうした眠りにくさが週に数回あり、それが一定期間続いている場合、お身体が十分な休息を必要としているサインとして捉えられます。
不眠による影響とお身体の反応
睡眠中、お身体は組織の修復や情報の整理を行っています。この休息が十分に確保できない状況が続くと、自律神経のバランスや、日中のコンディションに影響を及ぼす場合があります。
例えるなら、「お身体の電源が完全にはオフにならず、アイドリング状態のまま朝を迎えている」ような状況です。こうした状態が続くことで、結果として日中の活動に必要なエネルギーが不足しやすくなることがあります。
【臨床家の視点】
不眠は単なる時間の問題ではなく、休息と活動の切り替えがスムーズに行えていない「巡りの課題」として捉えることができます。東洋医学では、翌日の心地よさまでを含めて、お身体の状態を見守ります。

不眠の現れ方:東洋医学的な視点による休息の質の分類
眠りの乱れはその現れ方によって、お身体のどの機能に負担がかかっているかを推測する手がかりとなります。東洋医学では、精神的な落ち着きに関わる「心(しん)」や、自律神経を司る「肝(かん)」の状態に注目します。
1. 入眠の難しさ(寝付きにくい)
布団に入ってから眠りにつくまで、30分以上の時間を要する場合を指します。
- お身体の状況: 巡りが滞ったり、昂ぶりが鎮まらなかったりすることで、休息のスイッチが入りにくい状態です。
- 東洋医学の視点: 「思考が止まらない」といった精神的な興奮や、緊張の蓄積が関わっている場合があると考えます。
2. 眠りの浅さ(熟眠感の不足)
睡眠時間は確保できていても、朝起きた時に「しっかり休めた」という実感を得にくい状態です。
- お身体の状況: お身体を深く鎮めるために必要な「潤い」や「滋養」が不足しているサインとして捉えます。
- 東洋医学の視点: 「消えかけた火がくすぶり続けている」ように、深部での昂ぶりが静まりきっていない状態を想定します。
3. 中途覚醒(夜中に目が覚める)
夜中に何度も目が覚め、その後の再入眠がスムーズにいかない状態を指します。
- お身体の状況: お身体を一定の状態に保つ維持力が揺らいでいたり、冷えや水分代謝の偏りが関わっていたりすることがあります。
- 東洋医学の視点: 自律神経を司る機能や、生命力を蓄える機能の低下に注目し、安定を促す調整を行います。
4. 早期覚醒(朝早く目覚める)
予定よりもかなり早く目が覚めてしまい、その後眠ることができない状態です。
- お身体の状況: 体力の消耗が目立っていたり、加齢に伴う変化や、気分の沈み込みと関連して現れる場合があります。
- 東洋医学の視点: お身体を穏やかに沈めておくエネルギーの不足に対し、土台を補強するような働きかけを検討します。

主な要因:お身体の昂ぶりと蓄えの不足について
環境的な要因:神経の昂ぶりが続く状態
現代の生活環境では、本来休むべき夜間になっても、お身体が休息モードに切り替わりにくくなっている場合があります。
- 光の刺激と体内リズム: 夜間の強い光は、お身体が夜を感じるための働きを妨げることがあります。就寝直前までの明るい画面視聴などは、リズムを乱す一因となり得ます。
- 緊張状態の継続: 就寝前の情報の取り込みや考え事は、自律神経の緊張を維持させてしまいます。お身体が「まだ活動中である」と認識し、入眠の準備が遅れる場合があります。
- 例え: 「走り終えた後のエンジンの熱」がなかなか冷めず、静かに停止できないような状況です。
東洋医学の視点:休息を支える蓄えの状況
不眠は単なる昂ぶりだけでなく、深く眠り続けるためのお身体の「余力」が不足しているときにも現れることがあります。
- エネルギーと滋養の不足: 東洋医学では、眠りにも一定のエネルギー(気・血)が必要だと考えます。過度な疲労や、胃腸の働きの低下などにより、お身体を安定させるための栄養が不足すると、眠りが浅くなる場合があります。
- 消耗の背景: 日々の頑張りすぎや、不規則な食生活、呼吸器の不調などは、知らず知らずのうちにお身体の蓄えを減らしてしまいます。これらがお身体の安定感を欠く要因となることがあります。
鍼灸による調整は、高ぶった昂ぶりを穏やかに鎮めるとともに、不足している蓄えを整え、お身体が自ら休もうとする力を支える一助となります。

東洋医学の役割:巡りを整え、深く休める環境を育む
東洋医学では、不眠をお身体の「静」と「動」のバランスが揺らいでいる状態と捉えます。昂ぶりを鎮める力と、休息を支える蓄えのどちらにアプローチが必要かを見極め、本来の穏やかなリズムが訪れやすくなるよう整えます。
お身体の状態を見通す四つの観察法
不眠の現れ方(寝付きや目覚めのパターン)に加え、全身の細かなサインから背景にある要因を探ります。
- 視覚による観察: 顔色や舌の状態から、熱の偏りや栄養(血)の過不足を把握します。
- 聴覚による把握: 声の調子や呼吸の深さから、お身体の余力の有無を確認します。
- 対話による聞き取り: 睡眠だけでなく、お食事や胃腸の状態、気分の揺らぎなど、日々の変化を伺います。
- 触覚による確認: 脈の打ち方やお腹の弾力に触れ、お身体を安定させる機能の状況を判断します。
例えるなら、「土壌(体質)を豊かにすることで、そこから育つ草木(症状)の状態が穏やかになる」ように、お身体の根底から整えることを目指します。
鍼灸調整が担う具体的な働き
- 休息を支える力の補強: 消耗したエネルギーを整え、胃腸や呼吸に関わる機能を調和させることで、深く眠り続けるための基礎体力を補います。
- 高ぶった緊張の緩和: 鍼灸の穏やかな刺激により、過敏になった反応を鎮め、手足の温もりを促すなど、お身体が自然と休息に向かえるよう後押しします。
- 併発する負担の軽減: 肩こり、冷え、動悸など、不眠に付随して現れるお身体の強張りを和らげることで、心身ともに休まりやすい状態を導きます。
刺激は非常にやさしく、髪の毛ほどの細い鍼や心地よい温熱のお灸を使用します。安全性を第一に考え、無理のない範囲で進めてまいります。

日常の養生と夜の過ごし方:お身体を穏やかに鎮めるために
お身体には一定のリズムがあります。夜間に向けて少しずつ活動を緩めていくことで、休息を司る機能が働きやすくなる場合があります。
生活のリズムと光の調整
- 起床と就寝の目安: 毎日ほぼ同じ時刻に休むことで、お身体の体内時計が安定しやすくなります。
- 東洋医学の休息時間: 東洋医学では、深夜の早い時間帯にお身体を休めることで、巡りや血の蓄えを整えやすくなると考えられています。
- 光との付き合い方: 就寝前の強い光は、お身体を覚醒させる一因となる場合があります。お休みになる30分〜1時間前からは、照明を落としたり画面を見るのを控えたりすることが、穏やかな入眠を後押しします。
- 例え: 「夕暮れと共に徐々に静まっていく自然」のように、室内の環境を整えてみてください。
心身の昂ぶりを和らげる工夫
- ぬるめのお湯での入浴: 就寝の1時間ほど前に、38〜40度程度のぬるめのお湯にゆっくり浸かることで、強張った筋肉や神経の緊張が解けやすくなります。
- 静かな呼吸の習慣: 深く長い呼吸、特にゆっくりと息を吐き出すことは、高ぶった神経を鎮める一助となります。
- 食事と休息の関係: 就寝直前の食事は、消化器の負担となり、眠りを妨げる要因となることがあります。夕食はなるべく早めに済ませ、お腹を落ち着かせた状態で休むことが推奨されます。
【留意点】 不眠の背景に冷えや痛み、気分の落ち込みなどが関わっている場合は、それらの不調に対しても鍼灸施術や日常の養生を組み合わせて、お身体全体の負担を軽くしていくことが大切です。

専門施術の費用と継続的な調整の目安
当院の施術は自由診療(保険外)となります。お身体の昂ぶりを穏やかに鎮め、不足している蓄えを整えることで、長期的な視点から健やかな休息を支えることを目的としています。
初回カウンセリング + 施術
お身体の状態を多角的に観察し、不眠の現れ方や背景にある要因を伺います。その上で、現在のお身体に適した調整方針を検討します。
2回目以降(通常施術)
継続的な働きかけにより、自律神経の反応や巡りの偏りを整え、お身体が本来持っている休息のリズムを維持しやすくする調整を行います。
お身体を整えていくための頻度の目安
- 初期段階: お身体の昂ぶりが強く、休まりにくい状態のときは、週に1〜2回程度の頻度で調整を行うことで、変化の兆しを捉えやすくなる場合があります。
- 安定段階: 心身の強張りが和らぎ、休息の質に変化が見え始めたら、週に1回程度の頻度でお身体の土台を固めていくことを検討します。
- 維持段階: 穏やかな状態が定着してきた後は、2〜4週間に1回程度の定期的な調整を行うことで、季節の変わり目などの負担を軽くし、安定した状態を保つ一助となります。
例えるなら、「ひび割れた土壌に少しずつ水を馴染ませていく」ように、お身体の蓄えをゆっくりと満たしていく過程を大切にします。焦らず、お身体の準備が整うのを待つような気持ちで進めてまいりましょう。

院長プロフィール
中村 麻人(なかむら あさと)
札幌「東洋中村はり灸院」院長・鍼灸師。
「森を見て木を治す」東洋医学の視点で、肩こり、腰痛をはじめ、生理痛・顔面神経麻痺・潰瘍性大腸炎・耳管開放症など、原因不明・治療法が限られる慢性疾患を中心にはり治療を行っています。
