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東洋医学から見た「急性腰痛」の捉え方

繰り返す「ぎっくり腰」の状態に対し、
深部の巡りから土台を整える

突然の強い痛みは、日々の疲労や冷えの蓄積により、お身体の許容量を超えてしまったサインかもしれません。
鍼灸による調整は、深層の滞りに働きかけ、腰を支える「身体の土台」の回復を後押しします。
一時的な対応だけでなく、再び負担がかかりにくい状態を目指し、お一人おひとりの反応に合わせて誠実に進めてまいります。

ぎっくり腰(急性腰痛)の概要:
負担の積み重ねによる、突発的な反応

ぎっくり腰は、西洋医学的には急性腰痛と呼ばれ、急激に現れる強い痛みによって動作が制限される状態を指します。

この痛みは、特定の大きな負荷だけでなく、日常の些細な動作がきっかけとなる場合が多くあります。
例えるなら、「容器に一滴ずつ溜まった水が、最後の一滴で縁から溢れ出す」ように、それまで積み重なってきた筋肉や関節の負担が、限界を超えた瞬間に現れる反応といえます。

きっかけとなりやすい動作の例

  • 無意識の動作:
    洗面所で前かがみになる、あるいは床にある物を拾おうと手を伸ばした際など。
  • 急な腹圧や捻り:
    立ち上がる時や、くしゃみをした拍子など、日常の何気ない動きが引き金となる場合があります。

こうした反応は、身体の巡りが滞り、柔軟性が低下している時に起こりやすくなります。東洋医学の視点からお身体全体のバランスを整えることは、こうした負担を和らげる一助となる場合があります。

西洋医学と東洋医学の見方:
急性期の「対応」と、巡りによる「調整」

ぎっくり腰の際、西洋医学と東洋医学はそれぞれ異なる側面から身体に働きかけます。強い痛みの時期には西洋医学的な対応が重要であり、その後の再発しにくい体づくりにおいては、東洋医学的な視点が役立つ場合があります。

西洋医学的なアプローチ
(局所と原因の特定)

主に炎症の鎮静と、構造的な異常の有無を確認することに注力します。

  • 診断の役割:
    画像検査等を用い、骨折や神経圧迫、あるいは他の重大な疾患が隠れていないかを見極めます。
  • 処置の目的:
    鎮痛薬や湿布などにより、今起きている強い炎症や痛みを和らげることを優先します。
  • 役割の例え:
    「火災現場における消火活動」のように、激しい反応を速やかに抑えることで、お身体の消耗を防ぐ一助となります。

東洋医学的なアプローチ
(全体の巡りと土台)

「なぜこのタイミングで痛みが出たのか」という、お身体全体の巡りに着目します。

  • 巡りの調整:
    冷えや疲労で滞った気血の流れを整え、筋肉や関節に栄養が行き渡りやすい状態を目指します。
  • 土台の補強:
    腰を支える力を高めるため、内臓機能(特に東洋医学でいう「腎」など)の働きを整えます。
  • 目指す状態:
    痛みの緩和だけでなく、再び負荷がかかった際にも耐えうる、しなやかなお身体の状態を整えていきます。

痛みの捉え方:
「巡りの滞り」とお身体の状態

東洋医学には、「不通則痛(ふつうそくつう)」という言葉があります。これは、お身体の中の巡りが滞り、健やかな流れが妨げられた時に痛みが生じる、という考え方です。

ここでいう巡りとは、全身に栄養を運び、不要なものを回収する気血の働きを指します。
冷えや蓄積した疲労、気圧の変化などによってこの働きが低下すると、腰周辺の筋肉や組織に十分な充足が得られなくなり、些細なきっかけで激しい反応(痛み)が起こりやすくなる場合があります。

【臨床的な視点】

ぎっくり腰の際、痛みが出ているのは「腰」ですが、その背景には全身の巡りの低下や、回復力の不足が隠れていることが少なくありません。

「流れの滞った川底に砂利が溜まる」ように、巡りが悪くなった場所に負担が蓄積し、限界を迎えた状態ともいえます。

鍼灸の役割は、この滞りを解き、再び本来の巡りへと促すことです。お身体全体のバランスを整えていくことで、局所の負担が軽くなる道筋を探していきます。

お身体の扱い方:
巡りを助ける「養生」と
注意したい生活習慣

ぎっくり腰からの回復過程では、局所の炎症を抑える時期を経て、徐々にお身体全体の巡りを整えるケアに移行することが大切です。冷えによる滞りを和らげ、お身体が本来持つ回復力を発揮しやすい環境を整えていきましょう。

回復を助ける「温める」習慣

激しい痛みのピークを過ぎ、熱感が引いてきたら、お身体を優しく温めることが負担の軽減につながる場合があります。

  • 適度な入浴:
    心地よいと感じる温度の湯船に浸かることで、腰周辺の緊張が緩和され、全身の巡りが促されます。
  • 腹部・腰の保温:
    腰だけでなくお腹側も温めることで、東洋医学でいう「土台の力」を補い、血流の安定を助けます。
  • 就寝時の工夫:
    夜間に体温が下がると痛みを感じやすくなることがあるため、腹巻や適切な寝具で冷えから守りましょう。
  • 臨床的な比喩:
    「冷えて固まった土を、暖かな日差しで徐々に解きほぐす」ように、ゆっくりと巡りを戻していくイメージです。

負担となりやすい「避けたい行為」

  • 過度な冷却の継続:
    慢性の時期に入ってからも冷やし続けると、血管が収縮し、回復に必要な巡りを妨げてしまう可能性があります。
  • 無理な刺激やストレッチ:
    痛みのある部位を強く揉みほぐしたり、無理に伸ばしたりする行為は、組織の緊張をさらに高めてしまう場合があります。
  • 長時間の同一姿勢:
    デスクワークなどで同じ姿勢を長時間続けると、筋肉の防御反応が起こりやすいため、こまめにお身体を楽な範囲で動かしてください。
  • 過度な安静の長期化:
    痛みが落ち着いた後も全く動かさないでいると、筋力の低下や巡りの停滞を招くことがあるため、専門家と相談しながら徐々に動作を増やしていくことが推奨されます。

鍼灸による調整:
滞りを解き、お身体が本来持つ
回復力を後押しする

施術の組み立て
(局所への配慮と全体の調整)

  • 巡りの再開を促す:
    滞った気血の流れを整えるため、お身体にあるツボを刺激し、腰周辺の緊張が和らぎやすい環境を整えます。
  • 土台の力を補う:
    目先の痛みへの対応だけでなく、腰を支える「腎(じん)」などの働きを整えることで、再発しにくい状態を目指します。
  • 遠隔部位からのアプローチ:
    腰に触れるのが難しい急性期でも、手足や背中のツボを用いることで、お身体への負担を抑えながら全身のバランスを調整することが可能です。
  • 「流れの止まった水路を、離れた場所にある水門を整えて通水する」ような、穏やかな調整を行います。

※ 施術で用いるツボの例:手の孔最(こうさい)、足の陽陵泉(ようりょうせん)など、当日の状態に合わせて選定いたします。

体感と経過への配慮

  • 刺激の質:
    急性期の強い緊張に配慮し、極細の鍼や穏やかな熱感の温灸など、お身体が受け入れやすいやさしい刺激を心がけています。
  • 施術後の変化:
    巡りが促される過程で、一時的にだるさや眠気を感じる場合がありますが、これはお身体が休息を必要としているサインであることが多いです。
  • 随伴症状の考慮:
    腰の痛みだけでなく、足の冷えや内臓の重だるさなど、巡りの低下に伴う他のお悩みも考慮しながら、包括的に整えてまいります。

当院の考え方:
お身体の状態を見守り、
巡りを整えるための方針

巡りを整える経絡治療

  • 全体的な調整:
    腰の局所的な不調だけでなく、お身体全体の気血の巡りを底上げし、内臓機能の調和から整えることを重視しています。
  • 背景の考慮:
    痛みを一時的な出来事としてではなく、日々の冷えや疲労の蓄積といったお身体全体の流れの中で捉えるよう努めています。
  • 臨床的な例え:
    「弱った木の枝葉(腰)だけでなく、根(体質)に水を注ぐ」ように、お身体の土台を支える働きを助けます。

伝統的な診察法(四診)

  • 状態の把握:
    脈やお腹の張り、お声の調子などを丁寧に確認し、その時々のお身体の虚実(勢いと不足)を詳細に伺います。
  • 状況への適応:
    伺った状態に基づき、生活習慣の背景なども考慮しながら、無理のない範囲でお身体の負担を軽減する道筋を検討します。

刺激を抑えた安全設計

  • 穏やかな手法:
    急性期の敏感なお身体に配慮し、髪の毛ほどの細い鍼や、心地よい温かさを感じるお灸など、刺激を抑えた施術を心がけています。
  • 安心感の追求:
    はじめての方や、痛みに不安を感じている方でも、落ち着いてお身体を預けられるような環境と衛生管理を徹底しています。

費用とお身体の経過:
回復の段階に合わせた通院の考え方

当院の施術は自由診療(保険外)となります。痛みの緩和を目指すだけでなく、お身体全体の巡りを整えることで、その後の負担を軽くするための時間を共有してまいります。

初回(問診・診察+施術)
5,500円
(税込)

今のお身体の状態を詳しく伺い、東洋医学的な観点から滞りの原因を検討します。その上で、今の状況に適した施術の道筋をご案内いたします。

2回目以降(施術)
5,000円
(税込)

初回の経過を踏まえ、お身体の巡りをさらに安定させていくための調整を行います。

通院頻度の目安(お身体が整うまでの流れ)

  • 初期の段階(痛みの反応が強い時期):
    お身体の状態によりますが、週に数回程度の間隔で調整を重ねることで、巡りの滞りが和らぎやすくなる場合があります。
  • 安定の段階(少しずつ動ける時期):
    週に1回程度のペースで、お身体の土台を整える施術を継続し、日常生活での負担を軽減できるよう見守ります。
  • 維持の段階(健やかな状態を保つ):
    症状が落ち着いた後は、2〜3週間に1回程度のメンテナンスとして、全身のバランスを整えることが推奨されます。

「火が消えかかった炭火を、ゆっくりと扇いで安定させる」ように、お身体の回復力を丁寧に育てていく過程を大切にしています。

通院の頻度や期間については、患者様のご都合とお身体の状況を照らし合わせながら、無理のない範囲でご提案させていただきます。

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院長プロフィール

院長 中村麻人
院長・鍼灸師

中村 麻人(なかむら あさと)

札幌「東洋中村はり灸院」院長。

「森を見て木を治す」東洋医学の視点で、肩こり、腰痛をはじめ、生理痛・顔面神経麻痺・潰瘍性大腸炎・耳管開放症など、原因不明・治療法が限られる慢性疾患を中心にはり治療を行っています。