風邪の主な原因と症状の出方（東洋医学の関連）

• 原因の多くはウイルス： 風邪の原因の80～90%はライノウイルスやコロナウイルスなどのウイルスです。
• 引き金となる要因： 乾燥、疲労、寝不足、偏食、汗冷え、季節の変わり目など、体の防御力（東洋医学の衛気）が低下した時にウイルスが侵入しやすくなります。
• 症状のタイプ： 症状は体の弱いところに出やすく、鼻型（水っぽい鼻水）、のど型（強い痛み）、熱・関節型など、人それぞれ体質によって異なります。
• 代表症状： 鼻水・鼻づまり、のどの痛み・イガイガ、咳たん、発熱、頭痛、関節痛、倦怠感、食欲低下など。

薬の役割と身体の防衛反応

• 薬の役割は症状緩和： いわゆる「風邪薬」は、症状を一時的に和らげるためのものであり、風邪の原因であるウイルスそのものを除去する薬ではありません。 例えるなら、戦争で「敵（ウイルス）を倒す」のは免疫の役割で、薬は「味方（自分）の痛みを抑える」役割です。
• 抗菌薬はウイルスに無効： 抗菌薬（抗生物質）は細菌に用いる薬であり、ウイルス性の風邪には通常適応外です。安易な使用は、体に備わる善玉菌や免疫に悪影響を与える可能性があります。
• 防衛反応を抑えすぎない： 鼻水・咳・発熱などは、ウイルスを体外に排出し、免疫の働きを強めるための身体の防衛反応です。これらの反応を抑えすぎると、かえって回復が遅れるという見方もあります。

【重要な注意点】 高熱（38℃以上）・強い息苦しさ・水分がとれない・症状が長引く（1週間以上）等は、肺炎や他の重篤な合併症の可能性があるため、速やかに医療機関での評価をご検討ください。

施術の流れ（東洋医学的な病態把握）

鍼灸治療は、症状を抑え込むのではなく、患者様の「正気（治る力）」を底上げし、邪気（ウイルス）を外へ出しやすい状態を作ります。

1. 四診（望・聞・問・切）で体の今を把握： 風邪の進行度（初期・中期・末期）と、患者様の体質（虚証・実証）を正確に把握し、治療方針を決定します。
2. 内臓の機能を高める経穴で土台を強化： 脾（エネルギー供給）、腎（体力・回復力）、肺（バリア機能）といった内臓機能を高める経穴（ツボ）で、正気の土台を強化します。
3. 発散を助ける経穴でウイルスを外へ： 風門（ふうもん）などの経穴を使い、汗や鼻水といった体の防衛反応を助けることで、ウイルス（外邪）をスムーズに体外へ「発散」させやすくします。

治療のねらいは、免疫という「兵隊」に、武器（エネルギー）を与え、戦いやすい環境を整えることです。

鍼灸治療で期待できること（副作用の少ない回復）

• 回復のスピード感： 免疫が働きやすい状態へ整うことで、症状の進行が止まり、回復のスピード感が出やすい傾向があります。
• 症状のタイプ別調整： 鼻型（鼻水・鼻づまり）には水分代謝を、のど型には炎症を鎮静させるツボを、咳型には肺と大腸の連携を調整するなど、各型に合わせて反応性を調整します。
• 安全な刺激設計： 副作用の心配が少なく、極細鍼や温灸を使用するため、年齢や体力を問わず受けていただきやすい刺激設計です。
• 体質改善への布石： 風邪をきっかけに体質的な弱さ（虚）が露呈するため、風邪治療を通じて風邪をひきにくい体質への改善の布石を打ちます。

1) 少食を心がけ、消化器を休ませる

東洋医学では、「脾（消化器）」が働くために多くのエネルギーを使っていると考えます。風邪をひいている時は、消化に回るエネルギーを最小限に減らし、その分のエネルギーを免疫の戦い（回復）に集中させる設計が重要です。

• 具体的な食事： おかゆ、具少なめの味噌汁、うどんなど、軽い食事に留めます。
• 避けるべきもの： 揚げ物、肉類、甘いもの、冷たい飲み物など、消化に負担がかかるものは極力避けてください。
• 体の「免疫部隊」がウイルスと戦っている間、「兵站部隊（消化器）」は最小限の業務に留めましょう。

2) 入浴や温活で「発散」を助ける

風邪の初期には、ウイルス（邪気）を汗とともに外へ追い出すという東洋医学的な考え方があります。

• 入浴・発汗： 症状の悪化が激しくない初期であれば、ぬるめ（40〜42℃）〜やや温かめの湯にゆっくり浸かり、適度な発汗を促します。発汗で体を切り替えやすくします。
• 脱水と体力温存： 湯あたりや脱水に注意しながら、心地よい範囲で。長風呂や熱すぎるお湯は体力を消耗させるため避けましょう。
• 保温と休息： 汗冷えを防ぐため、入浴後はすぐに温かい服装をし、横になって体を冷やさないよう努めましょう。