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多汗症の特徴と分類:「気の漏れ」と「自律神経の異常な亢進」

多汗症は、体温調節に必要な量を超えた大量の汗が理由なく出て、日常生活に支障が出る状態です。東洋医学では、汗は「心(しん)」(精神・循環)と「腎(じん)」(水液代謝・生命力)の乱れ、そして体表の「気のバリア(衛気)」の機能不全による「気の漏れ」として捉えます。まるで、熱い鍋の蓋が壊れて、蒸気が止まらずに吹き出しているようなものです。

多汗症の分類と東洋医学的な視点

  • 理由なく大量の汗:自律神経の異常な亢進、または体表の気のバリアの機能不全が原因です。緊張や不安が引き金となることが多いです。
  • 全身性:背中・お腹・脚など全身から汗が出るタイプ。体全体の「気虚(気の不足)」や、内臓の熱(胃熱、湿熱など)が原因となることが多いです。
  • 局所性:手のひら、足の裏、わきなどの限定部位から汗が出るタイプ。特に手のひらの多汗は、「心(しん:精神)の熱」や強いストレス(肝の気の滞り)による自律神経の緊張が強く関与します。
  • 更年期のほてり・のぼせに伴う発汗:これは「腎の陰(うるおい)不足」による虚熱(きょねつ)が原因であり、体質改善の方針を区別して考える必要があります。

症状の重さ(セルフチェック):日常生活における「気の漏れ」の影響度

多汗症は、体表の「気のバリア(衛気)」の緩みや気の消耗が、生活の質(QOL)をどれだけ下げているかで重さが判断されます。これは、治療の緊急度を見極める一つの目安となります。

レベル 症状の度合い(気の漏れによる影響)
1 ほとんど気にならない、日常の行動に邪魔にならない(軽度)
2 我慢できる範囲だが、ときどき汗が邪魔になる(中度)
3 どうにか耐えられるが、しばしば汗が気になり、仕事や対人関係の邪魔になる(重症)
4 耐えがたいほど常に汗が止まらず、日常生活や対人交流に常に邪魔になる(重症)

レベル3や4の場合、精神的なストレス(心・肝の疲弊)が多大なため、鍼灸による自律神経の調整と気の引き締めを早期に行うことが推奨されます。

原因:西洋医学と東洋医学の比較

西洋医学の見立て

  • 自律神経の乱れ、甲状腺機能、ストレスなどが示唆
  • 明確な原因特定が難しいケースも多い
  • 主な対応は薬・注射などの対症療法

東洋医学の考え

  • 本質は体表の弱り=陽虚
  • 体表が締まらず、体内の水(汗)が必要以上に外へ漏れる
  • 体質を整えて、汗の出方を“本来の幅”に戻す

東洋医学(鍼灸)による改善法:「気の漏れ」を防ぎ、自律神経を安定させる

多汗症は、体表の「気のバリア(衛気)」が緩み、熱や水が漏れ出している状態です。鍼灸治療では、この緩んだバリアを内側から引き締め(固渋作用)、発汗を促す自律神経の異常な亢進を鎮静化させます。

流れと見立て:体質の根本原因の特定

  • まず四診法で体質と汗の出方を確認:手のひらの汗は「心の熱」、全身の汗は「気虚」など、汗の出る時間帯や部位によって原因が異なります。脈や舌から、発汗の根本原因を詳細に特定します。
  • 経絡治療でバリアを整える:鍼灸で体表の**気の締まり(衛気)と自律神経(心・肝)のバランスを整えます。これは、壊れた鍋の蓋を修理するように、発汗の閾値を正常に戻すアプローチです。
  • 全身の底上げ:呼吸器(肺)や消化(脾胃)の弱りも同時に底上げすることで、「気」の生成を増やし、再発を遠ざける土台を作ります。

代表ツボの一例:発汗と自律神経を調整する

多汗の部位や、冷え・熱の有無といった体質に合わせてツボを選びます。

目的東洋医学的なねらい
体表をしめる(固渋作用) 合谷・太淵 肺系(気のバリア)を高め、発汗の閾値を正常に整えます。(特に手掌多汗に)
自律神経の安定 内関・神門 「心(精神)」の熱を鎮め、交感神経の過剰な興奮を抑えて、発汗を促すスイッチの切替をスムーズにします。
全身の水はけ 陰陵泉・三陰交 体内の水代謝(水毒)と、末端の冷え(血流の停滞)を緩和し、余分な湿や熱を流します。
体力の底上げ 足三里 消化吸収力(脾胃の働き)を補い、気の消耗(陽虚)の回復を助け、全身の発汗を抑えます。

※体質・部位(手掌/足底/腋窩など)で都度調整します。強い刺激は逆効果です。

汗かき体質に共通するサイン:体表の「気のバリア」と「心」の負担

多汗症は、発汗を抑える「気(衛気)」の力が弱いことが根本にあります。これは、五臓の連携、特に肺(はい)と心(しん)の機能低下として、全身に現れやすいサインです。

  • 呼吸器が弱い(肺の弱り):東洋医学で「肺」は皮膚の締まり(体表のバリア)や汗腺の開閉を司ります。鼻炎・花粉症、風邪で咳が出やすい方は、肺の機能が弱いため、汗腺が緩みやすい体質と考えられます。
  • 喉が痛くなりやすい/眠りが浅い/朝だるい:「心(精神・循環)」に熱や疲労が溜まっているサインです。心は汗と密接に関わり、眠りの浅さや慢性的な疲労(気虚)が、自律神経を乱し、発汗を促します。
  • 季節の変わり目に体調を崩しやすい:体表の「気のバリア(衛気)」が弱いため、外からの寒暖差(邪気)に適応しづらく、体調を崩しやすい傾向があります。
  • 腕や腰に不調が出やすい(ぎっくり腰の既往など):汗の異常は「水(すい)」の代謝と関わります。特に腎(じん)は腰や下肢と連動しており、水代謝の乱れが腰の不調に繋がることがあります。
  • 辛い物が好き、円形脱毛の既往:辛い物を好むのは体内の熱を抱えやすい傾向があり、円形脱毛は「血(けつ)」の不足や過度なストレス(肝の負担)を示唆し、多汗症の背景にある全身の気の乱れと共通しています。

日常の養生(セルフケア):「気の漏れ」を防ぎ、心身を穏やかに

鍼灸治療の効果を最大限に高め、発汗のスイッチを過剰に刺激しないためには、日々の養生が不可欠です。特に自律神経(心・肝)と消化機能(脾胃)を労りましょう。

  • 冷え対策と気のバリア:首・お腹・足元を保温することで、全身の気血の巡りを促します。冷たい飲食は脾胃の火力を奪い、水代謝を乱すため控えめにしましょう。
  • 呼吸を整える(肺と心の安定):浅い呼吸は交感神経を刺激します。鼻呼吸を意識し、特にゆっくりと長く息を吐く時間を持つことで、自律神経(心)を安定させ、発汗の閾値を整えます。
  •  入浴で芯から温める:シャワーだけでなく、湯船に浸かって芯から温めることで、全身の血流を改善します。冷えを取り、体表の気の締まり(衛気)を正常に保つ助けになります。
  • 食養生(熱と湿の除去):白砂糖や刺激物は体内に余分な熱(熱邪)や湿(水毒)を生み出し、発汗を促します。これらを避け、温かい和食中心の食事で脾胃を養いましょう。
  • ツボケアで気の調整:
    • 合谷:気の巡りを整え、体表の締まりを助けます。
    • 内関:自律神経(心)の興奮を鎮め、動悸や不安を和らげます。
    • 三陰交:水代謝(脾・腎)と血の巡り(肝)を整え、全身のバランスを調整します。
    これらのツボを軽い指圧や市販のお灸でやさしくケアする習慣をつけましょう。

料金について

初回:5,500円(税込)

2回目以降:5,000円(税込)

院長プロフィール

東洋中村はり灸院 院長 中村麻人の写真

中村 麻人(なかむら あさと)

札幌「東洋中村はり灸院」院長・鍼灸師。

「森を見て木を治す」東洋医学の視点で、肩こり、腰痛をはじめ、生理痛・顔面神経麻痺・潰瘍性大腸炎・耳管開放症など病院で原因不明、治療法がない慢性疾患を中心にはり治療を行っています。