潰瘍性大腸炎の不快な症状と、
東洋医学によるお身体の調え方
西洋医学でお薬を用いて炎症を抑えることは、今起きている火急の事態を防ぐために非常に重要です。その一方で、お身体の内側には、東洋医学で「湿熱(しつねつ)」と呼ばれる、過剰な熱や停滞した水分による負担が残っている場合があります。
東洋医学の鍼灸では、胃腸の働きを助け、お身体の巡りを促すことで、この負担を和らげることを目指します。「本来の穏やかな働きを取り戻すための環境づくり」をお手伝いすることで、急な腹痛やお手洗いの回数に悩まされる場面が、少しずつ落ち着いていくことが期待されます。

潰瘍性大腸炎への東洋医学的アプローチ:本質的な理解のための目次
西洋医学による管理を基盤としながら、東洋医学がどのようにお身体の「土台」を調えていくのか。その具体的な考え方と、日々の負担を和らげるための道筋をご案内いたします。

潰瘍性大腸炎(UC)の基礎知識:
西洋医学による理解と治療の現状
潰瘍性大腸炎(UC)は、現代医学においてもその原因が明確には特定されていない、大腸の粘膜に慢性的な炎症が生じる状態を指します。
お身体の状態を例えるなら、大腸という大切な栄養の通り道において、本来は身を守るはずの免疫が過剰に働き、自分自身の粘膜を傷つけてしまっている状態と言えます。この影響により、粘膜が赤く腫れたり、表面が剥がれ落ちる「びらん」や「潰瘍」が形成されることがあります。
主な症状と経過の傾向
-
お腹の不快感と便の変化:
炎症が活発な時期には、激しい下痢や血便、繰り返す腹痛などが現れることがあり、日常生活に一定の制限が生じる場合もございます。 -
全身に及ぶ消耗:
慢性的な炎症が続くと、微熱や貧血、体重の減少といった全身的な疲れとして現れることがあります。これはお身体が常に内側でエネルギーを消費し続けているためと考えられています。 -
落ち着いた時期と波の繰り返し:
症状が和らぐ「寛解(かんかい)」と、再び現れる「再燃(さいねん)」を繰り返す傾向があります。長期にわたり、この波とどのように付き合っていくかが一つの課題となります。
西洋医学における対応
病院での治療は、主に「今起きている炎症をいかに鎮め、落ち着いた状態を維持するか」という点に重きが置かれます。
-
薬を用いた管理:
- 5-ASA製剤:腸の粘膜の炎症を穏やかに抑え、状態を安定させるために広く用いられます。
- ステロイド:炎症が強く、急を要する場合に一時的に用いられることがあります。
- 免疫調整薬・生物学的製剤:過剰に反応している免疫の仕組みに働きかけ、落ち着いた状態を保つことを目指します。
-
お食事による調整:
腸への負担を一時的に減らすことで、粘膜の回復を妨げないようにする試みが行われます。 -
外科的な検討:
お薬による管理が困難な場合や、お身体への負担が著しく大きい場合には、手術という選択肢が検討されることもあります。

東洋医学から見た潰瘍性大腸炎:
体質の土壌とバランスの乱れ
東洋医学では、潰瘍性大腸炎を単なる大腸の炎症としてだけでなく、お身体全体のバランスが崩れた結果として捉えます。生まれ持った体質や、日々の過ごし方、気候の変化などが重なることで、本来備わっている「自己回復の仕組み」が働きにくい状態になっていると考えます。
お身体の状態を例えるなら、「水はけの悪い土壌に過剰な熱がこもり、根が傷んでしまっている状態」と言えるかもしれません。東洋医学の役割は、この土壌の質を穏やかに調え直し、お身体が自ら健やかさを保てるよう導くことにあります。
関連し合うお身体の仕組み
大腸の不調は、他の臓器や機能のバランスと密接に関わっています。
-
「肺(はい)」の働き:
東洋医学において、大腸と肺は深く関係しています。粘膜や皮膚のバリア機能を司るため、ここが弱まると外からの刺激に敏感になりやすい傾向があります。 -
「腎(じん)」の働き:
生命力の源とされる部分です。ここが消耗すると、慢性的な疲れを感じやすくなり、粘膜の修復を支える力が不足しがちになります。 -
「脾(ひ)」の働き:
消化吸収を担う中心的な機能です。ここが停滞すると、お身体の中に余分な水分が溜まりやすくなり、下痢や炎症を長引かせる要因となる場合があります。
共に見られやすい他の不調
- 鼻炎、花粉症、喉の違和感
- 皮膚の乾燥や敏感さ、末端の冷え
- 生理痛や周期の乱れといった悩み
- 眠りの浅さや、動悸などの自律神経の揺らぎ
生活習慣とお身体への影響
症状が活発な時期には、お身体の中に「過剰な熱」と「停滞した水分」が混ざり合った状態が生じていると考えられます。特定の飲食物は、この不均衡を助長するきっかけとなる場合があります。
配慮が必要とされる傾向
-
特定の穀類(小麦など):
お身体の中に重たい水分を溜めやすく、腸の働きを停滞させる要因となることがあります。 -
精製された甘いもの:
急激にお身体の熱を高めやすく、炎症の波を大きくするきっかけになる場合があります。 -
乳製品や脂質の多いもの:
消化に時間を要するため、弱っている胃腸の負担となりやすく、粘液の質を変化させることがあります。 -
冷たい飲食物:
お腹を直接冷やすことで消化力を低下させ、慢性的な下痢や巡りの悪さを招く場合があります。

潰瘍性大腸炎の寛解維持を目指して:
鍼灸による調整と日々の養生
東洋医学におけるアプローチの目的は、目に見える炎症を鎮めることだけではありません。お身体が本来持っているバランスを調えることで、不快な波が起きにくい状態へと導いていくことにあります。そのために、鍼灸による機能調整と、日々の養生(生活習慣の調整)を両輪として進めてまいります。
お身体の機能を調える鍼灸
鍼灸は、お身体の各器官がスムーズに連携できるよう、巡りを促す働きをいたします。
お身体の状態を例えるなら、「本来の機能が発揮できずに停滞している場所に、再び適切な流れを呼び込むためのお手伝い」をしていると言えます。
-
巡りの調整とバリア機能の維持:
東洋医学的な視点から、粘膜の健康と関わりの深い「肺」と「大腸」のバランスを整えます。これにより、外からの刺激に対する過敏さを和らげる変化が出ることがあります。 -
内臓の働きを支える:
背中や足元にあるツボを刺激することで、消化を助ける「脾」や、お身体の根源的な力を蓄える「腎」の働きを後押しします。 -
関連する他の不調への働きかけ:
鍼灸は全身に作用するため、お悩みとして伺うことの多い「冷え」や「生理痛」、「眠りの浅さ」といった他の不快な症状についても、同時に負担が軽くなる場合があります。
健やかさを保つための養生
お身体の土台を築くのは、日々の積み重ねです。毎日お腹に入るものや過ごし方を少しずつ見直すことで、お身体の環境を穏やかに変化させていきます。
-
お食事の基本(温・柔):
「胃腸を冷やさず、負担を減らす」ことが大切です。可能な範囲で火を通した温かいお食事を選び、消化を担う機能を労わります。 -
伝統的な食の知恵:
和食を基本とし、発酵食品や根菜など、古くからお腹に優しいとされる食材を意識して取り入れます。これらはお身体の環境を穏やかに保つ助けとなります。 -
無理のない制限:
小麦や過度な糖質、脂質など、炎症を助長しやすいとされる食品については、体調に合わせて無理のない範囲で控える工夫をご提案します。 -
お身体を温める習慣:
入浴でゆっくりとお身体を温めることは、内臓の働きを助けることにつながります。特に足元やお腹を冷えから守る工夫が、再燃の不安を和らげる一助となります。

西洋医学と東洋医学の併用:
潰瘍性大腸炎への包括的な向き合い方
潰瘍性大腸炎という長年付き合っていく必要のある状態において、西洋医学と東洋医学はそれぞれの役割を持って支え合う関係にあります。互いの利点を活かすことは、お身体の負担を和らげるための一つの現実的な道筋となります。
-
急な炎症への対応(西洋医学の役割):
炎症が強く出ている時期には、病院での適切な薬物療法による管理が欠かせません。迅速に状態を鎮めることで、お身体の著しい消耗を防ぐことができます。 -
お身体の土台を調える(東洋医学の役割):
落ち着いた状態を維持している間に、鍼灸や養生によってお身体のバランスを整えます。これは、お身体の中に例えるなら「季節の変わり目やストレスに左右されにくい、穏やかな環境を育む」ような働きかけと言えます。 -
お薬との関わり方について:
東洋医学的なアプローチを並行することで、お身体本来の調整力が働きやすくなり、結果として主治医の判断のもとお薬の調整が検討される場面が出てくることもあります。 -
情報の共有と連携:
病院での検査結果や治療経過を伺いながら、それをお身体全体のバランスを判断する材料として活用します。状況を多角的に把握することで、よりお一人おひとりに適したサポートを考えやすくなります。
潰瘍性大腸炎への向き合い方は、一つの方法に絞ることだけが正解ではありません。西洋医学で炎症の制御を行いながら、東洋医学でお身体の「内側の環境」を調えていく。この二つの視点を併せ持つことが、日々の安心感に繋がっていくものと考えております。

潰瘍性大腸炎への鍼灸施術:
料金体系と通院ペースの目安
当院での施術は、その時々のお身体の状態(証)に合わせた自由診療によるオーダーメイドの対応となります。お身体のバランスを整え、穏やかな日常を維持していくための選択肢としてご検討ください。
初回はお身体の巡りや体質を詳しく確認するための問診とお身体の観察(脈や舌の拝見など)を行い、現状に合わせた方針を組み立てます。
前回の施術後のお身体の変化を伺いながら、その日の体調に合わせて鍼灸や手技による調整を継続して行います。
お身体の状態に合わせた通院の目安
-
お身体の波が激しい時期:
週に1~2回程度の頻度で調整を行うことが望ましい場合があります。急な負担を和らげることを優先し、巡りを促していきます。 -
状態が落ち着き始めた時期:
週に1回程度のペースで、消化機能や生命力の蓄えを助けるための調整を重ねます。お身体の基礎を少しずつ補強していく段階です。 -
穏やかな状態が維持できている時期:
2〜3週間に1回、あるいは月に1回程度、お身体の定点観測としてメンテナンスを行います。小さな変化の兆しを早めに捉え、大きな波にならないよう調整します。
体質の調整は、「地道に土手を築き、氾濫しにくい環境を整えていく作業」に似ているかもしれません。最初はある程度の頻度が必要となることもありますが、お身体の土台が整うにつれ、より少ない頻度での維持が可能になる場合があります。

ご予約・ご相談
院長プロフィール
中村 麻人(なかむら あさと)
札幌「東洋中村はり灸院」院長・鍼灸師。
「森を見て木を治す」東洋医学の視点で、肩こり、腰痛をはじめ、生理痛、顔面神経麻痺、潰瘍性大腸炎、耳管開放症など、原因不明・治療法が限られる慢性疾患を中心にはり治療を行っています。
