肺気腫(COPD)に伴う息苦しさへ:
残された呼吸機能を健やかに保つための支え
変化した肺の組織を元に戻すことは、現代の医学においても容易ではありません。しかし、「今ある呼吸の力」を十分に引き出すための工夫は、まだ残されているかもしれません。
東洋医学では、呼吸に関わる筋肉の緊張を緩め、「腎」の働きを整えることで、呼吸が深く落ち着くよう導きます。少しずつでも、お身体が本来持っている調整機能を取り戻し、日々を穏やかに過ごすための土台を整えてまいりましょう。

目次
肺気腫(COPD)に伴う息苦しさに対し、お身体の状態をどのように見守り、残された呼吸の力をどのように支えていくか、東洋医学の視点を交えて順を追ってご説明いたします。

肺気腫(COPD)の性質と向き合い方:
呼吸の負担が重なる背景について
COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、タバコの煙などの刺激を長期間受けることで、肺に持続的な負担がかかり、呼吸に関わる機能が変化していく状態を指します。その中でも肺気腫は、肺の組織そのものが変化していく性質を持っています。
お身体の変化:肺の仕組みについて
肺の奥には、酸素を取り入れるための小さな袋(肺胞)が集まっています。肺気腫では、この袋の壁が脆くなることで、効率的な呼吸が難しくなる場合があります。
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状態のイメージ:
弾力のある新しいゴムまりが、時間の経過とともに伸び切ってしまい、空気をうまく押し出せなくなったような状態に近いといえます。 -
主な要因:
多くの場合、長年の習慣が影響しており、中高年の方においてゆっくりと時間をかけて変化が進んでいくのが特徴です。 -
気道への影響:
空気の通り道に痰が絡みやすくなったり、空気の流れが制限されることで、呼吸の際に音が混じる場合もあります。
現れやすい症状:日常での感覚
変化は緩やかに進むため、最初はご自身の体力の低下と感じられることも少なくありません。
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歩行時などの息切れ:
階段の上り下りや少し急ぎ足になった際に、以前よりも呼吸の乱れを感じやすくなります。状態によっては、静かに過ごしている時にも重さを感じる場合があります。 -
持続する咳や痰:
特に朝起きた際に、お休み中の痰を出すための咳が続くことがあります。 -
お身体の消耗:
呼吸には意外と大きなエネルギーが必要です。そのため、お身体全体に疲れを感じやすくなったり、食後に胃腸へ血流が回ることで一時的に息苦しさが現れる場合もあります。

病院での治療:
現在の機能を健やかに保つための大切な基盤
肺気腫(COPD)において、病院での治療は病状の進行を穏やかにし、日々の息苦しさを緩和するための重要な役割を担っています。
主な対応の目的
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呼吸を助けるための薬剤:
空気の通り道を広げるお薬や、炎症を抑える吸入薬が用いられます。これらは、今ある呼吸の通路を維持し、咳や痰による体力の消耗を抑えるために必要不可欠なものです。 -
日常生活を支えるリハビリ:
効率の良い呼吸法の習得や、全身の筋力を保つ運動などを通じて、息切れを感じにくい身体づくりを目指します。 -
お身体を守るための補助:
病状によっては、酸素を補う機器を使用することで、心臓など他の中枢への負担を和らげ、生活の範囲を維持することが検討されます。
現在の治療に東洋医学を添える視点
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お身体の性質への配慮:
変化した肺の組織そのものを元に戻すことは、現在の医学においても難しいとされています。病院の治療が「進行を食い止める」ことを主眼とする一方で、東洋医学では、お身体が本来持っている力を引き出すことを考えます。 -
全体的な調和の調整:
病院の治療が火事の勢いを抑える消火活動だとすれば、東洋医学は火事が起きにくいように家(お身体)全体の湿り気や風通しを整えるような、土台づくりの役割を担う場合があります。 -
長期的な歩み:
吸入薬などと長く付き合っていく中で生じる、動悸や胃腸の重さといったお身体の小さなお悩みに対しても、巡りを整えることで負担が軽くなる場合があります。

東洋医学による支え:
全身の巡りを整え、深い呼吸を助ける考え方
一度変化した肺の組織を元に戻すことは難しいですが、東洋医学では「今ある機能をいかに健やかに保つか」という視点を大切にします。
特に、呼吸を支える根源的な力である「腎(じん)」の働きを整えることで、お身体の負担を和らげることを目指します。
お身体を整えるための視点
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呼吸を支える力の補強:
呼吸器を司る「肺」だけでなく、お身体の土台である「腎」の働きを整えます。これにより、呼吸が浅くなるのを抑え、お身体に備わっている粘り強さを維持する助けとなります。 -
余分な緊張を解く:
全身の巡りを整えることで、呼吸に関わる筋肉の強張りが緩む場合があります。不必要な力が抜けることで、ゆったりとした呼吸がしやすい環境を整えていきます。 -
持続的な消耗への対応:
慢性の咳や痰は、想像以上にお身体を消耗させます。これらの頻度が落ち着くことで、本来お身体を維持するために使われるべき力が、無駄なく行き渡るよう導きます。
この調整は、お身体という器のひび割れを埋めるのではなく、中に入っている水の巡りを良くして、器全体への負担を減らすような取り組みといえます。
変化の兆しとして期待されること
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日々の動きの負担軽減:
痰が絡みにくくなる、あるいは呼吸を助ける筋肉の緊張が和らぐことで、以前よりも身体が動かしやすくなったと感じられる場合があります。 -
疲れやすさの緩和:
お身体全体の巡りが整うことで、重だるい感覚が和らぎ、日々の生活の中での活動意欲が維持されやすくなります。 -
健やかな環境づくり:
お身体の防衛機能を整えることで、季節の変わり目や冷えによる体調の変化に対し、極端に崩れにくい状態を目指します。

鍼灸による調整:
お身体の調和を整え、呼吸の負担を軽くするために
肺気腫(COPD)に伴う息切れを和らげるためには、今ある呼吸の機能をいかに無駄なく、健やかに働かせるかが大切です。
当院の施術では、お身体の「巡り」に関わる場所を整えることで、呼吸に伴う全身の緊張を解きほぐすよう努めます。
施術の進め方と心地よさへの配慮
お身体全体の「気(き)」や「血(けつ)」の通り道を整えるために、手足や背中のツボへ穏やかな刺激を与えます。
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巡りの調律:
滞っている部分を流し、不足している部分を補うことで、お身体が本来持っている維持機能を整えます。これにより、慢性の咳や痰による負担が和らぐ場合があります。 -
穏やかな刺激:
髪の毛ほどの細い鍼や、温かさを感じる程度のお灸を使用します。体力の消耗を感じている時でも、お身体に負担をかけすぎないよう慎重に加減いたします。 -
施術のイメージ:
お身体という庭の、滞った水路を掃除して、再び清らかな水が全体に行き渡るように整えるような、静かな時間です。
呼吸を支える「三つのお身体の働き」
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呼吸の器を整える(肺の働き):
空気を取り込み、全身へ巡らせる力を支えます。ここを整えることで、息切れや呼吸の重苦しさが軽減される場合があります。 -
お身体の栄養を支える(胃腸の働き):
東洋医学では、余分な痰は胃腸の乱れから生じると考えます。消化の働きを整えることで、痰が絡む不快感を抑える助けとなります。 -
呼吸の根を支える(腎の働き):
深く空気を吸い込むための「根」となる力を整えます。ここが健やかになることで、全身の疲れやすさや足腰の重さが和らぎ、安定した呼吸に繋がることがあります。 -
目指す姿:
これら三つの働きが調和することで、今ある呼吸の力を最大限に活かせるお身体の状態を目指します。

日々の養生と体づくり:
これ以上の負担を抑え、健やかさを維持するために
肺気腫(COPD)と向き合う上で、鍼灸や病院の治療と同じくらい大切なのが、日々の生活習慣を整えることです。
お身体への刺激を減らし、内側から補う工夫を重ねることで、呼吸の負担が軽くなる場合があります。
大切な習慣:お身体を守る第一歩
肺の組織への刺激を断つことは、これ以上の変化を穏やかにするための土台となります。
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空気の質を整える:
タバコの煙などは、肺にとって非常に大きな負担となります。これらを避けることは、咳や痰を抑え、残された呼吸機能を守るための大切な選択となります。 -
無理のない断煙:
もし習慣を改めることが難しいと感じる場合は、専門の窓口などを利用しながら、お身体への負担を最小限にする方法を一緒に考えていきましょう。 -
生活の例え:
お身体という繊細な織物を、これ以上傷めないように優しく扱い、ほつれを丁寧に繕っていくような心掛けが、数年後の健やかさに繋がります。
東洋医学が勧める日々の過ごし方
全身の巡りと、呼吸の根源となる力を養うための工夫です。
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お食事の配慮:
胃腸に負担をかけない温かいお食事を基本にします。冷たいものや甘いものは、お身体の中に余分な水分(痰の元)を溜め込みやすくするため、控えめにされると呼吸が楽になる場合があります。 -
冷えを防ぎ、巡りを助ける:
お風呂でゆっくりと身体を温め、特に足元を冷やさないようにします。お身体を温めることは、巡りを助け、呼吸に使うエネルギーを蓄えることに繋がります。 -
穏やかな動き:
体調の良い時に、無理のない範囲で深くゆっくりとした呼吸を意識しながら、散歩などを行う習慣を大切にします。これにより、お身体の使い方が効率的になる場合があります。

お身体に合う鍼灸院の選び方と
病院治療との健やかな併用について
呼吸の状態を整え、日々の負担を和らげるためには、お一人おひとりの体力や体質に寄り添った繊細な調整が求められます。
ご自身の大切なお身体を預ける場所として、以下の視点を参考にしていただければと思います。
鍼灸院を検討される際の目安
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お身体全体の調和を重視しているか:
局所的な刺激だけでなく、東洋医学の視点から全身の「巡り」を整えることを目的とした施術を行っているかを確認しましょう。呼吸を支える土台そのものを整える視点が大切です。 -
丁寧な対話と計画があるか:
現在の呼吸の状態や生活習慣を細やかに聞き取り、無理のない範囲で継続できる計画を提示してくれる治療院は、長期的な支えとなる場合があります。 -
負担の少ない施術技術:
体力が低下している時でも安心して受けられるよう、刺激の穏やかな鍼やお灸を用いているか、また、使い捨ての鍼など衛生面が整っているかは、安全な継続に不可欠な要素です。 -
暮らしへの助言があるか:
施術の時間以外でも、ご自宅でできる呼吸の工夫や食事のあり方など、日々の養生について具体的なお話しができる環境を選びましょう。
病院での治療と歩調を合わせるために
東洋医学による調整は、病院での適切な管理があってこそ、その良さを発揮できる場合があります。
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急な体調変化への対応:
息苦しさが急に強まった際や体調が著しく優れない時は、まず主治医の先生にご相談いただき、適切なお薬の使用や処置を優先してください。鍼灸は、その安定した状態を維持するための支えとして活用するのが望ましいです。 -
情報の共有を大切にする:
病院での検査結果や処方されているお薬の内容を、鍼灸師にも定期的にお伝えください。双方の情報を共有することで、よりお身体に負担の少ない、一貫性のあるケアが可能となる場合があります。
病院の治療という「確かな地盤」の上に、東洋医学という「穏やかな日差しや水」を添えることで、お身体が持っている本来の健やかさが維持されやすくなります。

施術費用と、お身体を整えていくための通院の目安について
当院での施術は健康保険の適用外となります。そのため、ご負担を感じられることもあるかと存じますが、今の状態をいかに維持し、日々の生活を穏やかに過ごしていただくか、という長期的な視点から丁寧な調整を心掛けております。
現在の呼吸の状態やお困りごとを詳しく伺い、東洋医学の視点からお身体のバランスを拝見します。その上でお一人おひとりに合わせた調整の進め方をお伝えいたします。
その時々のお身体の状態(息苦しさや疲れやすさなど)に合わせ、心身の緊張を緩めるための施術を行います。あわせて、ご自宅で大切にしていただきたい生活の工夫などもお話しいたします。
お身体を整えていくための目安
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お身体の消耗が強く感じられる時期:
呼吸に伴う疲れが強い場合は、週に1〜2回ほどの頻度でお身体の状態を落ち着かせる調整を重ねることが、回復の助けとなる場合があります。 -
呼吸の状態が落ち着いてきた時期:
息苦しさや重だるさが和らいできた際は、週に1回程度のペースで、良い状態を維持するための土台づくりを進めていきます。 -
穏やかな日々を維持する時期:
お身体全体の巡りが安定してきましたら、2週間から1ヶ月に1回程度の頻度で、お身体の状態を確認しながら、変化の現れにくい体質を保てるよう努めます。
お身体の手入れを重ねることは、長年大切に住み続けてきた家を、季節の移ろいに合わせて丁寧に整え直すことに似ています。
はじめに丁寧な調整を重ねてお身体の地盤を整えることが、結果としてその後の負担を軽くすることに繋がる場合があります。

ご予約・ご相談
院長プロフィール
中村 麻人(なかむら あさと)
札幌「東洋中村はり灸院」院長・鍼灸師。
「森を見て木を治す」東洋医学の視点で、肩こり、腰痛をはじめ、生理痛・顔面神経麻痺・潰瘍性大腸炎・耳管開放症など病院で原因不明、治療法がない慢性疾患を中心にはり治療を行っています。
