突発性難聴における内耳の巡りと、
鍼灸による調整の視点
聴覚の急激な変化は、内耳の血流や神経の働きに一時的な負荷がかかっている状態と考えられます。
病院での薬物療法と並行し、鍼灸で耳周囲の緊張を解き、お身体全体の巡りを整えることは、回復を支える環境作りとなります。
「本来の機能が働きやすい状態」を維持できるよう、お一人おひとりの体質に合わせた調整を行ってまいります。

目次:突発性難聴への理解と、お身体を整えるための道筋
突発性難聴という急な不調に対し、内耳の巡りや神経の働きをお身体の内側から整えていく東洋医学的な考え方をまとめています。

難聴の基礎知識:
聞こえの仕組みと突発性難聴への対応について
聞こえが低下する状態、いわゆる難聴にはいくつかの種類があります。耳は、音を物理的な振動として受け取る役割と、その振動を脳に届けるための電気信号に変換する役割を担っています。この一連の過程のどこかに負荷がかかることで、音が聞き取りにくくなると考えられます。
例えるなら、ラジオのアンテナに問題があるのか、それとも音を出す内部の機械そのものに問題があるのかによって、お身体の状態は異なります。
状態の分類
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伝音(でんおん)に関わるもの:
音を内側へ伝える経路に何らかの障壁がある場合です。中耳炎など、主に外耳や中耳といった箇所が関わることが多いとされています。 -
感音(かんおん)に関わるもの:
伝えられた音を信号へと変換する内耳や、それを脳に運ぶ神経に何らかの負荷がかかっている場合です。突発性難聴はこちらに分類されます。

難聴の種類と背景:
音を伝える機能と、信号に変える機能の不調
難聴の状態は、音が耳を通り抜けるまでの「物理的な経路」に要因がある場合と、届いた音を脳に送るための「信号変換」に要因がある場合に分かれます。
物理的な伝達に関わる不調
(伝音難聴)
鼓膜や耳小骨といった、音を耳の奥へと届けるための仕組みに何らかの障壁がある状態です。
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要因の例:
耳垢の詰まりや中耳炎など、音が通りにくくなる物理的な状況が挙げられます。 -
状態の傾向:
耳が塞がっているような感覚を伴うことが多く、病院での適切な処置によって負担が軽くなる場合が比較的多いとされています。
信号の変換に関わる不調
(感音難聴)
内耳や聴神経といった、受け取った振動を脳が理解できる電気信号に変換する機能に負荷がかかっている状態です。
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要因の例:
突発性難聴、加齢、強い騒音の影響などが考えられ、内耳の細い血管の巡りが関わっていると言われています。 -
状態の傾向:
音が歪んで聞こえる、特定の高さだけ聞き取りにくい、あるいは耳鳴りを伴うといった変化が見られる場合があります。 -
鍼灸の視点:
耳の深部の巡りを整えることで、過度な緊張を和らげ、お身体の回復環境を整えるお手伝いをいたします。
「ラジオのアンテナの向きがずれているのか、それとも本体内部の回路に負荷がかかっているのか」という違いに似ています。ご自身の状態を知ることが、養生の第一歩となります。

突発性難聴の主な症状:
聞こえづらさ、耳鳴り、めまいの重なりについて
突発性難聴は、あるとき不意に聞こえの不自由さを感じる不調です。単に音が小さくなるだけでなく、お身体の感覚としていくつかの重なりが見られることが一般的とされています。
自覚されることが多い変化
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急な聞こえの変化:
起きた瞬間や何気ない場面で、片耳に幕が張ったような聞こえづらさを感じることがあります。 -
音の響きや歪み:
自分の声や周囲の音が反響して聞こえたり、金属が擦れるような音として歪んで感じられる場合があるようです。 -
耳鳴りや閉塞感:
持続的な音の重なりや、耳の中に水が入ったときのような、内側からの圧迫感を伴うケースが見られます。 -
ふらつきやめまい:
耳の深部はバランスを司る箇所とも密接に関わっているため、お身体がふわふわしたり、吐き気を伴う変化が出ることもあります。

病院での治療と向き合い方:
突発性難聴への標準的なアプローチと課題
突発性難聴において、病院で行われる初期の処置は非常に大きな意味を持ちます。主に内耳の炎症を抑え、機能を守るための働きかけが中心となります。
病院での主な働きかけ
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ステロイド薬:
内耳に生じた急激な変化を落ち着かせるために用いられます。お身体の中で起きている「緊急の鎮火」のような役割を担う、大切な第一選択とされています。 -
循環を助ける薬:
内耳の細い血管の巡りを助け、栄養が行き渡りやすい環境を整えるための補助的な薬が処方される場合があります。 -
経過の観察:
定期的な聴力検査を行い、お身体がどのように反応しているかを数値で確認していきます。
現状の課題
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原因の特定が難しい:
多くの感音難聴は、現代の医学でもはっきりとした原因を突き止めるのが難しいとされており、全身の状態を見守る視点が求められることがあります。 -
一定期間後の対応:
発症から数週間が経過し、変化が緩やかになった際、病院での積極的な治療が一段落することがあります。この時期にどう過ごすかが、お身体の負担を軽くする鍵となる場合があります。

東洋医学による難聴へのアプローチ:
全身の巡りと内耳の環境を整える視点
東洋医学では、耳の不調を単なる局所の問題としてだけでなく、お身体全体の巡りや調和が崩れた結果として捉えます。特に内耳のような繊細な箇所は、全身の状態に左右されやすいと考えられています。
全身を整えるという考え方
難聴そのものだけを追うのではなく、それを引き起こしているお身体の土台に目を向けます。
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体質的な偏りの調整:
疲れの蓄積や冷え、自律神経の緊張など、人それぞれ異なる体質の偏りを整えることで、耳へと繋がる巡りを穏やかにしていきます。 -
お身体の回復環境を整える:
お身体という「土壌」を整えることで、耳という「芽」が本来の健やかさを取り戻しやすい環境を整えていく働きかけを行います。
具体的な働きかけ
経絡治療に基づき、無理のない穏やかな刺激でお身体の変化を促します。
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ツボを通じたアプローチ:
全身にあるツボの中から、今のその方に必要と思われる箇所を選び、お身体の緊張を和らげ、内耳周囲の血流を支えます。 -
巡りの滞りを和らげる:
耳周りだけでなく、首や肩、足元などの巡りを整えることで、耳への過度な負担が軽くなる場合があります。 -
安全な施術の選択:
刺激の強さを慎重に調整し、病院での治療と並行しながらでも安心してお受けいただけるよう配慮いたします。
東洋医学の目的は、症状を無理に抑え込むことではなく、お身体が本来持っているバランスを整え直すことにあります。その過程で、耳の閉塞感や聞こえづらさが和らぐといった変化が見られる場合があります。
難聴に伴いやすい全身のサイン:
自律神経や巡りの乱れが関わる諸症状
難聴という状態は、耳だけの問題として完結しているわけではありません。お身体全体の緊張や巡りの滞りが、結果として耳という繊細な場所に現れている場合が少なくありません。
背景を共有している可能性がある変化
難聴と同時期、あるいはお身体の調子を落とされた際に、以下のような感覚を覚えることがございます。
- 眠りが浅い、夜中に目が覚める
- 首や肩の緊張が強く、頭が重く感じる
- 手足の先に冷えを感じやすい
- 胃のあたりが重い、もたれやすい
- 呼吸が浅く、ため息が増える
- 朝起きたときに疲れが残っている
- お腹の張りや便通の不安定さ
- 鼻の通りがすっきりしない
【東洋医学的な捉え方】
お身体全体のバランスを整える施術は、耳の不快感にアプローチすると同時に、これらの付随する不調の負担を和らげる役割も担います。
「個別の蛇口(耳)を調整するだけでなく、家全体の水道管(巡りの道筋)を整え、お身体全体の流れを安定させる」ような視点で、回復への基盤を整えてまいります。

難聴への施術料金と通院の考え方:
お身体の状態に合わせた段階的なサポート
当院では、お身体全体の巡りを整えることで、内耳を取り巻く環境を穏やかに支えていく施術を行います。保険外の自由診療となりますので、通院のご負担も含め、今のあなたにとって無理のない計画を一緒に考えてまいります。
現在の聞こえの状態やお身体全体のバランスを詳しく伺い、施術の方向性を定めていきます。
その時々のお身体の反応に合わせ、巡りを整え、緊張を和らげるための働きかけを継続いたします。
通院頻度に関する目安
変化の出やすさは、発症からの期間やお身体の地力によって異なります。状況に応じて、以下のようなペースをご提案することがあります。
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発症から日が浅い場合:
お身体の変化が比較的起こりやすい時期とされるため、週に数回程度の頻度で、集中的に巡りを支えることが望ましい場合があります。 -
状態が落ち着いてきた場合:
週に1回程度のペースで、整えたバランスを維持し、お身体の回復力をじっくりと見守っていきます。 -
慢性的なお悩みの場合:
2週間に1回程度など、生活の中に無理なく取り入れながら、耳鳴りや閉塞感などの負担を軽減していくことを目指します。
お身体の回復は、穏やかな坂道を一歩ずつ登っていくような歩みになることが多いものです。一度に大きな変化を求めるのではなく、着実にお身体の基盤を整えていくことを大切にしています。

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院長プロフィール
中村 麻人(なかむら あさと)
札幌「東洋中村はり灸院」院長・鍼灸師。
「森を見て木を治す」東洋医学の視点で、肩こり、腰痛をはじめ、生理痛・顔面神経麻痺・潰瘍性大腸炎・耳管開放症など病院で原因不明、治療法がない慢性疾患を中心にはり治療を行っています。
