身体の環境を整え、
鼻粘膜の負担を和らげる視点
鼻の不調は、東洋医学では体内の水分代謝の偏りや、抵抗力の揺らぎとして捉えることがあります。
現代医学的な処置を大切にしながら、同時に身体の内側の環境を整えていくことで、過剰な反応が落ち着いていく段階を目指します。


鼻炎の概要と身体の捉え方
アレルギー性鼻炎や慢性鼻炎は、鼻の粘膜の反応性が高まり、外からの刺激(アレルゲンや温度差など)に対して、くしゃみ・鼻水・鼻づまりといった過剰な反応が続いている状態と考えられます。
東洋医学では、鼻を局所的な問題として切り離すのではなく、身体全体の調和の中に位置づけて捉えます。鼻の粘膜を外部の刺激を調整する境界と考え、その機能が十分に保たれるよう、全身のバランスを確認していきます。
身体の内側の巡りや温度バランスが整うことで、鼻の症状だけでなく、併発している冷えや疲れやすさといった他の負担も、あわせて軽くなる場合があります。このように、身体の土台を静かに整えていくことが、東洋医学の基本的なアプローチです。

鼻の不調に伴いやすい全身の反応
粘膜や皮膚の保護機能に関わる徴候
- 皮膚や末梢の冷え
- 手足の冷えや肌の乾燥、あるいは皮膚の過敏な反応などは、東洋医学で鼻の機能と密接に関係するとされる「肺」の働きの揺らぎとして捉えることがあります。
- 呼吸器の繊細さ
- 喉の腫れやすさや、風邪のあとに咳が残りやすいといった傾向は、鼻粘膜の状態と共通の背景を持っている場合があります。
- 手のひらの発汗
- 手のひらに汗をかきやすい状態は、自律神経の働きだけでなく、呼吸器系の負荷を示す一つの目安として確認することがあります。
休息と調整力の低下を示すサイン
- 眠りの質や自律神経
- 眠りが浅い、あるいは夜中に目が覚めるといった反応は、鼻の通りにくさによる影響だけでなく、身体を調整する力の低下が関わっている場合があります。
- 起床時のだるさや重さ
- 朝起きた時に身体の重さを感じたり、腰や肩に違和感がある場合は、夜間の巡りの滞りや、蓄積された疲弊が鼻の症状に反映されている可能性を考慮します。
東洋医学では、鼻の症状を単独のものとして切り離さず、こうした全身の反応をあわせて確認していきます。身体の各部位に現れる小さなサインを整えていくことで、結果として鼻粘膜への負担が和らぐ場合があると考えています。

東洋医学的なアプローチ
東洋医学では、鼻の症状を身体の内部環境が反映されたものとして捉えます。鼻の粘膜に現れている過剰な反応を落ち着かせるために、全身のバランスを調整し、負担が蓄積しにくい状態を目指します。
身体の連続性と観察
鼻水やくしゃみといった個別の症状は、身体全体のバランスが揺らいでいることを知らせる一つの指標です。東洋医学では、鼻の不調と一見無関係に見える他の部位の反応もあわせて観察することで、調整の手がかりを探ります。
例えば、鼻の粘膜に停滞している余分な水分を「水(すい)」の滞りと捉え、それを適切に循環・排泄させる力を補うことで、鼻の通りに変化が出ることがあります。
体質的な傾向の整理
鼻炎に関わる身体の状態には、いくつかの典型的な傾向があります。
- 水分の巡りの滞り: 体内の水分代謝が低下し、鼻の粘膜に余分な水分が集まることで、鼻水やむくみ(鼻づまり)として現れる場合があります。
- 防御機能の揺らぎ: 外からの刺激から身を守る力が低下している状態を考慮します。これにより、温度差やわずかな埃に対しても敏感に反応しやすくなります。
- 上下の温度バランス: 足元の冷えと頭部ののぼせが混在する状態が、鼻粘膜の過敏性を高める一因となる場合があるため、全身の巡りを整えていきます。

「肺」の働きと粘膜の関係
東洋医学の考え方では、鼻は呼吸器系を司る「肺(はい)」の窓口であると捉えます。鼻炎に伴う諸症状は、この「肺」の働きが揺らぎ、外からの刺激に対する防御が十分に行き届いていないサインとして受け止めることがあります。
施術においては、鼻局所の反応を抑えるだけでなく、身体を守る力の土台となる「肺」の働きを整えることで、粘膜環境の安定を目指します。
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粘膜の状態と保護力の維持:
呼吸器や皮膚の働きを司る「肺」の状態を整えることで、粘膜の過度な乾燥や、わずかな刺激に対する過敏な反応が和らぐ場合があります。 -
環境変化への適応:
季節の変わり目や寒暖差など、環境の変化による負担を身体が受け流せるよう、自律神経の働きを含めた全身の巡りを調整していきます。 -
随伴する反応の確認:
喉の違和感や長引く咳、あるいは手のひらの汗といった「肺」に関連する他の反応もあわせて観察し、身体の保護機能が全体として整っていくよう働きかけます。 - 鼻の粘膜は身体を守る「境界線」のような役割を担っています。この境界を整えることは、鼻の通りを助けるだけでなく、身体全体のバランスを健やかに保つことにもつながります。

現代医学と東洋医学の関わり
耳鼻咽喉科などでの現代医学的な治療は、激しい炎症や辛い症状を迅速に抑える上で非常に重要な役割を担っています。一方で、体質的な要因が関わっている場合、東洋医学的なアプローチを併用することで、より安定した状態を目指せる可能性があります。
それぞれの特徴と補完関係
- 症状への速やかな対応: 点鼻薬や内服薬による処置は、鼻水や鼻づまりといった現在の負担を軽減するために有効な選択肢です。こうした局所的なケアと並行して、東洋医学では身体の内側の環境を整えることを試みます。
- 全身の状態を一体として捉える: 鼻の不調の背景には、胃腸の働きや冷え、自律神経の揺らぎが関わっていることがあります。東洋医学ではこれらを切り離さず、一つの身体の反応として総合的に観察し、全体的なバランスの調整を行います。
- 長期的な安定を目指す視点: 薬による調整を行いながら、徐々に身体そのものの巡りや抵抗力を整えていくことで、季節や環境の変化による影響が和らいでいく段階を追っていきます。

鍼灸による身体の調整
身体を整える視点
鼻粘膜の過敏な反応を鎮めるために、身体全体のバランスを支える調整を行います。
- 巡りを整える: 呼吸器系と関わりの深い気の巡りを確認し、滞りを解いていきます。これにより、粘膜の状態が落ち着き、過剰な反応が和らぐ場合があります。
- 土台を支える: 水分代謝や冷えに関わる働きを補うことで、上半身に集まりやすい熱や停滞を、下半身へと導くような調整を目指します。
- 鼻の粘膜を身体を守る「門番」のような役割と考え、その働きが過度になりすぎず、適切な防衛力を保てるよう静かに促していきます。
施術と期待される変化
- 穏やかな刺激: 使い捨ての極細い鍼や、心地よい温かさの灸を用います。身体の揺らぎやすい方や、小さなお子様には、皮膚に触れる程度の非常に穏やかな手法を選択することがあります。
- 頻度や強さの変化: 身体が整うにつれて、くしゃみや鼻水の頻度が低くなったり、一度出た時の負担が軽く済んだりすることがあります。
- 休息の質の安定: 鼻の通りが和らぐことで眠りの質が落ち着いたり、日中の倦怠感が軽減されるといった全身的な変化が見られる場合があります。

鍼灸での調整を継続する視点
① 変化の定着を目指す
目に見える症状を一時的に抑えるだけでなく、その背景にある体質的な「揺らぎ」を整えることを重視します。継続的な調整により、環境の変化を受けても不調が起こりにくい状態への定着を試みます。
② 全身の不調を包括的に捉える
鼻の不調と並行して現れやすい冷え、肌の乾燥、睡眠の質の低下などは、東洋医学では一つのまとまった反応として考えます。全身を一体として整えることで、多岐にわたる負担が同時に和らぐ場合があります。
③ 経験に基づいた観察
東洋医学には、長年にわたり積み重ねられた観察の視点があります。個々の身体が発する微細なサインを読み解き、現代の生活環境の中で生じる慢性的あるいはアレルギー性の不調に対し、その方に適した調整の手がかりを探ります。
④ 日常の養生と歩みを合わせる
施術による変化を維持するため、東洋医学の知恵に基づいた日常生活の過ごし方を提案します。食事や休息、身体の温め方など、ご自身で行う日々のケアと施術を組み合わせることで、より安定した経過を目指します。

施術料と通院の目安
当院の施術は、身体全体の巡りを整え、粘膜の状態を健やかに保つことを目的とした自由診療(保険外)となります。現在の負担を軽減しながら、季節や環境の変化に影響されにくい身体の状態を段階的に目指していきます。
身体の歴史や現在の状態を詳しく伺い、東洋医学的な視点から不調の背景を確認します。その上で、お一人おひとりに適した調整の方法を提案いたします。
その時々の身体の反応に合わせ、呼吸器系に関わる巡りや水分の停滞を整える施術を継続して行います。
身体を整えていく経過の目安
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初期段階(負担が強く出ている時期):
まずは週に1〜2回程度を目安に、過敏になっている身体の反応を落ち着かせ、巡りの滞りを解いていく時間を設けます。 -
安定段階(落ち着きが見え始めた時期):
週に1回程度の頻度で、身体の保護機能を支える働きを継続的に補い、外部刺激に対する適応力を育んでいきます。 -
維持段階(良い状態を保つ時期):
状態が安定してきた後は、2週間から1ヶ月に1回程度のメンテナンスを行うことで、季節の変わり目などの影響を最小限に留めることを目指します。
身体の調整は、一歩ずつ進む「積み重ね」のようなものです。初期に意識的に調整を重ねることで、身体が本来持っているバランスを取り戻しやすくなる場合があります。無理のない範囲で、ご自身の身体をいたわる時間としてお役立てください。

ご予約・ご相談
長引く鼻の不調や、体質にまつわる不安など、些細なことでも構いません。現在の状態を丁寧にお伺いし、東洋医学の視点からどのような調整ができるかを一緒にお話しさせていただきます。
院長プロフィール
中村 麻人(なかむら あさと)
札幌「東洋中村はり灸院」院長。
東洋医学には「全体を観察することで、個々の不調の背景を読み解く」という視点があります。生理痛や慢性の鼻不調、耳管開放症など、日常的な負担が積み重なりやすいお悩みに対し、お一人おひとりの身体が発する微細なサインを確認しながら、巡りを整えるお手伝いをしてきました。
数値や画像だけでは捉えきれない身体のわずかな「揺らぎ」に向き合い、鍼灸による調整を通じて、日々の生活における負担が和らぐ可能性を共に探っていきたいと考えています。
