心房細動に伴う動悸や不安に対し、
お身体の調和を見つめ直す鍼灸
東洋医学では、心臓そのものの働きだけでなく、それを支える「全身の巡り」を整えることを大切にしています。心房細動という状態を、お身体全体の調和が乱れているサインの一つと捉え、気血の巡りや自律神経の安定を促します。病院での治療を支える一助として、日々のお身体の負担が穏やかに軽くなるよう調整を進めてまいります。

お身体の巡りと心臓の調和について:本記事の目次
動悸や胸の不快感に不安を抱えておられる方へ。西洋医学的な現状をふまえつつ、東洋医学がどのようにお身体全体の巡りから心臓の負担を和らげようとするのか、その視点をお伝えします。

心房細動の概要:
心臓が刻むリズムの乱れとお身体のサイン
心房細動は不整脈の一つに分類され、心臓の上部にある「心房」という部屋が、本来の規則正しいリズムを失い、小刻みに震えるような状態を指します。
この状態が続くことで、動悸や息切れといった自覚症状が現れるほか、長期的な視点では心臓の送り出す力に影響を及ぼす可能性があると考えられています。西洋医学では、お薬による脈の調整や、根本的な処置としてのカテーテル治療などが検討されるのが一般的です。
お身体の調和を見つめる
本来、心臓は絶え間なく安定したリズムを刻む臓器ですが、何らかの理由でその電気的な指令がうまく伝わらなくなっている場合があります。
例えるなら、「穏やかな波紋が広がるべき水面に、細かなさざ波が絶えず生じている」ような状態です。
東洋医学では、これを単なる局所の不具合としてではなく、お身体全体のエネルギー(気)や血の巡りが乱れた結果、心臓に負担がかかっているサインの一つとして捉えています。

心房細動の諸症状と、
お身体に及ぼす影響について
自覚される主な不調
心臓の送る力が一時的に乱れることで、お身体には以下のような反応が現れる場合があります。
- 動悸: 胸が詰まるような感覚や、不規則な鼓動を感じる。
- 胸の不快感: 圧迫感や言葉にしにくい違和感を覚える。
- 息切れ: 階段の昇り降りなど、日常の動作で呼吸が整いにくい。
- 倦怠感: 休息をとっても身体のだるさが抜けにくい。
- めまい: 立ちくらみのような、ふらつきを感じる。
お身体が抱える可能性のあるリスク
心臓のリズムが乱れることで、お身体の中では「血の巡りの滞り」が生じやすくなります。
- 血液の停滞:
心臓の一部で血液がスムーズに流れず、留まりやすくなる場合があります。 - 血栓への懸念:
滞った血液が固まり、それが血流に乗って他の部位の細い血管に影響を及ぼすリスクが考えられます。

心房細動へのアプローチ:
西洋医学の処置と東洋医学によるお身体の調整
病院での精密な検査や治療は、お身体の安全を守る上で欠かせない土台となります。一方で、数値や画像に現れにくい「日々の重だるさ」や「繰り返す不安感」に対し、東洋医学がお役に立てる場面があるかもしれません。
西洋医学による管理
心臓そのもののリズムを整え、お身体の安全を優先するアプローチです。主に薬物療法や外科的処置が行われます。
- 継続的な観察: お薬によって脈の状態や血液の固まりやすさを調整します。
- 専門的な処置: 必要に応じて、乱れたリズムの原因となる部位への物理的なアプローチを検討します。
- 局所の管理: 循環器という専門領域において、心臓の機能を維持することに特化しています。
東洋医学による補完
心臓への負担を強めている「お身体全体の偏り」を整えるアプローチです。巡りの質を穏やかに高めることを目指します。
- 巡りの調整: 局所の乱れを生んでいる背景、例えば冷えや内臓の疲れなどを見つめ直し、お身体全体のバランスを整えます。
- 包括的な配慮: 不眠や消化器の不調など、心臓以外の反応も併せて確認し、回復力を支える基盤を整えます。
- 日々の安定感: 西洋医学の管理下で鍼灸を併用することで、動悸に伴う不安感が和らぐ場合があります。

東洋医学の視点:
お身体全体を整え、心臓の負担を穏やかにする
東洋医学には「森を見て木を治す」という考え方があります。心房細動という局所的な反応(木)だけを診るのではなく、その背景にあるお身体全体(森)の状態を深く観察し、整えていくことを大切にしています。
お身体の土壌を見つめ直す
お身体に現れる様々な不調は、その方が持つ「体質」という土壌の上に現れるものと考えます。心臓の動悸やリズムの乱れを感じておられる方の多くは、他にも鼻の不調、胃腸の弱さ、慢性的な冷えといった、一見関係がないように思える変化を併せ持っていることが少なくありません。
これらはすべてお身体からの大切なサインです。こうした全身のバランスを一つずつ整えていくことで、心臓が過剰な緊張を強いられることなく、本来の働きを保ちやすい環境へと導きます。
「お身体全体の巡りを穏やかに保つことで、結果として心臓にかかる負担が軽くなる場合がある」。これが、当院が目指す東洋医学的な調整のあり方です。

心(しん)の性質と生命力:
東洋医学から見た心臓の役割
東洋医学において、心臓は「心(しん)」と呼ばれ、体内でも活動的で生命力に満ちた「陽(よう)」の性質を持つ臓器とされています。これは、絶え間なく動き続け、全身に熱と巡りを届けるエネルギーの源であることを示しています。
お腹の中にいる時から最期の瞬間まで、休むことなく正確にリズムを刻もうとする心臓は、本来非常に強固な生命力を備えています。このため、何らかの理由でリズムが乱れたとしても、心臓そのものが持つ維持しようとする力は常に働いています。
調和を支える力
お身体全体の環境が整い、心臓を支える他の臓器とのバランスが保たれるようになると、心臓が本来持っている安定したリズムを守ろうとする働きが、より発揮されやすくなると考えられます。
局所的な乱れに意識を向けつつも、お身体の根底にある「陽」の活力を損なわないよう、巡りを穏やかに整えていく。こうした包括的な調整を行うことで、心臓への負担が和らぎ、安定した状態へと近づける場合があります。

鍼灸のアプローチと当院の視点:
お身体の状態に合わせた調整法
鍼灸には古くから伝わる多様な「流派」があり、それぞれに異なる調整の論理を持っています。そのため、同じ動悸という悩みに対しても、選ぶ手法によってお身体への働きかけ方は多岐にわたります。
例えるなら、「山頂を目指す道筋が、緩やかな斜面もあれば急な岩場もあるように」、鍼灸も流派によって着目するポイントが異なります。
当院では、東洋医学の古典的な知見に基づき、特にお身体の深い部分の巡りや、長期にわたる不調との向き合い方に重点を置いた手法を選択しています。
心房細動という、お身体が繊細なバランスを求めている状態に対し、一つひとつの反応を丁寧に見極めながら、無理のない範囲で巡りを整えていくことで、日々の負担が穏やかに軽くなる場合があります。

まとめ:
お身体を整える二つの視点とこれからの歩み方
心房細動という状態に対し、西洋医学と東洋医学がどのように関わり合うのか。その補完関係を「住まいの手入れ」に例えて整理してみます。
● 西洋医学の役割
急な雨漏りを防いだり、傷んだ箇所を直接修理したりするように、今そこにあるリスクを管理し、お身体の安全を確保する不可欠な処置です。
● 東洋医学(鍼灸)の役割
家全体の風通しを良くし、基礎を補強するように、「お身体全体の巡りを整える」ことで、心臓に負担がかかりにくい状態へと導いていく調整です。
これらは一方が優れているというものではなく、役割が異なります。病院での診察や処置によってお身体を守りながら、東洋医学の手法を用いて巡りの滞りを穏やかに取り除いていく。
この重層的な関わり方を続けていくことで、これまで抱えてこられた不安や動悸などの負担が、少しずつ軽くなる場合があると考えています。

施術にかかる費用と、
お身体の調和を目指す通院の目安
当院での心房細動に関わるお身体の調整は、自由診療(保険外)となります。局所的な反応のみならず、お身体全体の巡りを整え、負担の少ない状態を長く維持していくための体質づくりに重きを置いています。
お身体の状態を詳しく伺い、心臓への負担を強めている巡りの偏りを特定した上で、お一人おひとりに合わせた調整の進め方をご提案します。
前回の施術後のお身体の変化を確認しながら、全体の調和を保ち、心臓が本来のリズムで働きやすい環境を整える施術を継続します。
調整を進める上でのペースの目安
- 初期段階: 週に1~2回程度の頻度で調整を行うことで、乱れがちなお身体の巡りを穏やかに整えていく時期です。
- 安定期: お身体の変化が安定してきた頃に、週に1回程度のペースで、調和を保つ力を養っていきます。
- 維持期: 心地の良い状態を維持するために、月に1〜2回程度の定期的な調整を行う段階です。
お身体の調整は「日々のお手入れ」のようなものです。初期に丁寧な調整を重ねることで、結果として将来的なお身体の負担が和らぐことにつながります。

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院長プロフィール
中村 麻人(なかむら あさと)
札幌「東洋中村はり灸院」院長。
「森を見て木を治す」東洋医学の視点で、肩こり、腰痛をはじめ、生理痛・顔面神経麻痺・潰瘍性大腸炎・耳管開放症など、原因不明・治療法が限られる慢性疾患を中心にはり治療を行っています。
