気管支拡張症における咳・痰への
東洋医学的アプローチ
気管支の広がりによって溜まりやすくなった痰に対し、東洋医学では肺の巡りや胃腸の働きを確認します。お身体の内側から「排出すべきものを動かす力」を整えることで、慢性的であった咳や痰の負担が軽くなることがございます。

目次
慢性的な咳や痰にお悩みの方へ、東洋医学がどのような視点でお身体を捉え、日々の負担を軽減するための道筋を立てていくのか。その要点を順を追って解説いたします。

気管支拡張症の病態と主な症状:
慢性的な咳・痰が続く仕組み
気管支拡張症は、空気の通り道である気管支が、慢性的な炎症などによって本来の弾力を失い、広がったまま戻らなくなってしまう状態を指します。
お身体の状態を例えるなら、空気を運ぶ「ホースがたるんで、水が溜まりやすい貯水池のようになってしまった」ようなものと言えます。
病態の仕組み
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気道の変化:
広がってしまった気管支の壁は、痰を外へ押し出す力が弱まりやすくなります。その結果、本来排出されるべき分泌物がその場に留まりやすくなります。 -
繰り返される炎症:
留まった痰は、外部からの菌が付着しやすく、それが新たな炎症のきっかけとなることがございます。この繰り返される反応が、お身体への負担を長引かせる要因となります。 -
長期的な影響:
炎症が継続することで、呼吸に関連する組織が過敏になり、血痰が現れたり、息苦しさを感じやすくなったりする場合があると考えられています。
主な自覚症状
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続く咳と絡む痰:
特に朝方など、溜まった痰を動かそうとする際に強い咳が出やすくなります。痰は粘り気が強く、色がつくこともございます。 -
呼吸のしづらさと倦怠感:
効率的な空気の入れ替えが妨げられることで、少しの動作で息切れを感じたり、お身体全体に重だるさが残ったりすることがございます。 -
生活への影響:
頻繁な咳や痰の排出は、睡眠の質を下げたり、会話や外出時の不安につながったりするなど、日々の暮らしにおいて様々な制約を感じる場面が増える傾向にあります。

病院での治療の役割と、長期的な経過における課題
気管支拡張症における西洋医学の治療は、主に感染をコントロールし、激しい症状を抑えることを目的としています。これらは急な病状の悪化を防ぐために欠かせないものです。
主な対応とその特徴
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急性期への対応:
細菌感染が疑われる際などの抗菌薬の使用や、痰を出しやすくする去痰薬の処方は、お身体の負担を一時的に和らげるために非常に有効です。 -
仕組み上の難しさ:
お身体の状態を例えるなら、「溜まってしまった泥を取り除き、外からの侵入を防ぐ」ための処置が中心となります。一方で、一度変化した気管支の形そのものを元に戻すことは難しく、経過が長引く要因となることがございます。 -
繰り返される反応:
気道に物が溜まりやすいという環境が変わらないため、一度落ち着いても再び不快感が生じるという経過をたどりやすい側面があります。 -
長期的な薬との付き合い:
お薬を長く使い続ける中で、その反応が鈍くなったり、お身体全体の抵抗力との兼ね合いが課題となったりする場合があると考えられています。
病院での治療を継続しながら、お身体が本来持っている「出す力」や「守る力」をどのように補っていくかが、日々の過ごしやすさを左右する一つの鍵となることがございます。

東洋医学による改善の考え方:
肺の機能と巡りを整えるアプローチ
東洋医学では、気管支そのものの変形を追うのではなく、なぜそこに痰が溜まり続け、なぜ炎症が繰り返されるのかという「お身体の環境」に目を向けます。
目指すべき方向性
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「肺」の働きを補う:
呼吸を司る「肺」の気が不足すると、外からの刺激に敏感になり、痰を押し出す力も弱まりやすくなります。この働きを補うことで、お身体の防衛機能を整えます。 -
水の巡りを整える:
お身体の状態を例えるなら、「流れの滞った場所に溜まる濁りを取り除き、風通しを良くする」ような調整を行います。余分な水分が痰へと変わるのを抑えることを目指します。 -
悪循環を緩める:
冷えや胃腸の弱さなど、肺の負担を増やしている要因を一つひとつ解消することで、感染や炎症が起きにくい土台を築いていきます。
期待される変化について
継続的な施術や養生を通じて、以下のような変化が見られることがございます。
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咳・痰の質の変化:
痰が絡んで出にくい状態から、サラサラとして出しやすくなったり、咳の回数そのものが落ち着いたりする場合がございます。 -
体力の維持と消耗の軽減:
慢性的な炎症によるお身体の疲れが和らぎ、日中の倦怠感や動いた時の息切れが以前より気にならなくなることが期待できます。 -
安定した状態の維持:
急な体調の変化が起きにくくなることで、日々の生活の中での安心感につながり、活動の幅が広がるケースも見受けられます。

鍼灸による全身調整:
肺・胃腸・腎の連携を整え、お身体の負担を和らげる
気管支拡張症における慢性的な不快感に対して、私たちは一部の症状だけを追うのではなく、全身の機能を補い合う調整を行います。特にお身体の基礎となる三つの働きを整えることが、穏やかな日常を取り戻す一助となると考えております。
施術の進め方と心地よさ
経絡治療では、手足のツボを中心に、お身体の巡りを促すための繊細な刺激を与えていきます。
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穏やかな刺激:
髪の毛ほどの細い鍼や、温かさを感じる程度のお灸を使用します。体力が低下している方でも安心してお受けいただけるよう、刺激の量には細心の注意を払います。 -
自己調整力の引き出し:
お身体を例えるなら、「滞った配管を優しく掃除し、本来の水の流れを取り戻す」ように、ご自身が持つ回復力を後押しします。 -
オーダーメイドの選穴:
その日の咳の状態や、食欲、脈の状態を拝見し、今のお身体に最も必要とされるツボを厳選して施術を行います。
大切にする三つの働き
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肺(はい):
外の空気からお身体を守る第一の防衛線です。この働きを補うことで、刺激に対して過敏になりすぎないお身体を目指し、痰を外へ送り出す力を整えます。 -
胃腸(脾):
東洋医学では、痰の元は胃腸で作られると考えます。消化の働きを健やかに保つことで、余分な粘液が体内に溜まりにくくなるよう働きかけます。 -
腎(じん):
深い呼吸を支える土台であり、生命力の源です。ここを整えることで、慢性的な疲れを和らげ、お身体の芯から体力を支えることが期待できます。

痰を溜めないための生活習慣と食養生:
お身体の内側から呼吸を支える工夫
鍼灸で巡りを整えるのと並行して、日々の食事や過ごし方を見直すことで、お身体の中に余分な粘液(痰)を溜めない環境を整えていきます。
控えめにしていただきたいもの
東洋医学では、胃腸に負担がかかると余分な水分が粘り気を持ち、呼吸器の負担になると考えます。
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甘いものや精製された砂糖:
お身体の状態を例えるなら、「さらさらとした水の流れをネバネバとした糊のように変えてしまう」要因となることがございます。 -
冷たい飲食物や生の果物:
胃腸を直接冷やすことは、お身体の水分を捌く力を弱めてしまいます。南国の果物や冷蔵庫から出したばかりの飲み物は控えめにされるのが望ましいです。 -
乳製品や脂っこい食事:
これらは粘膜の分泌を過剰にしたり、消化を妨げたりする場合があると考えられています。
大切にしていただきたい習慣
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お身体を温める食事:
温かいお粥やスープなど、胃腸を労わる和食中心の献立をお勧めします。内側から温めることで、痰の排出を助けるお身体の働きが整いやすくなります。 -
外からの冷えを防ぐ:
足元や首元を冷やさないよう工夫し、できるだけ湯船に浸かって芯から温まることが大切です。巡りが良くなることで、呼吸のしづらさが軽くなる場合がございます。 -
清潔な環境を保つ:
埃やカビなど、気道を刺激するものを避け、適度な加湿と換気を心がけてください。 -
穏やかな休息と運動:
睡眠時間を十分に確保し、体調の良い日には軽い散歩などで呼吸を深くすることを意識してみてください。無理のない範囲で動くことが、お身体の巡りを助けます。

東洋医学の視点による場所選びと、病院治療との安全な併用について
気管支拡張症のような慢性的で長期的な対応が必要な状態において、どのような基準でご自身の拠点を決めていくかは非常に大切です。お身体を全体として捉える視点と、現代医学の客観的な管理の双方を重んじることが望ましいと考えられます。
大切にしたい判断基準
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全身の状態を観察する:
痛みや咳といった局所の症状だけでなく、食欲、睡眠、冷えの状態など、お身体全体のバランスを丁寧に読み取り、個々の体質に合わせた調整を行う場所を選んでください。 -
長期的な計画がある:
その場限りの不快感の緩和ではなく、数ヶ月から年単位でお身体の土台がどのように変化していくかを見据えた、地道な関わりを大切にする環境が安心です。 -
養生を共に考える:
お身体を例えるなら、「日々のお手入れで建物の傷みを防ぎ、少しずつ風雨に強い土台に整えていく」ように、ご自身でできる生活の工夫を具体的に伝えてくれる場所が、長期的な支えとなります。
病院治療との付き合い方
西洋医学による検査や管理を続けながら、鍼灸で体調を整えることは、お身体の負担を和らげる上で一つの大きな助けとなることがございます。
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急な変化への対応:
発熱や著しい体調の変化が見られた場合は、まず主治医の先生にご相談ください。急性期の管理は西洋医学の重要な役割であり、安全を確保した上で東洋医学の手当てを重ねるのが適当です。 -
情報の共有:
定期的な検査結果をお聞かせいただくことで、お身体の内部で起きている変化をより客観的に把握でき、より細やかな施術方針を立てることが可能になります。 -
消耗の軽減を助ける:
お薬の使用が続く際、それによって感じる全身の倦怠感や胃腸の重さを、鍼灸によって和らげるアプローチが期待できる場合もございます。

施術費用と通院の目安:
お身体の土台を整えるための計画的な関わり
当院の施術は自由診療(保険外)となりますが、お身体の状態を細やかに拝見し、東洋医学の知見に基づいた最適な調整を行います。長期的な視点でお身体の負担を和らげることを目的としています。
今お困りの症状だけでなく、これまでの歩みや生活習慣を詳しくお伺いします。お身体のバランスを読み解き、今後の組み立てを丁寧にご説明いたします。
前回の施術後のお身体の変化を確認しながら、その日の状態に合わせた調整を行います。肺や胃腸の働きを助け、巡りを整えるための継続的なケアです。
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お身体を整え始める時期:
咳や痰による体力の消耗が目立つ際は、週に1〜2回程度を目安に、お身体の巡りを集中的に促していきます。まずは不快な状態を少しでも和らげることが目標となります。 -
状態が落ち着いてきた時期:
徐々にお身体の基礎体力が整ってきたら、週に1回程度の頻度で、良い状態を定着させていきます。新たな痰が溜まりにくい環境をお身体の内側から育む期間です。 -
健やかさを維持する時期:
日常の負担が軽くなってきた後は、2〜4週間に1回程度の定期的なメンテナンスをお勧めしています。季節の変わり目など、体調を崩しやすい時期の備えとしてご活用ください。
お身体のケアは「庭の手入れ」に似ており、最初は丁寧に雑草を取り除き、土を耕す時間が必要ですが、一度土壌が整えば、少ない手入れで健やかさを保てるようになります。
ご自身のペースを大切にしながら、焦らずにお身体と向き合っていきましょう。

ご予約・ご相談

院長プロフィール
中村 麻人(なかむら あさと)
札幌「東洋中村はり灸院」院長。
「森を見て木を治す」東洋医学の視点で、肩こり・腰痛をはじめ、生理痛・顔面神経麻痺・潰瘍性大腸炎・耳管開放症など、病院では原因不明とされる慢性疾患や、治療法が確立されていない症状を中心にはり治療を行っています。
