四十肩・五十肩の強張りに、
巡りを調え、潤いをもたらす働きかけ
肩が凍りついたように固まる状態を、東洋医学では「巡りの滞りと潤いの不足」が重なったものと考えます。
例えるなら、油切れを起こした機械の関節を、温めて潤していくように、お身体の内側から環境を整えていくことが大切です。
巡りを阻む要因を和らげ、深部へ潤いを届けることで、夜間の不快感や動かしにくさが少しずつ軽くなる場合があります。

目次
肩の不自由さが続く日々の中で、お身体の内側で何が起きているのか。東洋医学の視点から、巡りを調えて負担を和らげていく道筋を整理しました。

肩の状態と現れやすい変化:
強張りと動かしにくさについて
四十肩・五十肩は、肩を包む組織に負担が重なり、痛みとともに動かせる範囲が狭まっていく状態を指します。西洋医学では「肩関節周囲炎」と呼び、年齢に関わらず、肩の組織が硬くなることで不自由さを感じることがあります。
例えるなら、「寒さで固まった粘土」のように、本来は柔軟に動くはずの場所が、巡りの滞りによって弾力を失っている状態と言えます。
お身体に現れやすい三つの変化
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響くような痛み:
腕を動かした際に鋭い痛みを感じることがあります。特に夜間、お身体が静止している時に現れる痛みは、休息の妨げになる場合も少なくありません。 -
動かせる範囲の制限:
腕を上げる、背中に回すといった動作が以前より難しくなることがあります。着替えや家事など、日常の何気ない動きに負担を感じやすくなります。 -
重だるさや違和感:
肩だけでなく、腕や背中にかけて重い感覚や、こわばりを感じる場合があります。
この状態は、炎症が強い時期から、徐々に強張りが目立つ時期へと移り変わります。全体の経過には数ヶ月から、時には一年以上の歳月を要することもありますが、お身体の巡りを整えていくことで、その負担が軽くなる場合があります。

お身体が辿る経過:
三つの時期と鍼灸が寄り添えること
1. 痛みが際立つ時期
発症からしばらくの間、肩の内側で負担が強く現れる時期です。
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お身体の様子:
鋭い痛みを感じやすく、夜間に目が覚めてしまうこともあります。 -
東洋医学の働きかけ:
局所の巡りを和らげ、お身体を休めやすい状態に調えることで、不快感の緩和をサポートします。
2. 強張りが目立つ時期
鋭い痛みが落ち着く一方で、肩の周囲が固まったように感じられる時期です。
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お身体の様子:
鈍い重さが続き、腕が上がりにくいなど、日常の動作に制限を感じやすくなります。 -
東洋医学の働きかけ:
全身の巡りを促し、組織に潤いを届けることで、固まった場所が本来の柔軟性を取り戻すための土台作りを行います。
3. 落ち着きに向かう時期
少しずつ動かせる範囲が広がり、お身体が以前の感覚を思い出し始める時期です。
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お身体の様子:
日常生活での負担が徐々に軽減されていきます。ただし、天候などにより一時的に揺らぎが出ることもあります。 -
東洋医学の働きかけ:
巡りを安定させ、お身体の芯を調えることで、再び負担が重ならないような状態を保つお手伝いをします。
例えるなら、「季節の巡りを静かに待つ」ように、それぞれの時期に合わせた適切な働きかけを続けることで、お身体の負担が軽くなる場合があります。

日々のケアと、根本的な巡りの見直しについて
肩に不自由さを感じるとき、多くの場合、痛みを和らげるための処置が行われます。これらはお身体の過剰な反応を抑えるために、大切な役割を担っています。
対症療法と、その先にある働きかけ
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今の負担を和らげる処置:
湿布や内服薬などは、今起きている痛みの波を穏やかにする助けとなります。まずは休息が取れる状態を目指す際に有効です。 -
お身体の「根っこ」を見つめる:
痛みそのものを抑えるだけでなく、「なぜ回復に時間がかかっているのか」という背景にも目を向ける必要があります。東洋医学では、お身体全体の巡りや、蓄えられたエネルギーの過不足を確認していきます。 -
滞りの連鎖を解く:
痛みのために動かせない時間が続くと、周囲の巡りはさらに滞りやすくなります。お薬と併用しながら、内側から巡りを促すことで、こうした連鎖を和らげられる場合があります。
例えるなら、「流れが止まって冷え固まった川の水を、少しずつ温めて動かしていく」ように、お身体の巡りを整えていくことが大切です。

東洋医学の考え方:
巡りが滞ることで現れる重なりを和らげる
東洋医学では、お身体の各所へ必要なものがスムーズに届いている状態を「健康」と考えます。四十肩・五十肩のように、肩が強張って動かしにくくなる状態については、主に以下の視点からお身体を捉えていきます。
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巡りの滞りと不快感:
「通じざれば則ち痛む」という言葉があります。これは、巡りが滞った場所に負担が集中しやすいことを示しています。肩の周囲で巡りがスムーズに行かなくなることで、ズキズキとした不快感や重だるさが現れる場合があります。 -
お身体を支える三つの要素:
活力の源、栄養を運ぶ流れ、お身体を潤す水分。これら三つのバランスが崩れると、関節の柔軟性が失われやすくなります。特に潤いや栄養が肩の隅々まで届きにくくなると、組織が硬く強張る原因となることがあります。 -
全身をつなぐネットワーク:
お身体には、内臓の働きと体表を結ぶ独自の通り道があると考えられています。肩の不自由さであっても、肩そのものだけを見るのではなく、全身のつながりを確認しながら、滞っている場所を優しく整えていきます。
例えるなら、「水の流れが悪くなり、一部に泥が溜まってしまった水路を、丁寧に掃除して流れを戻していく」ような働きかけを大切にしています。
鍼灸によるアプローチは、無理に痛みを抑え込むのではなく、お身体が本来持っている調和を保とうとする働きを、静かに支えていくことを目的としています。

東洋医学から見た原因:
お身体の内側の要因と巡りの滞り
肩が強張る背景には、お身体を巡るエネルギーや栄養が、必要な場所へ十分に行き届かなくなっている状態があると考えられます。これには、日々の生活習慣や心身の疲労が重なり合っている場合があります。
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巡りの力の低下:
冷えや気圧の変化、あるいは長引く緊張によって巡る力が弱まると、肩の周囲に滞りが生じやすくなります。この滞りが、動かした時の不快感や重い感覚として現れることがあります。 -
お身体を支える機能の揺らぎ:
筋肉や腱の柔軟性を保つ働きや、お身体を修復する土台となる機能が、疲労の蓄積によって揺らぎを見せることがあります。そうなると、肩の周囲に生じた負担がなかなか和らがず、長引く要因となる場合があります。 -
緊張の蓄積による影響:
同じ姿勢を続けることや、自律神経の緊張が続くことで、背中や肩甲骨周りの通り道が硬く強張ることがあります。これにより、肩へ届くはずの巡りがせき止められ、不自由さが定着してしまうことがあります。
例えるなら、「長年使い続けた機械の油が切れ、動きがぎこちなくなっている」ような状態と言えるかもしれません。
鍼灸による施術は、こうした「巡りの滞り」と「土台となる力の揺らぎ」の両方を見つめ直し、お身体が本来持っている落ち着きを取り戻すお手伝いをしていくものです。

鍼灸の進め方:
全身の巡りを調え、肩の強張りに寄り添う
鍼灸の施術では、肩の周囲だけでなく、お身体全体の巡りを促すことで、不自由さを感じている場所へ負担が集中しないような環境作りを目指します。
大切にしている方針
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全体を調える:
痛みのある場所だけを刺激するのではなく、全身の「通り道」を整えることで、お身体が本来持っている落ち着きを取り戻す力を支えます。 -
巡りの再構築:
滞りを感じる場所へ必要な巡りが届くよう促します。これにより、強張っていた組織の柔軟性が、少しずつ戻りやすくなる場合があります。 -
休息を助ける:
夜間の不快感や緊張を和らげることで、お身体が深く休める時間を確保できるようお手伝いします。
例えるなら、「日照りで硬くなった土に、ゆっくりと水を浸透させて柔らかくしていく」ようなイメージで、丁寧に進めていきます。
施術の特徴
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お身体に合わせたツボの選択:
肩の巡りを促すツボ、自律神経を調えるツボなど、その時の状態や体質に合わせて選んでいきます。 -
穏やかな刺激:
細い鍼や、心地よい温かさのお灸を用います。強い刺激でお身体を驚かせるのではなく、安心感のある施術を心がけています。 -
変化の現れかた:
夜に眠りやすくなったり、動かせる範囲が少しずつ広がったりと、お身体に穏やかな変化が出ることがあります。

全身の巡りを見直すことで訪れる、お身体の変化について
肩の不自由さを和らげるために、お身体を支える土台となる機能を整えていくと、他の場所で感じていた重なりも、副次的に軽くなる場合があります。
同時に感じられることがあるお身体の変化
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休息の質と頭の重さ:
お身体全体の緊張が和らぐことで、夜に深く休めるようになったり、目や頭の重だるさが静かに落ち着いたりすることがあります。 -
お身体のバリア:
巡りが調うことで、季節の変わり目の影響を受けにくくなったり、喉や鼻の不自由さが和らいだりするなど、外部の変化に対するお身体の対応が穏やかになる場合があります。 -
めぐりと温度:
手足の先までの巡りが促されることで、冷えを感じにくくなったり、体温の調節がスムーズに行われるようになったりすることがあります。 -
お腹の調子や女性特有の波:
栄養を運ぶ力が整うことで、お腹の重なりが取れたり、周期に伴うお身体の不自由さが穏やかになったりする場合もあります。
例えるなら、「庭の中心にある池の濁りが取れると、そこから繋がる小川の隅々まで透明な水が届くようになる」ように、一箇所の調整が全体へ波及していくことがあります。
鍼灸によるアプローチは、部分的な故障を補修するだけでなく、お身体全体の均衡を保ち、健やかな日々を支えていくことを大切にしています。

お身体の変化の目安:
夜の休息と動きの重なりについて
肩の強張りに対し、鍼灸で全身の巡りを促していくと、お身体が本来持っている回復しようとする働きが穏やかに整い、不自由な期間を過ごす際の負担が軽くなる場合があります。
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緩やかな実感:
数回の施術を重ねる中で、不快感の現れる頻度や、動かした際の重だるさに何らかの変化を感じられることがあります。特に、夜に目が覚めてしまうような負担が、比較的早い段階で穏やかになる例もあります。 -
お身体の土台を整える:
単に時が過ぎるのを待つだけでなく、全身の巡りや蓄えられた力を整えることで、お身体が本来の落ち着きを取り戻すまでの道のりを、静かに支えていきます。 -
動きのゆとり:
強張っていた場所の緊張が和らぐことで、お身体に少しずつ柔軟性が戻り、日常生活での動作やリハビリの際の負担が軽減されることが期待されます。
例えるなら、「固まった雪が、内側から伝わる穏やかな熱によって、少しずつ解けて緩んでいく」ように、お身体の強張りが和らいでいくことを大切にしています。

費用と通院の考え方:
お身体の状態に合わせた計画的な歩み
肩の不自由さに向き合う際、当院ではお身体全体の巡りを調えることで、不快感が長引かないような環境作りを大切にしています。
今のお身体の状態を詳しく伺い、巡りの滞りや土台の揺らぎを確認した上で、今後の進め方を一緒に考えてまいります。
前回の後の変化に合わせ、お身体の巡りを繰り返し調えていきます。負担が少しずつ軽くなるよう、丁寧に進めてまいります。
通院の目安
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負担が重い時期:
お身体の緊張が強く、夜間の休息が取りにくい時期は、週に2回ほどの間隔で巡りを集中的に整えることが、負担を和らげる一助となる場合があります。 -
強張りが続く時期:
動きの不自由さが主な時期は、週に1回ほどのペースでお身体の柔軟性を支え、無理のない範囲で日常の動作がしやすくなるよう促します。 -
落ち着きが見え始めた時期:
状態が安定してきたら、2〜3週間に1回ほどの間隔で、お身体全体のバランスを保つための調整を行っていきます。
例えるなら、「一度止まってしまった水車の動きを、ゆっくりと、しかし着実に回し始めていく」ような過程が必要です。
無理のない範囲で継続することが、お身体の変化を定着させることにつながります。ご自身の生活環境に合わせた計画を検討していきましょう。

ご予約・ご相談
院長プロフィール
中村 麻人(なかむら あさと)
札幌「東洋中村はり灸院」院長。
「森を見て木を治す」東洋医学の視点で、肩こり、腰痛をはじめ、生理痛・顔面神経麻痺・潰瘍性大腸炎・耳管開放症など、原因不明・治療法が限られる慢性疾患を中心にはり治療を行っています。
