肋間神経痛は、背骨から肋骨の間に沿って走る肋間神経が何らかの刺激や損傷を受けることによって起こる痛みです。病名というより、「症状」を指す言葉です。

この痛みの最も大きな特徴は、左右どちらか片側の肋骨に沿って、線状（ベルト状）または一点に近い範囲で集中して出現することです。

主な痛みの性質（上半身に走る電撃）

• 電撃痛： 「ビビッと電気が走る」「電流が走る」ような鋭い、瞬間的な痛みが特徴です。 例えるなら、服の中の電線（神経）がショートしたように、ふとした拍子に激痛が走ります。
• 持続的な痛み： 電撃痛だけでなく、ジリジリ、チクチク、ヒリヒリ、ジクジクといった皮膚表面の異常な感覚や、鋭い痛みが持続することもあります。
• 増悪因子： 上半身のねじる、曲げる、伸ばすといった動作や、咳・くしゃみ、深呼吸などで胸郭が動くと痛みが増悪します。時には息が止まるほど強く痛むこともあります。

主な対症療法と課題

• 薬物療法： 痛みを一時的に緩和する痛み止め（NSAIDs）、神経の興奮を鎮める目的で用いられる抗不安薬、抗うつ薬（神経障害性疼痛への適用）、末梢神経の回復を促す目的のビタミン剤、湿布などが使用されます。
• ブロック注射： 痛みの原因となっている神経の周辺に局所麻酔薬やステロイドを注入し、神経の興奮を遮断するペインクリニックでの治療です。
• 対症療法の限界： これらの治療は、痛みの信号を一時的に遮断することが目的であり、神経という「電線に流れる電気を一時的に止める」ことはできても、「なぜ電線がショートしたのか」という根本的な原因（自律神経の過緊張、血流の滞りなど）を治すことにはつながりにくいという課題があります。
• 長期使用のリスク： 効果は一時的であり、特に鎮痛薬や神経の興奮を鎮める薬の長期使用は、依存性や副作用（眠気、倦怠感、胃腸障害など）のリスクに配慮が必要です。

動くたびに走る痛みを緩和するおすすめのツボ

• 三焦兪（さんしょうゆ）： ウエストの最細部ラインの少し上（へその真裏から指2本分上）、中心から外側へ指3本分（背中側）。まずここを緩めて全身の循環（三焦）を促し、ストレスによる背中の緊張を解きます。
• 郄門（げきもん）： 手首のシワから肘に向かって指5本分のところ（前腕の内側）。胸のつかえや緊張をゆるめ、自律神経のバランス調整にも使われる心臓を保護するツボです。
• 内関（ないかん）： 手首のシワから肘に向かって指3本分のところ。ストレス、胸のつかえ、吐き気に。自律神経を安定させる代表的なツボです。
• 足三里（あしさんり）： 膝の皿の下から指4本分外側。全身の機能（脾胃）を底上げし、痛みに耐える体力をつけるために使われる、万能のツボです。

※ セルフ押圧は、「痛気持ちいい」と感じる強さで30〜60秒を数回繰り返してください。痛みが強い時は無理をしないで温める程度に留めるか、専門家にご相談ください。

ツボ押しは、「ショートしている電線（神経）の過剰な電気を逃がすアース」のような役割を果たします。

痛みを増やさないための二大原則

• 体を徹底的に温めること（保温）： 冷えは血管を収縮させ、神経を過敏にします。湯船にゆっくり浸かる、薄着を避ける、痛む部位を腹巻やカイロで温めることを徹底します。エアコンや扇風機の直風は、神経を刺激するため必ず避けてください。
• 冷たい飲食を控えること（内臓の保温）： 冷たい飲み物やデザート、生もの（刺身、冷製サラダなど）は、内臓（特に脾）の働きを弱め、全身の血流を停滞させます。常温または温かいものを摂るように心がけましょう。
• 「ねじる・伸ばす」動作を避ける： 発作が起こりやすい上半身の急激な動作（振り返る、高いものを取る、咳・くしゃみを我慢する）は避けます。痛みが強い間は、痛む部分を「絶対安静」にするように意識しましょう。

回復力を底上げする生活養生

• 良質な睡眠と休息： 疲労とストレスは肋間神経痛の最大の敵です。夜11時までには寝床に入り、十分な睡眠と休息で自律神経を休ませ、体の回復力（自然治癒力）を底上げしましょう。
• 食事の見直し： 東洋医学の教えに基づき、温かい和食中心に切り替え、塩分・甘味・刺激物を控えめにします。
• 無理のない運動： 痛みが落ち着いている時期に、ストレッチや軽い散歩など、無理のない範囲で体を動かすことで、気の巡りと血流を改善します。