瞳の乾きと向き合うために:
巡りを見直し、潤いを支える
点眼による補充を行っても乾きを感じる場合、東洋医学では目を養う「血(けつ)」の巡りや蓄えに着目します。
お身体の働きを整えることで、内側から瞳を支える力が維持されやすくなる場合があります。
日常の中で感じる負担を、全身のバランスを整えることで和らげていく道筋を共有します。

目次
瞳の乾きに対し、お身体全体の「潤いを支える力」や「巡り」の観点から、負担を和らげるための道筋を整理しました。

瞳の乾きの様相(ドライアイ):
お身体が発する微細なサインの重なり
ドライアイの一般的な状態
ドライアイは、瞳を保護する涙の供給が不安定になり、お身体の表面が外気や刺激に直接触れやすくなっている状態を指します。
これは、単なる水分の不足だけでなく、お身体の持つ「潤いを保持する力」の揺らぎが関わっている場合があります。
- 瞳の違和感: 乾きに伴う重さや、何かが入っているような感覚が続くことがあります。
- 視覚への影響: 涙の状態が不安定になることで、視界の鮮明さが損なわれたり、ピントの調整に時間がかかったりする場合が生じます。
- 刺激への反応: 保護する力が低下するため、光の眩しさや風などの外部刺激に対して敏感に反応しやすくなります。
お身体の傾向と東洋医学の関わり
瞳の乾きは、日々の生活習慣や全身の疲労度と密接に関連しており、以下のような傾向が見受けられます。
- 生活環境の影響: 長時間の近業作業や、デジタル機器の使用、空調による環境の変化などが、お身体の調整機能に負担をかけていることが少なくありません。
- 状態の揺らぎ: 「乾き」と「涙もろさ」が交互に現れるような不安定さは、お身体の巡りや、休息を司る機能の乱れが反映されている場合があります。
- 全身への波及: 瞳の負担が長引くことで、首や肩の緊張、頭の重さといった全身の反応として現れることもあります。

状態の背景と生活要因について:
瞳を保護する力の揺らぎと、現代的な負担
潤いを保つ仕組みの不安定化
瞳の表面は、涙による薄い層で守られています。この層は油分や水分などが重なり合うことで安定を保っていますが、何らかの理由でこのバランスが揺らぐことがあります。
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保持する力の低下:
涙の質や供給が不安定になると、表面の潤いが維持されにくくなり、かすみやぼやけといった視覚の違和感に繋がることがあります。 -
瞬きの減少による影響:
何かに集中している時間は、無意識のうちに瞬きの回数が減る傾向があります。これにより瞳の表面が外気に触れる時間が長くなり、乾きを感じやすくなります。 -
質の変化:
涙に含まれる成分のバランスが変化することで、供給されてもすぐに蒸発してしまうような状態が起こる場合があります。
お身体を取り巻く生活環境
瞳の乾きは、現代特有の生活習慣やお身体全体の緊張状態と深く関わっていることが少なくありません。
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継続的な視覚負担:
デジタル機器の使用や長時間の運転など、特定の距離を注視し続けることは、目だけでなくお身体全体にも緊張をもたらします。 -
周囲の環境要因:
空調による空気の乾燥や、コンタクトレンズの使用など、物理的な刺激が瞳を保護する働きに負担をかけている場合があります。 -
全身の緊張と休息の質:
睡眠の不足や、日々の積み重なる負担は、お身体を休ませる働きを損ない、潤いを届ける巡りを滞らせる一因となることがあります。 -
東洋医学の捉え方:
これらの要因がお身体全体の「蓄え」を消耗させ、末端である瞳まで栄養や潤いが十分に届きにくい状態を作っていると考えられます。

視点の違いについて:
瞳を直接支えるアプローチと、身体の巡りを整えるアプローチ
瞳の乾きは一部分に現れる悩みですが、その背景にはお身体全体の緊張や巡り、蓄えの状態が関わっている場合があります。
局所を見つめる視点
(主に西洋医学的な対応)
瞳の表面で起きている「水分の不足」や「質の不安定さ」に着目し、現在の不快感を速やかに和らげることを目的とした働きかけが行われます。
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主な働きかけ:
点眼薬による水分の補充、保護成分の補給、あるいは涙の通り道を調整することで、瞳の表面を物理的に守ります。 -
役割について:
現在の乾きや痛みから瞳を守り、炎症を抑えるために非常に重要な役割を担います。一方で、お身体が本来持っている「涙を生み出す力」そのものを高めることとは、また別の領域の対応となります。 -
関わり方:
不足している潤いを外部から届けることで、瞳の負担を一時的に軽減する支えとなります。
全身を見つめる視点
(主に東洋医学的な対応)
瞳の乾きをお身体全体の「巡りの滞り」や「蓄えの消耗」として捉え、潤いを瞳まで届けるための土台を整えることを目的とします。
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主な働きかけ:
全身の巡りを司る「肝」や、蓄えを司る「腎」などの働きを観察し、鍼灸などを通じてお身体の内側のバランスを整えます。 -
役割について:
瞳を養う「血(けつ)」の巡りを促し、お身体が本来備えている潤いを保持する働きを支えることで、負担が軽くなる状態を目指します。 -
関わり方:
潤いを生成し、隅々まで届けるお身体の機能そのものに働きかけ、違和感が繰り返されにくい状態へと緩やかに導くお手伝いをします。

東洋医学的視点:
巡りと蓄えで瞳を養い、潤いの土台を整える
東洋医学では、瞳の乾きを一部分の問題としてだけでなく、お身体全体の「潤いを蓄える力」や「巡りを司る機能」の揺らぎとして捉えます。 健やかな瞳を支えるためには、これらを整えていくことが大切だと考えています。
瞳の潤いに関わるお身体の働き
- 巡りと緊張を司る働き: 東洋医学において、瞳は「肝(かん)」という機能と深い関わりがあります。この働きが乱れるとお身体に余分な緊張が生まれ、潤いを届ける巡りが妨げられることがあります。
- 瞳を養う栄養(血)の蓄え: 瞳の潤いは、お身体に蓄えられた栄養である「血(けつ)」によって支えられています。日々の消耗によってこの蓄えが少なくなると、瞳まで潤いが行き渡りにくくなる場合があります。
- 潤い(水)のバランス: お身体全体の水分の巡りが滞ることで、必要な場所に潤いが届かなかったり、あるいは特定の場所に偏ったりすることが、違和感の一因となることがあります。
お身体全体のバランスを整えることは、瞳の違和感だけでなく、それに付随して現れる緊張や疲労感を和らげることにも繋がります。
目薬などによる外部からの保護に加え、お身体の内側から「潤いを隅々まで届ける力」を整えることで、負担が重なりにくい状態を緩やかに目指します。

鍼灸による働きかけ:
巡りを調え、潤いを保つお身体の力を支える
瞳の違和感への対応では、一部分の緊張を和らげるのと同時に、全身の潤いを生成し保持するお身体の機能を整えていくことを大切にしています。
施術の方針
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全身のバランス調整:
瞳を養う「血(けつ)」の蓄えを司る働きや、潤いの巡りを助ける機能を重視し、お身体全体の調和を整えます。 -
手足や背中の反応点(ツボ)の活用:
瞳の周囲だけでなく、全身に点在する反応点を選びます。これは、一部分に働きかけるだけでなく、お身体という大きな巡り全体を活性化させるためです。 -
緊張の緩和:
日々の作業やストレスによって高まった全身の緊張を解き、潤いを瞳まで届ける通り道を整えるお手伝いをします。
施術の内容と経過
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細やかな刺激:
非常に細い鍼(使い捨て)や、お身体を優しく温めるお灸を使用します。刺激は穏やかであることを心がけており、リラックスした状態で受けていただけます。 -
緩やかな変化:
乾きや不快感の頻度が和らぐ場合や、瞳の潤いが維持されやすくなるような変化が出ることがあります。 -
全身への良い波及:
瞳の負担が軽くなるのと並行して、肩の緊張や頭の重さ、また女性特有のゆらぎといった、関連するお身体の不調が穏やかになる場合もあります。

ツボの活用と養生について:
瞳の熱を鎮め、潤いを支える日常の工夫
施術と並行して、ご自身でもお身体の緊張を解く習慣を持つことで、潤いを生み出すための土台が整いやすくなります。
施術で用いることのある主なツボ
(全身のバランスを整える)
瞳の乾きに対しては、直接的な場所だけでなく、巡りの源流となるようなツボを選んで刺激を加えることがあります。
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頭頂部のツボ(百会):
全身の巡りを調和させ、高ぶった神経を鎮めることで、瞳周辺にこもった余分な熱を和らげる働きを助けます。 -
足元のツボ(足臨泣など):
頭部に偏った巡りを下へ引き下げ、全身の緊張を緩和させることで、瞳の血流を支える一助となります。 -
首の後ろのツボ(風池):
頭部や瞳の周囲の強ばりを解き、滞っている巡りをスムーズにするために用いられます。
ご自宅での養生・セルフケア例
(日々の中での瞳の休息)
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こめかみ付近の優しい圧迫:
指の腹を使い、円を描くように優しく触れます。お顔全体の緊張が緩むことで、瞳を養う働きがスムーズになる場合があります。 -
首と肩の温め:
首筋を温めることは自律神経の安定に繋がり、涙が分泌されやすい環境づくりをサポートします。 -
瞳を温める習慣:
温かいタオルなどで瞳を覆うと、周辺の巡りが促されます。これにより涙の質に関わる成分が出やすくなり、乾きの負担が軽くなることが期待できます。

経過の目安について:
瞳の巡りを調え、負担の少ない状態へ導くための歩み
瞳を潤し保持するお身体の機能を調えるには、一定の時間をかけて巡りの土台を積み上げていくことが大切です。変化の現れ方は、お身体の状態や生活環境によって緩やかであることが一般的です。
通院のペースと変化の現れ方の一例
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初期の段階:
週に1回程度を目安に、お身体の緊張を解く施術を重ねます。4〜5回ほど経過した頃に、瞳の奥の強ばりや、夕方の不快感が以前より穏やかになったと感じられる場合があります。 -
安定への道のり:
お身体全体の蓄えや巡りの質を調えるには、3〜4か月程度の継続的な取り組みが目安となります。お身体のバランスが安定するにつれ、瞳の乾きやすさに対する負担が軽くなっていくことが期待できます。 -
目指す状態:
瞳の潤いが維持されやすくなり、日常生活での違和感に意識が向きにくくなるような、お身体の内側からの落ち着きを目指します。
お身体を調える過程は、季節の移ろいのように緩やかです。焦らず、一歩ずつ瞳を労わる時間を大切にしていただければ幸いです。

日常の養生:
瞳を労わり、お身体の内側から潤いを守るためのヒント
瞳の違和感とお付き合いしていく上で、日々の過ごし方を少しずつ調えることは、お身体の巡りを助ける大切な土台となります。
瞳の休息と健やかさを支える習慣
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瞳を休める時間の確保:
長時間の画面作業では、こまめに遠くを眺めて目の緊張を緩める時間を作ります。また、意識的に瞬きを増やすことで、瞳の表面が乾燥しにくい環境を整えることができます。 -
周囲の環境調整:
風が直接当たらないよう工夫したり、湿度を適度に保つことは、瞳の潤い成分が失われるのを防ぐ助けとなります。 -
お身体の回復を優先する睡眠:
東洋医学では、夜の休息は「巡りの源」を養う時間と考えられています。就寝前にスマートフォンの使用を控えることは、瞳だけでなく全身の緊張を和らげることにも繋がります。 -
足元を温める習慣:
下半身を温めることは、頭部に偏りやすい熱や巡りを分散させ、全身のバランスを整える一助となります。 -
飲食への配慮:
冷たい飲食物や極端に甘いものは、お身体の水分代謝に影響を与えることがあります。温かいものを中心に、適度な摂取を心がけることで、内側からの巡りを支えることになります。
これらの小さな積み重ねは、瞳を養うための穏やかな準備のようなものです。日々の生活の中で、ご自身を労わるきっかけとしてお役立てください。

施術料と、変化を支えるための
通院ペースについて
瞳の違和感に対する鍼灸は、お身体の内側から巡りを整えるアプローチです。自由診療(保険外)となりますが、日々のお身体の負担を少しずつ和らげ、維持していくことを目的としています。
今のお身体の状態を東洋医学の視点から詳しく伺い、巡りを滞らせている要因を見極めながら、お一人おひとりに合わせた施術を組み立てます。
初回の方針に基づき、全身のバランスを継続して調えます。瞳を養う「血」や「巡り」の質を安定させ、負担が軽くなる状態を支えていきます。
お身体の状態に合わせた通院の目安
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穏やかな変化を促す時期:
強い乾きや違和感があるうちは、週に1回程度を目安に施術を重ねます。まずは瞳周辺の緊張を緩め、巡りの土台を整えることに注力します。 -
状態を安定させる時期:
違和感を感じる頻度が和らいできた後は、1〜2週間に1回程度のペースで、お身体の調子を見守りながら変化を定着させていきます。 -
健やかさを維持する時期:
日常生活での負担が気にならなくなってきたら、月に1回程度のメンテナンスをお勧めしています。再度の不調を防ぎ、全身の健やかさを保つお手伝いをします。
お身体の状態や、お仕事などの生活環境によって、望ましいペースは異なります。無理な通院を強いることはありませんので、診察時に相談しながら、一歩ずつ進めていきましょう。

ご予約・ご相談
院長プロフィール
中村 麻人(なかむら あさと)
札幌「東洋中村はり灸院」院長。
「森を見て木を治す」視点で、乾き・眩しさ・かすみと全身のゆらぎを同時にケア。潤いのめぐりを整えます。
