アトピー性皮膚炎に対する、
身体の内側からのアプローチ
東洋医学では、皮膚の状態は体内の環境を映し出すものと考えられています。
皮膚の赤みやかゆみを、身体全体のバランスの乱れとして捉え、整えていく方法があります。
鍼灸や養生によって、皮膚を守る力や、体内の滞りを促す力を助けることで、肌の乾燥や炎症が和らぐ場合があります。
西洋医学による適切な処置を続けながら、身体への負担を軽減する一つの方策として、東洋医学の知恵をお役立ていただければ幸いです。


東洋医学から見た、肌の不調の捉え方
アトピー性皮膚炎は、慢性の炎症やかゆみを伴う状態が続くものです。
東洋医学では、身体を外敵から守るバリアのような機能と、内側に生じる熱や湿気の均衡に着目いたします。
例えば、換気が十分でない部屋に熱気がこもっている状態を想像してみてください。この逃げ場のない熱が、肌の赤みやかゆみとして現れていると考えることがあります。
現在の状態と身体への負担
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肌の変化とかゆみ:
炎症が長く続くことで、肌が乾燥しやすくなったり、色が濃くなったりする場合があります。これは東洋医学において、潤いを補う力が弱まり、身体に熱が停滞している状態と捉えられます。 -
生活への影響:
強いかゆみは、眠りの質に影響を及ぼしたり、日中の集中力を削いだりすることがあります。緊張状態が続くことで、精神的な疲れを感じやすくなる場合も少なくありません。
西洋医学の役割と、併用という選択肢
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現在の標準的な対応:
西洋医学では、お薬や保湿剤を用いて皮膚の炎症を速やかに抑えることや、バリア機能を補うことを優先します。これは、今の苦痛を和らげるために非常に大切なことです。 -
東洋医学が検討すること:
鍼灸や養生は、身体の巡りを整え、過剰な熱を外へ逃がしやすい体質へ導くことを目的としています。 -
期待される変化:
標準的な治療を大切にしながら、身体の内側の環境を整えていくことで、症状が落ち着く時間が長くなったり、お薬の使用による負担が軽くなったりする場合があります。
大切なのは、今ある炎症を適切に抑えつつ、身体が本来持っている「健やかさを維持する力」を少しずつ助けていくことだと考えています。

東洋医学的な視点:
身体の内側を整え、皮膚の負担を軽減する
東洋医学では、皮膚に現れる変化を、内臓の働きや全身の巡りの偏りを示すものとして捉えます。
特定の部位だけでなく、身体全体がどのようにバランスを保とうとしているのかを観察することが大切です。
「肺」の働き
(皮膚のバリアと呼吸)
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皮膚との密接な関わり:
東洋医学において「肺」は皮膚の潤いや開閉を調節する役割を持つと考えられています。鼻や気管支とも深い関わりがあるため、これらを併せて整えていく視点を持ちます。
「肝・腎」の働き
(巡りと代謝の調節)
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不要なものを出す力:
身体の代謝を助ける「肝」や「腎」の働きが滞ると、本来別のルートで処理されるべき熱などが、皮膚へ影響を及ぼす一因となる場合があります。
「脾」の働き
(消化と潤いの生成)
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食事と皮膚の関係:
消化器系である「脾」が弱まると、体内に余分な水分や熱がこもりやすくなります。これらが皮膚の赤みや、じくじくとした状態に繋がることがあります。
巡りの視点:気・血・水
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滞りの緩和:
慢性的な炎症がある場所では、エネルギーや血液の巡りがスムーズでないと考えられます。この滞りを緩やかに解いていくことで、強いかゆみが和らぐ場合があります。 -
肌質の変化への対応:
肌の乾燥などは、血液の巡りや栄養の不足が関係していることがあります。鍼灸によってこれらを整えることで、肌の修復を助ける環境を整えます。
皮膚を通じた身体との対話
皮膚は、身体の内側の状態を外部に伝える「出口」のひとつのような役割を果たしていると考えることができます。
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調和を目指す:
便や尿、汗といった他の排泄ルートを整え、内側の過剰な熱を適切に逃がすことで、皮膚だけに掛かっていた負担が軽くなる場合があります。

鍼灸を通じた体質への働きかけ
鍼灸施術では、皮膚表面のケアに加えて、身体の内側にこもった熱や湿気を適切に調整することを目指します。
身体が本来持っているバランスを取り戻すお手伝いをすることで、肌の状態にも変化が現れることがあります。
身体の状態を観察し、整える
鍼灸は、身体という庭の土壌を整える作業に似ています。
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個々の状態に合わせた選択:
脈やお腹の弾力、お顔の色などを拝見し、その時々の身体のバランスを確認します。どこに巡りの滞りがあるかを探り、お一人おひとりに合わせた場所(ツボ)を選びます。 -
負担の少ない刺激:
使用するのは、髪の毛ほどの細さの使い捨ての鍼と、温かさを感じる程度の柔らかなお灸です。皮膚が敏感な時期であることを考慮し、過度な刺激にならないよう、慎重に触れていきます。
継続的な変化の目安
肌の細胞がゆっくりと入れ替わっていく過程に合わせ、段階的に進めていきます。
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時間をかけた変化:
体質に関わる部分は、数ヶ月という単位でゆっくりと変化していく場合が多いです。まずは現在の強い不快感が和らぐことを目指し、その後に肌のバリア機能を助ける段階へと進みます。 -
併用の大切さ:
西洋医学によるこれまでの治療を大切にしながら、無理のない範囲で並行していただくことができます。身体の内外両面から支えることで、回復を助ける環境が整いやすくなります。

日々の過ごし方と養生:
身体の内側にかかる負担を和らげる
鍼灸で身体のバランスを整えることと並行して、生活の中で身体への負担を少しずつ減らしていくことが大切です。
無理のない範囲で、内側の環境を穏やかに保つ工夫を取り入れてみてください。
食生活の工夫
身体の中に余分な熱や湿気がこもらないよう、消化器(脾胃)を労わることが、肌の落ち着きに繋がる場合があります。
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控えめを心がけたいもの:
砂糖の多いお菓子や油の強い食べ物などは、身体の中に熱を溜め込みやすい性質があります。これらを減らすことで、肌の赤みやかゆみが和らぐことがあります。 -
穏やかな食事:
温かく消化の良い食事を、よく噛んで腹八分目を意識してみてください。身体の「巡り」を助ける一助となります。
肌の保護と清潔
皮膚は、身体を外敵から守る大切な境界線です。その機能を傷つけないよう、優しく接することを意識します。
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優しく洗う:
洗浄力の強い石鹸を避け、肌に残った成分が刺激にならないよう、ぬるま湯で丁寧に流すことが大切です。 -
早めの保湿:
入浴後は、水分が蒸発する前に保湿剤で保護しましょう。肌のバリアを補うことで、外からの刺激による負担が軽くなる場合があります。
回復のための休息
炎症が続いている時の身体は、回復のために多くのエネルギーを必要としています。
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刺激を減らす時間を:
お休みの日などはメイクを控え、肌を休ませる時間を設けてみてください。衣類も天然素材を選ぶことで、物理的な刺激を軽減できる場合があります。
睡眠と心の安定
緊張状態が続くことは、東洋医学では身体に余分な熱を生む原因の一つと考えられています。
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休息のリズム:
できるだけ日が変わる前に休むことで、自律神経のバランスが整いやすくなります。深い呼吸を意識する時間を持つことも、神経の過敏さを鎮めるのに役立ちます。

医療機関での治療と鍼灸の関わり
アトピー性皮膚炎において、医療機関から処方されるお薬は、現在の強い炎症を速やかに抑えるために大切な役割を担っています。
鍼灸は、お薬の働きを尊重しながら、並行して身体の内側の調和を整えていく「土台作り」をお手伝いいたします。
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お薬との付き合い方:
強いかゆみや赤みがある時期は、医師の指示通りにお薬を使用し、炎症を落ち着かせることが優先されます。自己判断で急にお薬を中断することは、身体への大きな負担となる場合があるため、慎重な対応が必要です。 -
鍼灸が担う役割:
鍼灸施術によって、全身の巡りや内臓の働きを緩やかに整えます。身体全体のバランスが安定してくることで、結果としてお薬の使用量や頻度について、主治医の先生と相談できる環境が整いやすくなる場合があります。 -
目指していく状態:
過度な炎症が起きにくい身体の土台を築き、季節や環境の変化に左右されにくい、穏やかな肌の状態を維持できるよう進めていきます。

施術料について
当院では、お一人おひとりの状態を丁寧に拝見し、その時々に合わせた最適な調整を行うため、お時間を十分に確保して施術にあたっております。
※自由診療となりますので、健康保険は適用されません。お薬や他の療法を大切にしながら、ご自身のペースで身体を整える一助としてご活用ください。

担当する鍼灸師について
中村 麻人(なかむら あさと)
東洋医学の視点に基づき、身体を一つの繋がった環境として捉えることを大切にしています。
日々の生活の中で生じる不調から、長期に向き合う皮膚の悩みまで、お一人おひとりの歩みに合わせた施術を心がけております。
「今、身体で何が起こっているのか」を共に確認しながら、負担を和らげていく道筋を探してまいります。
