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ドライアイの概要と主症状:目の「保湿バリア」の崩壊と現代的な疲労

ドライアイの病態と主症状

ドライアイ(乾燥性角結膜炎)は、目を保護する涙の量または質が不安定になり、角膜・結膜(目の表面)の潤いが保てず、表面が傷つく状態です。 例えるなら、目の表面の「保湿バリア」が破綻し、常に乾燥や刺激に晒されている状態です。

  • 目の不快感: ゴロゴロ、ショボショボ、乾く痛みといった不快感が常態化します。
  • 視覚の異常: 涙の質が悪いため、かすみや視界のぼやけ、ピントの合いづらさが発生します。
  • 過敏症状: 目の表面が傷つくことで、光過敏や眩しさを感じやすくなります。
  • その他のサイン: 眼精疲労、理由のない涙(反射的な涙)、白っぽい目ヤニなど。

患者層の傾向と東洋医学の関連

ドライアイは、現代の生活習慣と密接に関連しており、特に以下の層で相談が増えています。

  • 患者層の増加: 20〜50代に多く、コンタクトレンズ装用者や長時間の画面作業(VTD)を行う方の増加とともに相談が増加しています。
  • 症状の変動性: 「乾く」「しみる」「涙が出る」を繰り返す揺らぎ型が多いのが特徴です。これは、自律神経(肝)や疲労(腎)といった全身のバランスによって症状が変動していることを示します。
  • 放置のリスク: ドライアイを放置すると、視機能に負担がかかるだけでなく、頭痛や肩こりといった全身症状を引き起こす原因にもなります。

東洋医学では、この「涙の質と量」の不安定さを、血(けつ)の不足や自律神経(肝)の乱れと捉え、根本から改善を目指します。

ドライアイの症状の背景と生活要因:涙のバリア破綻と自律神経の過緊張

「かすむ・乾く」の仕組み(涙膜の不安定化)

ドライアイは、涙膜(るいまく)という目の表面を覆う薄い膜が不安定になることで起こります。涙膜は、油層(蒸発を防ぐ)、水層(潤い)、ムチン層(目を固定)の三層構造で成り立っています。

  • 涙膜の安定性低下: これらの層のバランスが崩れると、涙がすぐに蒸発したり、目の表面に留まれなくなったりし、像がにじみやすい、視界がぼやけるといった症状に繋がります。
  • 瞬目(まばたき)不足: 集中して画面を見ていると瞬目の回数が大幅に減り、涙の供給と膜の再形成が滞り、目の表面が乾燥しやすくなります。
  • 涙の質の乱れ: ムチン層や油層(マイボーム腺)の乱れが、涙の質の不安定さ(蒸発の速さ)を引き起こします。
  • 目の「ワックス(油層)」が剥がれ、保湿剤(水層)がすぐに蒸発してしまう状態です。

発症に繋がる現代の生活要因

ドライアイの多くは、現代の視覚環境と自律神経への負担に深く関わっています。

  • 長時間の集中: PC/スマートフォン(VTD)、長距離運転、読書など、目を酷使する近距離での連続作業。
  • 物理的刺激: コンタクトレンズの装用、強い空調風や乾燥環境。
  • 全身疲労とストレス: 睡眠不足、花粉・粉塵などの刺激、生活リズムの乱れは、自律神経(肝)を緊張させ、涙の分泌を妨げます。
  • 東洋医学の視点: これらの生活要因は、全身の気血の消耗(虚)や自律神経の過緊張を引き起こし、目へ十分な血(栄養)が届かない状態を作り出します。

視点の違い:ドライアイ治療における「部分の修正」と「全身の潤い回復」

ドライアイは目の「潤い不足」という局所の症状ですが、その背景には自律神経、血の巡り、ホルモンバランスといった全身的な要因が隠れています。

部分の視点(西洋医学的なアプローチ)

主に目の表面と涙液(涙の成分)に注目し、足りないもの、または不安定なものを外部から補給する治療が中心となります。

  • アプローチ: 点眼薬(人工涙液、ヒアルロン酸など)、涙の出口の調整(涙点プラグ)、炎症を抑える薬など。
  • 役割の限界: 症状の進行を抑え、目の表面を保護する重要な役割を果たしますが、涙を生成・分泌する体内の機能や涙が不安定になる根本的な原因(自律神経の過緊張など)には手が届きにくい側面があります。
  • 「乾いた雑巾に水をかける」ように、外部から一時的に潤いを補うアプローチです。

からだ全体の視点(東洋医学的なアプローチ)

ドライアイを体からの「血の不足(血虚)」や「自律神経の乱れ(肝の偏り)」というサインととらえ、根本原因にアプローチします。

  • 体質・巡りの調整: 体質、生活リズム、気・血・水の巡りを整えることで、涙の質と量を内側から安定させます。
  • 根本改善の土台づくり: 肝(目と血)、脾(気血の生成)、腎(回復力・ホルモン)の機能を底上げし、再燃しにくい土台づくりを目指します。
  • 目標: 「体内の潤いを生成する機能」そのものを回復させ、自然と涙が出やすく、蒸発しにくい目元を目指します。

東洋医学の捉え方:肝・血・水のバランスを整え、目の潤いを内側から回復

東洋医学では、ドライアイを「目の潤い不足」が全身の「血(けつ)の不足」や「自律神経の過緊張」によって引き起こされている状態と捉えます。特に、目と関わりが深い「肝(かん)」の機能を立て直すことが根本治療の鍵です。

ドライアイの根本原因に関わる五臓と気血水

  • 肝(かん)の調律の乱れ: 肝は血を蔵し、目と筋(眼筋)を養います。また、自律神経の調律を担うため、ストレスによる肝の乱れが、涙の分泌を妨げ、眼の緊張を強めます。
  • 血の不足(血虚): 目の潤いは血から作られるという考えがあります。血の巡りや量が不足すると、涙の量や質が不安定になり、乾きやすくなります。
  • 潤い(水)のバランスの偏り: 全身の気・血・水のバランス、特に水分代謝の偏り(水滞や陰虚)を立て直し、乾きにくい体を目指します。

東洋医学のアプローチは、婦人科のゆらぎ、末端冷え、頭痛/腰痛など、肝の乱れや血の不足からくる併発症状も同時に整える設計です。これは、目薬で「外部から水を撒く」のではなく、体という「水源と配水管」を修復することで、再燃しにくい土台づくりを行う「森を見て木を治す」全体アプローチです。

鍼灸(経絡治療)の具体:涙の質・量を安定させ、潤いやすい体質へ

ドライアイの治療では、目の局所的な炎症を抑えつつ、全身の潤いを生成・保持する機能(肝・肺)を根本から立て直します。

治療の方針:潤いの土台を再構築

  • 肝・肺を中心に調整: 肝(血を蔵し、目と筋を養う)と肺(粘膜の潤いを司る)を中心に、気・血・水のめぐりと潤いの土台を再構築します。
  • 全身の反応点から配穴: 目の周囲にこだわらず、手足や背中などにある全身の反応点(ツボ)から配穴します。これは、**目薬で「外部から水を撒く」のではなく、体という「水源のポンプ」を全身から強化するという発想です。
  • 自律神経の安定: 長時間のPC作業やストレスによる自律神経の緊張を解き、涙の分泌を妨げている要因を根本から取り除きます。

施術の特徴と期待される変化

  • 極細ディスポ鍼と温和なお灸: 極細ディスポ鍼と熱すぎない温和なお灸を使用し、痛みや熱感を最小限に抑えます。はじめての方も安心しやすい設計です。
  • 涙の安定化: 乾き・しみの頻度と強さの低下が期待できます。特に涙の質(油層、水層)が安定することで、目の潤いが長く保たれるようになります。
  • 随伴症状の改善: かすみ・眩しさといった視覚の不快感や眼精疲労が軽減します。同時に抱えていた生理痛・冷え・頭痛といった肝の乱れからくる不調の並走改善も期待できます。

【治療期間】 効果実感には個人差があります。ドライアイの体質改善には時間が必要です。生活習慣(セルフケア)と併せて、経過を見ながら無理なく積み上げます。

主な経穴とセルフマッサージ:肝の熱と目の乾燥を鎮めるツボ活用法

鍼灸治療と合わせて、日常的にセルフケアを行うことで、自律神経の緊張と頭部の熱を鎮め、目の潤い成分(涙液)の分泌を助けることができます。

灸・鍼で用いることがある経穴(全身調整の要)

ドライアイの治療では、目の周囲だけでなく、全身の気の流れを整えるツボを重視します。

  • 百会(ひゃくえ): 頭頂部。全身の気の巡りと自律神経を整え、目の熱を鎮静させます。
  • 足臨泣(りんきゅう)(足のツボ): 胆経に属し、目の血流や頭部の緊張を緩める作用があります。
  • 風池(ふうち): うなじの生え際。頭部や眼の周囲の緊張を解き、冷えのぼせを是正します。
  • 角孫(かくそん)/目窓(もくそう)(頭部): 目の不調に直接関わる経絡のツボで、目の奥の疲労を緩和します。

治療では、これらのツボで「目の周辺を流れる血流のバルブ」を開くことを行います。

セルフケアの押圧・温め例(眼精疲労の緩和)

  • こめかみ周辺のマッサージ: 頷厭(がんえん)・懸顱(けんろ)・懸釐(けんり)(こめかみから耳上部にかけて)のツボを、指の腹でやさしく円を描くようにマッサージします。肝の気の滞りと眼精疲労を解消します。
  • 首肩の温めと深呼吸: 首の後ろを温め、同時に深い腹式呼吸を行います。これは自律神経の過緊張を解き、涙の分泌を促す土台をサポートします。
  • 目の周囲の温罨法: 温かいタオルを目の上に数分置くことで、目の周囲の血流を改善し、特に涙の油層の分泌腺(マイボーム腺)の詰まりの解消を助けます。

【注意】 押圧は「痛気持ちいい」と感じる強さに留め、押しすぎ・熱すぎは避けてください。痛みが強い時は無理せず、気持ちよい範囲で温めたり休ませたりすることが重要です。

経過の目安:涙の質と量が安定し、乾きにくい体質になるまでの期間

ドライアイの治療は、涙を生成・保持する全身の機能(肝・肺)を回復させるため、継続的な体質改善が重要です。

治療のペースと期待される変化の目安

  • 初期の変化(導入期): 週1回ペースで鍼灸刺激を積み上げます。早い方で4〜5回ほどの施術で「目のゴロゴロ感が減った」「疲労による乾きが和らいだ」といった目の奥の違いを感じるケースがあります。
  • 体質改善の目安期間: 肝(血の質)や脾(気血の生成)といった体質からの根本改善を定着させるには、約4か月前後の継続的な治療が目安となります。
  • 目標: 涙の質が安定し、目薬に頼る頻度が減り、乾きにくい強い土台が築かれている状態を目指します。

【重要な認識】 ドライアイは生活習慣(画面時間、睡眠、ストレス)と密接です。治療効果を持続させるため、季節・睡眠・画面時間など日常の条件も鍼灸と併走して調整することが不可欠です。

体質改善は「目の水源」を修復することに似ています。水源が安定するまで、継続的なメンテナンスが必要です。

日常のヒント:涙の安定と眼精疲労を軽減するセルフケアの要点

ドライアイの再燃を防ぐ鍵は、目の酷使と体内の潤い不足を同時に解消することです。日々の習慣で、東洋医学でいう「肝」と「血(けつ)」を養いましょう。

涙の安定と眼精疲労を軽減する6つの習慣

  • 画面休息(目の酷使を避ける): 30〜40分画面を見たら、必ず遠く(5m以上)を眺めて眼筋をリセットします。また、意識的にゆっくり瞬きをすることで、涙膜の再形成を助けます。
  • 湿度と風のコントロール: エアコンや扇風機の直風を避け、加湿器などで室内の湿度を保つことは、涙の蒸発を防ぎ、目の表面のバリアを守ることに直結します。
  • 装用の見直し: コンタクトレンズの装用時間を調整したり、メガネを併用したりして、目の表面への物理的な負担を減らしましょう。
  • 睡眠の質(肝と血の回復): 良質な睡眠は、東洋医学でいう「肝(かん)」と「血」の回復に不可欠です。就寝前の光量(特にブルーライト)を落とし、夜のスマホは短時間にするよう心がけましょう。
  • 温活で全身の巡りを底上げ: 半身浴や足湯で下半身を温めることで、全身の気・血の巡りを促し、潤い(水)のベースを底上げします。
  • 甘味・冷たい飲食を控えめに: 冷たい飲食物**は体を冷やし、甘味は体内の水分代謝(脾の働き)を乱します。これらは体内の冷えと滞りをためる原因となるため、控えめにしましょう。

セルフケアは「肝」の機能を乱さないための日々の予防策です。小さな積み重ねが、目の潤いやすい体質へと導きます。

ドライアイ専門施術の料金と涙の質を安定させる通院ペース

当院のドライアイに対する経絡治療は、肝・肺の機能を強化し、涙液の安定と眼精疲労の軽減に焦点を当てています。自由診療(保険外)となりますが、目薬に頼らない潤いとQOLの向上という長期的な視点での費用対効果を重視しています。

初回カウンセリング+施術

5,500円
(税込)

詳細な問診と東洋医学的診断に基づき、目の乾きの根本原因(肝血虚、自律神経の乱れなど)を特定し、治療計画を立案します。

2回目以降(通常施術)

5,000円
(税込)

肝・肺の経絡を中心に調整し、目の血流と自律神経の緊張を緩和。目の潤いを内側から回復させます。

効果を最大化する通院ペースの目安(潤い体質構築の戦略)

  • 導入期(症状が強く、乾きを頻繁に感じる時期): 週に1~2回の集中治療が必要です。目の炎症の鎮静と涙の分泌機能の回復に焦点を当てます。
  • 安定化期(乾きを感じる頻度が減ってきた時期): 週に1回のペースで、肝・脾・腎の機能を根本から立て直し、涙の質が安定する体質を構築します。
  • 維持期(症状が安定し、目薬の使用が減った時期): 症状が安定したら、2〜3週間に1回、あるいは月に1回のペースで、再発予防と全身の疲労回復を目的としたメンテナンスを行います。

ドライアイの体質改善は目の水源地の修復に似ています。水源(体内の潤い)が安定し、配管(血流)が整うことで、目薬に頼らなくても潤う状態を維持できるようになります。まずは集中的に通院し、早期の症状軽減を目指しましょう。

院長プロフィール

東洋中村はり灸院 院長 中村麻人の写真

中村 麻人(なかむら あさと)

札幌「東洋中村はり灸院」院長・鍼灸師。

「森を見て木を治す」視点で、乾き・眩しさ・かすみと全身のゆらぎを同時にケア。潤いのめぐりを整えます。