過敏性腸症候群

IBSの概要と有病率

過敏性腸症候群(IBS)は、器質的な異常がないにもかかわらず、腹痛や下痢・便秘が続く慢性疾患です。先進国に多く、日本でも約10人に1人が悩んでいると言われます。思春期〜20〜30代の若い世代にも多く、通勤・通学や人前での発表、会議などで生活の質を下げやすいのが特徴です。

  • 通勤・通学途中の突然の腹痛
  • 電車や人前での不安、ガス溜まりによる張り
  • 下痢と便秘を繰り返す、トイレが手放せない感覚

西洋医学の定義(ローマⅣ基準)

  • 大腸に器質的な病変がないことが前提
  • 最近3か月の間に月4日以上の腹痛が繰り返し起こる
  • 腹痛が次の2つ以上に関連
    • 排便で症状が軽くなる
    • 排便頻度が変化する
    • 便の形状・硬さが変化する
  • 上記が3か月以上継続し、かつ6か月前から同様の症状がある

西洋医学での原因と治療

考えられる要因

  • 食物不耐症(乳製品・加工肉・グルテン・果糖など)
  • 小腸内細菌異常増殖症(SIBO)
  • ストレス・感染後腸症候群
  • 腸内フローラの乱れ

治療の現状

  • 整腸剤・下痢止め・便秘薬・抗うつ薬などの対症療法が中心
  • 体質そのものへのアプローチは限定的

東洋医学から見たIBS(特徴と分類)

A. IBSになりやすい人の特徴(6つ以上当てはまる

  • 下痢や便秘しやすい
  • ガスが溜まり、お腹が張りやすい
  • 末端が冷える
  • 不安感や考え事が多い
  • 気分が落ち込みやすい
  • 爪に縦線が入っている
  • 頭痛が出やすい
  • 朝が弱い、寝つきが悪い
  • 人に気を遣いすぎる
  • 力が抜きにくい

B. 東洋医学的な原因の分類

① 血行不良タイプ
  • 血の量が不足しているか血の巡りが落ちている
  • 併発:冷え・生理痛・足のつり・偏頭痛・眼精疲労 等
② 気の滞りタイプ
  • ストレスや過労で五臓六腑の機能が落ち、気の巡りが落ちる
  • 併発:ため息・末端の冷え・おなら・動悸 等

東洋医学アプローチの利点

  • 腸だけでなく全身の体質を整えるため再燃しにくい土台づくり
  • 便通以外の悩み(頭痛・肩こり・生理痛・中途覚醒)も同時にケア
  • 経絡治療によるやさしい鍼灸(痛くない/熱くない)で継続しやすい
  • 食事・睡眠など、日常に落とし込めるアドバイス

院長プロフィール

東洋中村はり灸院 院長 中村麻人の写真

中村 麻人(なかむら あさと)

札幌「東洋中村はり灸院」院長・鍼灸師。

「森を見て木を治す」東洋医学の視点で、肩こり・腰痛をはじめ、生理痛・顔面神経麻痺・潰瘍性大腸炎・耳管開放症など病院で原因不明、治療法がない方を中心にはり治療を行っています