耳鳴りと向き合う東洋医学の視点:
お身体の緊張を解き、静かな時間を整える
東洋医学では、耳鳴りを単なる耳の問題としてではなく、お身体全体の「蓄えの減少」や「巡りの乱れ」から生じるサインの一つとして捉えています。
「自律神経や生命力のバランス」を整えることで、過敏になっている調節機能を穏やかに導き、音に対する感じ方が和らぐ環境作りを支えます。お身体全体の調和を促すことで、少しずつ静かさを感じられる時間が増えていくようお手伝いいたします。

目次
絶えず聞こえる音によるご負担に対し、お身体全体の巡りを整え、健やかな静けさを育んでいくための東洋医学的な考え方と、当院の取り組みについてお伝えいたします。

耳鳴りの状態と分類:
お耳の奥で生じる反応と、心身への影響について
耳鳴りとは、周囲に音源がないにもかかわらず、お耳の奥や頭の中で音が聞こえる現象を指します。聞こえ方は「キーン」「ジー」といったものから「ザー」という音まで様々ですが、これらはお耳から脳へ繋がる経路のどこかで、何らかの信号が生じている状態と考えられています。
この状態が続くと、音への意識が強まり、眠りや集中を妨げるなど、心身への負担が重なることも少なくありません。そのため、お身体全体のバランスを早めに整えていくことが望ましいとされています。
例えるなら、「静かな部屋で、わずかな風の音が実際よりも大きく響いて聞こえてしまう」ような、調節機能の揺らぎが生じている状態といえるかもしれません。
音の聞こえ方と背景
-
高い音(キーン、ジーなど):
持続的に聞こえる高い音は、お耳の奥にある神経の過敏な反応や、心身の疲労、強い緊張などが重なった際によく見られる傾向があります。 -
低い音(ザー、ボーなど):
風や波のような音、あるいは低いこもり音は、お耳の通り道や、巡りの滞りによる影響が関与している場合があります。 -
リズムのある音(カチカチなど):
お身体の中の小さな動きや、リズムを刻むような反応が音として感じられることもあります。
現代医学における視点
-
自覚的な耳鳴り:
ご本人にのみ聞こえるタイプで、多くの場合がこちらに該当します。神経の働きを穏やかにし、お身体を整えることで、負担が軽くなる場合があります。 -
他覚的な耳鳴り:
お身体の中に物理的な音源がある稀なタイプです。この場合は、まず耳鼻咽喉科等での診断と治療を優先することが大切です。

耳鳴りの要因と、
心身の反応が重なる背景について
お身体に現れる
多角的な要因
-
お耳そのものの要因:
聞こえの変化(難聴)や、お耳の通り道の状態など、物理的な受け取りに関わる部分がきっかけとなる場合があります。 -
全身のバランスによる要因:
巡りの滞り、自律神経の揺らぎ、過労や睡眠の質の低下など、お身体全体の緊張状態が耳鳴りの感じ方に影響を与えることがあります。 -
その他の要因:
稀ではありますが、他の中枢神経の状態が関与している場合もあるため、まずは専門医による確認も併せて行うことが望ましいでしょう。
状態が変化しにくくなる
お身体の反応
耳鳴りが長引く際、お身体の中では音に対する意識が強まり、それがさらなる緊張を招くという反応が起きている場合があります。
例えるなら、「静かな空間で時計の音が一度気になり出すと、ますます大きく聞こえてしまう」ような、意識の集中が起因している側面があります。
全身を整え、お身体の緊張を和らげていくことは、こうした反応を穏やかにしていく一助となる場合があります。

西洋医学による耳鳴りへの対応:
診断の重要性と、一般的な方針について
耳鳴りの相談において、西洋医学的な検査(耳鼻咽喉科等での聴力検査や画像診断など)は、お耳の構造的な状態や、背景にある重大な疾患の有無を確認するために非常に重要です。
診断がついた後、多くの場合は「症状とどのように付き合っていくか」という視点から、以下のような方針が取られることが一般的です。
一般的な対応と、その目的
-
お身体の状態評価:
聴力検査や、耳鳴りの質(音の高さや大きさ)を客観的に評価し、現在の状態を詳細に把握します。 -
薬物によるアプローチ:
巡りを整える薬やビタミン剤、あるいは緊張を和らげる目的の薬が処方されることがあります。これらは、お耳周囲の環境を整え、不快な感覚を緩和させることを目的としています。 -
順応を促すアプローチ:
音響療法(TRT)などのように、耳鳴りを生活の一部として「受け入れていく」ための訓練が行われることもあります。
例えるなら、「常に聞こえている換気扇の音が、次第に気にならなくなる過程」を、専門的な手法で促していく試みといえます。 -
東洋医学との関わり:
「検査では異常がない」あるいは「薬による変化が感じにくい」といった場合でも、東洋医学的な視点から全身を整えることで、お身体の緊張が解け、負担が軽くなる場合があります。

東洋医学の捉え方:
全身の巡りと、お身体のバランスを見つめ直す
東洋医学では、お耳の状態をお身体全体のバランスを映し出すものとして考えます。耳鳴りが長く続く場合、そこには巡りの滞りや、お身体を支える蓄えの揺らぎが関わっている場合があると考えられています。
お身体全体から手がかりを探す
お耳そのものへの働きかけだけでなく、生命活動を支える各部位の調和を大切にします。
-
全体的な状態の把握:
耳鳴りに加え、冷えや眠りの質、疲れやすさなど、一見無関係に見える変化を組み合わせて、お身体のどこに負担がかかっているかを検討します。 -
蓄え(腎)の充実:
お身体を維持する力の揺らぎは、お耳の感覚にも影響を与えやすいと考えられています。この蓄えを補うことで、負担が軽くなる場合があります。 -
巡りの滞りを解く:
緊張や環境の変化によって滞りやすい巡りを整えることで、お耳周りの感覚が穏やかになっていくことを目指します。
耳鳴りを「お身体という一本の木が、乾燥や風の強さで揺れている状態」と捉え、その根元の土壌を整えていくのが東洋医学の視点といえるかもしれません。
安定した状態に向き合うために
鍼灸による施術は、一時的な変化だけでなく、お身体の土台を整えることに重きを置いています。
-
背景にある偏りを整える:
目先の不快感だけでなく、その背景にあるお身体の偏りを緩やかに整えることで、心身の安定を図ります。 -
巡りを妨げる要因を和らげる:
お耳への血流や神経の働きを妨げる要因(お身体の冷えや緊張など)を和らげ、お身体が本来持っているバランスを育むお手伝いをいたします。 -
心身の順応を支える:
お身体全体の緊張が解けることで、音に対する過剰な意識が和らぎ、落ち着きを取り戻す一助となる場合があります。

鍼灸(経絡治療)によるアプローチ:
お身体の緊張を和らげ、感覚の安定を目指す
耳鳴りが長く続く背景には、脳や神経がその音に対して過敏に反応し、意識が離れにくくなっている状態が考えられます。
鍼灸(経絡治療)では、お耳周りの巡りを整えるとともに、お身体全体の緊張を解くことで、過剰な感覚を穏やかにしていくことを目指します。
施術の進め方
-
全体的な調整:
お耳に関連する経路だけでなく、心身のバランスを支える根本的な巡りを整えます。特に、休息の質や日々の疲れに関わる部分を補い、お身体の土台を整え直します。 -
感覚の安定を目指して:
自律神経の働きを穏やかにし、お身体を「休息モード」へと導くことで、脳が過敏に音を拾い上げてしまう反応を、段階的に和らげていく一助となります。 -
個々の状態に合わせた選定:
お身体の冷え具合、脈の響き、日々の過ごし方などを伺いながら、その時々のお身体の状態に最もふさわしいツボを慎重に選んでいきます。
「常に張り詰めていた心の糸を少しずつ緩め、周囲の音が自然に流れていくような状態」を整えていくイメージです。
はり・灸の刺激について
-
負担の少ない鍼(はり):
刺激に敏感な方でも安心していただけるよう、極めて細い使い捨ての鍼を使用します。過度な刺激を与えず、お身体がリラックスできる状態を優先します。 -
心地よい温感の灸(きゅう):
お身体を芯からじんわりと温めるような、穏やかな熱感のお灸を用います。巡りを助け、内側からの回復をサポートします。
変化の現れ方には個人差があり、時間を要する場合もございます。焦らず、お身体が本来持っている「健やかになろうとする働き」を、鍼灸を通じて支えさせていただきます。

お身体の変化に影響を与える要素:
経過と体質の関わりについて
東洋医学による施術への反応は、お身体の持つ回復力や、症状が固定化されている度合いによって異なる場合があります。
一般的に、以下のような要素が含まれる場合、心身のバランス調整が比較的速やかに感覚の変化として現れやすい傾向があります。
変化が期待されやすい傾向
-
発症からの期間:
耳鳴りが始まってからの期間が比較的短い場合、お身体の反応が固定されておらず、巡りの調整が変化に結びつきやすいと考えられます。 -
お身体の蓄え:
東洋医学では、生命活動を支える根本的な蓄えが保たれているほど、刺激に対する反応が良く、巡りの回復も促されやすいとされています。 -
感覚の変動:
日々の疲れや気圧、気分の揺らぎによって音の大きさや種類が変化する場合、「お身体の巡りや緊張の度合いが直接的に影響している」と考えられます。この変動があることは、調整の余地があることを示唆しています。 -
他の不調の併発:
動悸や眠りの浅さなど、自律神経に関連する他のサインがはっきりしている場合、全体のバランスを整えることが、結果としてお耳の負担を軽くすることに繋がる場合があります。
その場合でも、全身を整えることで「以前ほど音が気にならなくなる」といった、生活の質を支える変化を目指していくことが可能です。

日々の生活で大切にしたいこと:
心身の緊張を和らげる養生について
耳鳴りと向き合う上では、施術による調整に加え、日常の中でお身体の緊張や疲労を蓄積させない工夫が大切です。
日々の養生は、感覚の過敏さを穏やかにし、お身体が本来持っている落ち着きを取り戻すための一助となります。
感覚の安定を支える生活の工夫
-
休息の質を見直す:
眠りの深さは、感覚の安定に深く関わります。就寝前の明かりを控えめにしたり、足元を温めたりすることで、お身体を「休息の状態」へ整えやすくなります。 -
首や肩の強張りを緩める:
お耳周りの巡りは、首や肩の緊張に影響を受ける場合があります。深い呼吸を意識したり、軽いストレッチで強張りを解くことは、巡りを助けることにつながります。 -
お身体を支える食事:
東洋医学では、生命活動の源を補う食材(黒ごま、くるみ、青魚など)を無理のない範囲で取り入れることが、お耳の健康を間接的に支えると考えられています。 -
穏やかな環境音との共生:
静かすぎる場所では、かえって音が際立ってしまうことがあります。小さな音量の生活音や自然の音を背景に流すことで、意識の比重を分散させ、負担を軽くできる場合があります。
「川のせせらぎが周囲の景色に溶け込むように、耳鳴りをお身体のリズムの中に馴染ませていく」ような、穏やかな心持ちで過ごす時間を増やしていきましょう。

施術費用と通院の考え方:
お身体の安定を段階的に支えるために
当院の耳鳴りに対する施術は、全身を整えることで自律神経の安定を促し、お身体の緊張を和らげることを目的としています。
自由診療(保険外)となりますが、お一人おひとりの状態に合わせた丁寧な調整を心がけております。
これまでの経過やお身体全体のサインを伺い、東洋医学的な視点から負担の要因を探ります。その上で、今後の見通しを含めた施術を行います。
その時々のお身体の状態に合わせて、巡りを整えます。過剰な緊張を解き、感覚が穏やかになるような体内環境を育むお手伝いをいたします。
通院ペースの目安
(お身体の変化に合わせた段階的な調整)
-
導入期(感覚が気になりやすい時期):
週に1~2回程度の頻度で調整を行うことで、お身体の緊張が解けやすくなります。まずは巡りの土台を整え直すことに焦点を当てます。 -
安定化期(落ち着きを感じ始めた時期):
週に1回程度のペースに移行し、お身体を支える力(腎)を補いながら、負担が戻りにくい環境を穏やかに整えていきます。 -
維持期(感覚と共存できている時期):
2〜3週間に1回、あるいは月に1回程度のメンテナンスとして、全身の疲労回復とバランス維持を目的とした施術を継続します。
耳鳴りへの対応は「お身体の声を聴き直す練習」に似ています。
はじめに集中的に整え、その後は良好な状態を維持していくことで、お身体が音に対して過敏に反応しないリズムを思い出していく一助となります。

ご予約・ご相談
院長プロフィール
中村 麻人(なかむら あさと)
札幌「東洋中村はり灸院」院長・鍼灸師。
「森を見て木を治す」東洋医学の視点で、肩こり・腰痛から、耳鳴り・突発性難聴・耳管開放症・めまいなど、病院で原因不明・再発を繰り返す慢性症状まで幅広く対応します。
