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外転神経麻痺の特徴と症状:眼球の「外旋機能」の低下と複視

外転神経麻痺の病態

外転神経(第6脳神経)は、眼球を外側(こめかみ側)に動かす役割を持つ筋肉(外側直筋)を支配しています。この神経の働きが弱まると、筋肉が十分に機能せず、無意識に目が内向き(鼻側)になりやすい状態(内斜視傾向)となります。

  • 主症状:複視(ふくし): 両目で見たときに物が二重に見える現象。特に、麻痺した目の影響が大きいため、遠くを見ようとしたり、麻痺側を見ようとしたりしたときに顕著になります。
  • 目の疲れ・頭痛: 無意識に複視を避けようとして目を強く使ったり、頭や首を傾けたり(代償動作)することで、強い目の疲れ、頭痛、肩首のこわばりが発生します。
  • 目を動かす「綱引きチーム」の一方(外側へ動かす神経)が弱り、対抗側(内側へ動かす筋肉)に引っ張られているような状態です。

日常生活での困りごと(QOLの低下)

複視や斜視傾向は、日常生活の質(QOL)に大きな影響を与えます。

  • 読書・視作業の困難: 文字がにじんだり、二重に見えたりするため、読書やパソコンでの作業が困難になります。
  • 平衡感覚・距離感のズレ: 二重に見えることで、階段や段差で足元の距離感がズレて踏み外しそうになったり、運転やスポーツで集中しづらくなったりします。
  • 自律神経の乱れ: 常に正確な距離感やピントを取ろうとして緊張が続くため、自律神経の乱れや疲労を招きやすいです。

【重要な注意点】 見え方の急変、激しい頭痛、ろれつが回らない、手足のしびれなど、脳の疾患(脳梗塞、脳腫瘍など)を疑う強いサインがあれば、速やかに神経内科や眼科での専門的な評価をご検討ください。

外転神経麻痺の一般的とされる原因:神経の血流障害と体質的な背景

外転神経麻痺の原因は多岐にわたりますが、特に東洋医学がアプローチする領域は、血流や炎症といった体内の環境因子によるものです。

① 血流障害・炎症(東洋医学の得意分野)

神経細胞は酸素と栄養を多量に必要とします。高血圧、糖尿病などによる動脈硬化や、強いストレスによる血管収縮によって、神経への栄養供給が不足したり、炎症が起こったりすることで、神経の働きが鈍ることがあると考えられています。

鍼灸の役割: 全身の血流改善と炎症の鎮静、自律神経の安定に貢献し、神経の回復を促します。

② 物理的ストレス・外傷

神経が走行する経路で、物理的な圧迫や損傷を受けるケースです。

  • 原因: 外傷(頭部外傷など)、腫瘍による圧迫、感染症(髄膜炎など)による炎症、動脈瘤など。
  • 対応: これらのケースでは、病院での精密検査(MRIなど)と原因疾患の治療が最優先されます。

③ 原因不明(特発性)と鍼灸の可能性

病院で評価しても、特定の病気や損傷がはっきりしないケースも少なくありません。

  • 背景: このようなケースは、自律神経の極度の乱れ、慢性的な疲労(腎の消耗)、冷えによる血流の停滞など、東洋医学が捉える体質的な偏りが背景にあることが多いです。
  • 神経という「電線」の導通が、体内の「電力不足(疲労)」や「錆(血流障害)」で不安定になっている状態です。

東洋医学は、この「原因不明」の領域で、全身のバランスを整え、神経の回復をサポートします。

東洋医学の捉え方:全身から整える「肝・脾・腎」の回復と神経への栄養供給

東洋医学では、外転神経の働きが弱る背景に、体力の低下(虚)や血流の悪化、自律神経の乱れなど、全身の調律の崩れが深く関わっていると捉えます。

治療のねらいは、眼球の筋肉を動かす神経に対して、全身の生命力から栄養を供給し、神経の再生能力をサポートすることにあります。

外転神経麻痺に深く関わる五臓

  • 肝(かん): 目と関係が深く、筋(筋肉)の伸びやかさと自律神経の調律を担うシステムです。血流の滞りやストレスによる「肝」の乱れが、眼筋への神経供給を妨げます。
  • 脾(ひ): 飲食物をエネルギー(気・血)に変換し、全身の気血生成の土台となります。脾が弱ると、神経を修復するための栄養が行き渡らず、疲れやすさやだるさとして現れます。
  • 腎(じん): 回復力、めぐりの根(体力)、そしてホルモンを司ります。夜間の疲弊や冷えは「腎」の消耗と関連し、神経の修復力を低下させます。

東洋医学の治療は、部分(麻痺した神経)へ直接ではなく、「森(全身)」を見て「木(神経)をなおす」発想で、巡り・自律神経・回復の土台を同時に底上げし、複視や目の疲れが起きにくい体質を目指します。

鍼灸(経絡治療)の具体と期待:外転神経の回復を促し、複視を軽減する

鍼灸治療は、西洋医学では難しい神経の再生や血流障害の改善を全身からサポートします。特に発症早期や原因不明とされるケースに対し、体質改善を通じて複視の軽減を目指します。

施術の要点:神経への栄養供給と五臓の連携

  • 肝経を要に、眼筋まわりの調律をサポート: 肝は目と筋(筋肉)を司るため、肝経の気の巡りを整えることで、眼筋まわりの血流と緊張を調律し、麻痺の回復を促します。
  • 脾・腎を支えて回復力を底上げ: 脾(気血の生成)と腎(回復力・神経の根)を支え、神経の修復に必要な栄養とエネルギー(気血)の生成と供給を底上げします。
  • 自律神経の整調: 自律神経の過緊張は血流を妨げます。鍼灸で自律神経を整調することで、眼のピントと頭首の緊張を解き、複視を回避しようとする代償動作による疲労を軽減します。
  • 弱った神経への「栄養点滴」を全身から行い、眼筋の「綱引きチーム」に力を戻すイメージです。

刺激設計と期待される効果

  • 穏やかな刺激設計: 極細ディスポ鍼と温和なお灸を使用し、痛み・熱感を最小限に抑えます。疲労や神経過敏がある方でも、リラックスして施術を受けていただけます。
  • 局所にこだわらない全身調整: 麻痺している眼の周囲だけでなく、全身の反応点(背中、手足の要穴)を組み合わせるのが特徴です。体質改善なくして神経の再生はないためです。
  • 期待される効果: 複視の軽減(特に顔を傾けた時の改善)、目の疲れ・頭痛・肩首のこわばりの緩和、全身の倦怠感の改善といった、QOLの向上が期待できます。
【治療期間の目安】 神経の修復には時間がかかります。発症からの期間や体力の状態によって個人差はありますが、焦らず継続的な治療で神経機能の回復を無理なく積み上げます。

日常の工夫:神経の回復を助け、複視による疲労を軽減する養生法

外転神経麻痺の回復には、神経そのものの修復を促すための「エネルギー(気血)の確保」が最も重要です。日常生活で疲労や眼への負担を最小限に抑え、鍼灸治療の効果を最大限に引き出しましょう。

神経回復を促すための養生ポイント

  • 疲労とストレスを溜めない(肝・腎の保護): 体力の消耗(腎の虚)と自律神経の乱れ(肝の乱れ)は、神経の回復を妨げます。こまめな休息と良質な睡眠の確保を最優先にしましょう。

    例えるなら、神経の「充電時間」を確保するということです。

  • 光の刺激を調整し、眼の緊張を緩和: 複視がある状態で強い光や長時間の近距離作業を行うと、眼の筋肉と脳が過度に緊張します。PC作業を控えめにしたり、遮光眼鏡を活用したりして眼の疲労を軽減しましょう。
  • 首肩のこわばりを緩める(血流改善): 肩こりや首のこわばりは、眼や脳へ向かう血流を悪化させます。深呼吸、温かいタオルで首をあたためる、軽いストレッチなどで緊張を緩め、頭部への血流をスムーズに保ちます。
  • 季節の変わり目の養生: 東洋医学では、体調が揺らぎやすい季節の変わり目こそ養生が重要です。冷たい飲食を避け、湯船に浸かる(半身浴)などで全身を保温し、「冷え」による血流の滞りを防ぎましょう。

※ 見え方が急に大きく変わる、激しいふらつきや頭痛がある場合は、脳血管障害などの可能性も否定できません。鍼灸治療を始める・続けるにあたって、必ず医科の専門的な評価も併せてご検討ください。

日常の工夫:神経の回復を助け、複視による疲労を軽減する養生法

外転神経麻痺の回復には、神経そのものの修復を促すための「エネルギー(気血)の確保」が最も重要です。日常生活で疲労や眼への負担を最小限に抑え、鍼灸治療の効果を最大限に引き出しましょう。

神経回復を促すための養生ポイント

  • 疲労とストレスを溜めない(肝・腎の保護): 体力の消耗(腎の虚)と自律神経の乱れ(肝の乱れ)は、神経の回復を妨げます。こまめな休息と良質な睡眠の確保を最優先にしましょう。

    例えるなら、神経の「充電時間」を確保するということです。

  • 光の刺激を調整し、眼の緊張を緩和: 複視がある状態で強い光や長時間の近距離作業を行うと、眼の筋肉と脳が過度に緊張します。PC作業を控えめにしたり、遮光眼鏡を活用したりして眼の疲労を軽減しましょう。
  • 首肩のこわばりを緩める(血流改善): 肩こりや首のこわばりは、眼や脳へ向かう血流を悪化させます。深呼吸、温かいタオルで首をあたためる、軽いストレッチなどで緊張を緩め、頭部への血流をスムーズに保ちます。
  • 季節の変わり目の養生: 東洋医学では、体調が揺らぎやすい季節の変わり目こそ養生が重要です。冷たい飲食を避け、湯船に浸かる(半身浴)などで全身を保温し、「冷え」による血流の滞りを防ぎましょう。

※ 見え方が急に大きく変わる、激しいふらつきや頭痛がある場合は、脳血管障害などの可能性も否定できません。鍼灸治療を始める・続けるにあたって、必ず医科の専門的な評価も併せてご検討ください。

院長プロフィール

東洋中村はり灸院 院長 中村麻人の写真

中村 麻人(なかむら あさと)

札幌「東洋中村はり灸院」院長・鍼灸師。

「森を見て木を治す」視点で、目の見え方の負担と全身のゆらぎを同時に調整。自律の調律と回復力を引き出します。