本治法と標治法とは——土台から整える2段階の施術
当院は、いきなり痛むところに鍼を打ちません。まず土台を整え、それから症状に向き合います。
経絡治療には「本治法(ほんちほう)」と「標治法(ひょうちほう)」という2つの段階があります。この順序こそが、痛い場所だけを刺激する施術と、経絡治療が決定的に違うところです。
ここでは、本治法・標治法とはそれぞれどんな段階なのか、なぜこの順序が大切なのかをご紹介します。

本治法——全身のバランスを整える土台づくり
本治法は、経絡治療の核となる段階です。脈やお腹から確認した五臓六腑の状態をもとに、手足にある要穴(ようけつ)と呼ばれるツボを使い、全身のバランスを整えていきます。
まだ痛みのある場所には触れていない段階ですが、この時点で「体が温かくなった」「呼吸が深くなった」と感じる方が少なくありません。木を植える前に土を耕すように、体が変化を受け止められる状態をつくるのが、本治法の役割です。

本治法では、どうやってツボを選ぶのか
本治法で使うのは、手足のひじ・ひざから先にある「要穴(ようけつ)」と呼ばれるツボです。体の中心から遠いこれらの場所が、五臓六腑の働きに直接ひびくとされています。腰が痛いのに手のツボを使うのは、この要穴を用いているためです。
弱っている臓を、直接ではなく「養う側」から補う
選び方には筋道があります。経絡治療は、東洋医学最古の医学書のひとつ『難経(なんぎょう)』の考え方を土台にしており、弱っている臓があるとき、その臓を養う側の臓を補うという組み立てをします。
たとえば脈から肝の力が落ちていると確かめられたとき、肝そのものを刺激するより、肝を養う腎を補うほうが理にかなっている——五行の相生の関係を、ツボの選び方にそのまま使うわけです。この関係については「陰陽五行とは」「五行色体表とは」でご紹介しています。
だから、同じ症状でもツボが変わります
本治法で使うツボは、症状の名前からは決まりません。その日の脈とお腹から立てた「証」によって決まります。同じ肩こりでも、肝が弱っている方と脾が弱っている方では、選ぶ経絡がまったく変わります。前回と今回で使うツボが違うことがあるのも、体の状態が変われば証も変わるためです。
本数は多くありません。要点をおさえた数本で、体全体の傾きを立て直すのが本治法の狙いです。

標治法——つらい症状に向き合う仕上げ
標治法は、本治法で土台を整えたあとに行う段階です。いま一番つらい症状——肩や腰、頭など——に、直接ツボを選んで向き合います。
本治法で全身のバランスがすでに整っているため、標治法で必要な刺激はごくわずかで済みます。強い刺激で無理やり症状を抑え込むのではなく、整った土台の上に、最後の仕上げを加えるようなイメージです。当院の施術が強い刺激を伴わないのは、手加減しているのではなく、この順序があるためです。

なぜこの順序が大切なのか
痛い場所に直接強い刺激を加えれば、その場は楽になることがあります。しかし、土台となる五臓六腑の働きが弱ったままでは、しばらくするとまた同じ場所がつらくなる——これを繰り返してしまいます。
「腰痛なのに手に鍼をする」「婦人科の不調に足のお灸を使う」といった、当院の施術に驚かれる方も多いのですが、これは本治法の考え方そのものです。症状のある場所ではなく、その土台である全身のつながりを見ているからこそのアプローチです。
本治法で体質そのものを整え、標治法で今のつらさに向き合う——この2段階を踏むことが、繰り返さない体へ近づく近道だと考えています。

土台から整える施術を、体感してみませんか
本治法と標治法、2段階の施術は、実際に受けていただくとその順序の意味を体感しやすくなります。東洋中村はり灸院は、国家資格を持つ鍼灸師が東洋医学一筋で施術を行う、札幌の鍼灸専門院です。お気軽にご相談ください。
初回はカウンセリングに時間をかけ、お体の状態をしっかり把握したうえで施術を行います。LINEからいつでもご相談・ご予約いただけます。

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院長プロフィール

中村 麻人(なかむら あさと)
札幌「東洋中村はり灸院」院長。鍼灸師・医薬品登録販売者(国家資格)。
脈・腹などから全身の状態を見立てる伝統的な手法を軸に、その方に合ったはり・お灸を組み立てています。大切にしているのは、コリや痛みを引き算のように取り除くのではなく、足りない力を補って立て直すという視点です。肩こり・腰痛はもちろん、生理痛や自律神経の乱れ、原因がはっきりしない慢性的な不調まで、体質そのものから整えることを目指してはり治療を行っています。
