なぜお灸をするのか、東洋医学が大切にしてきた温熱の力
「お灸って、なぜ体にいいと言われるの?」——そんな素朴な疑問に、東洋医学の考え方からお答えします。
お灸は、ヨモギの綿毛からつくられる「もぐさ」を燃やし、ツボにじんわりとした温かさを届ける施術です。鍼とはまた違うやわらかな刺激で、気血の巡りを促し、体を内側から支えていくと考えられています。
「熱そう」「跡が残りそう」というイメージを持たれる方も多いのですが、実際には熱の強さを細かく調整しながら、心地よい温かさで行います。ここでは、お灸とはどのようなものか、体にいいと言われる理由、当院での鍼との使い分けについて順にご紹介します。

お灸とは——ヨモギの温かさでツボに働きかけるもの
お灸は、ヨモギの葉の裏側に生えている細かな綿毛だけを集め、乾燥させて仕上げた「もぐさ」を、ツボやその周辺にのせて燃やし、じんわりとした温熱を届ける施術です。古代中国で鍼とともに体系づけられ、日本には7世紀ごろ、遣隋使や遣唐使を通じて伝わったとされています。以来、鍼とともに東洋医学を支える柱のひとつとして、長く受け継がれてきました。
もぐさが燃える際に立ちのぼる独特の香りには、精油成分の一種であるシネオールが含まれているとされています。この香りと熱が合わさることで、体だけでなく気持ちもゆるむような感覚を得やすいのも、お灸ならではの特徴です。
直接火をつけるタイプと、台座つきのタイプ
お灸には、もぐさを直接肌にのせて燃やし切る「有痕灸」と、途中で火を消したり台座を挟んだりして肌に直接火が触れない「無痕灸」の2種類があります。当院では、お一人おひとりの状態や肌の様子に合わせて熱の強さを調整しながら、無理のない範囲で行っています。
ご自宅でのセルフケアには、市販の台座つきのお灸が扱いやすく、火加減も一定に保ちやすいためおすすめしています。ツボの場所に迷う場合は、無理に探そうとせず、気になる部位の近くから温めていただくだけでも構いません。

お灸が体にいいと言われる理由
「なぜお灸が体にいいのか」という問いには、いくつかの角度から答えることができます。ここでは、当院が特に大切にしている3つの働きをご紹介します。
①血の巡りを促す働き
もぐさの温熱は、皮膚の表面だけでなく、その下にある毛細血管やリンパの流れにも届くと考えられています。じんわりと温めることで血の巡りが促され、体の隅々まで栄養や酸素が届きやすくなる——これが、お灸が「体を内側から支える」と言われる理由のひとつです。
②心身をゆるめる香りと熱
もぐさが燃える際の香りには、鎮静的な働きがあるとされる成分が含まれています。ゆっくりと立ちのぼる煙とともに感じる温かさは、忙しい毎日で張りつめた心身をゆるめるひとときにもなります。施術中にうとうとされる方が多いのも、お灸ならではの光景です。
③ツボ・経絡を通じて全身に働きかける働き
東洋医学では、ツボは経絡という道でつながり、経絡は五臓六腑と結びついていると考えます。お灸で特定のツボに熱刺激を加えることは、その経絡を通じて、対応する臓腑の働きに間接的に働きかけることにつながると考えられています。鍼が「点で調整する」刺激だとすれば、お灸は「じんわりと面で満たす」刺激に近く、両者を組み合わせることで体を整えやすくなります。

鍼とお灸、当院での使い分け
東洋医学では、体の状態を「気が不足している(虚)」のか「気が滞っている(実)」のかで捉えます。当院では、脈やお腹の状態を確認しながら今どちらの状態に近いかを見極め、それに合わせて鍼とお灸を組み立てています。
気そのものが不足して力が弱っている方には、じんわりと補うお灸が向いていることが多く、気の巡りが滞って詰まっている方には、鍼で流れをつくることを優先することもあります。実際にはこの両方が入り混じっていることも少なくないため、当院の経絡治療では、鍼とお灸を状態に応じて組み合わせながら、その方に合った刺激の強さやツボを選んでいます。
ご自宅でのお灸との付き合い方
当院での施術に加えて、ご自宅で市販の台座つきのお灸を取り入れていただくこともおすすめしています。ただし、体調がすぐれないときや、肌が敏感な部位、やけどの既往がある場所などは避けていただくのが安心です。
お灸の使い方に迷う場合や、ご自身の体質に合った取り入れ方が気になる方は、一人で悩まずお気軽にご相談ください。

お灸を取り入れた鍼灸を、体感してみませんか
お灸がご自身の体質に合っているかは、実際に脈やお腹の状態を確認するとより分かりやすくなります。東洋中村はり灸院は、国家資格を持つ鍼灸師が東洋医学一筋で施術を行う、札幌の鍼灸専門院です。お灸に興味がある方も、初めての方も、お気軽にご相談ください。
初回はカウンセリングに時間をかけ、お体の状態をしっかり把握したうえで施術を行います。LINEからいつでもご相談・ご予約いただけます。

初めての方へ
不安なことや現在の状態について、まずはお気軽にご相談ください。

院長プロフィール

中村 麻人(なかむら あさと)
札幌「東洋中村はり灸院」院長・鍼灸師。
脈・腹などから全身の状態を見立てる伝統的な手法を軸に、その方に合ったはり・お灸を組み立てています。コリや痛みを引き算のように取り除くのではなく、足りない力を補って立て直すという視点を大切に、肩こり・腰痛から原因がはっきりしない慢性的な不調まで、体質そのものから整えることを目指してはり治療を行っています。
